AndreyPopov/istock
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 ゴールデンウィーク期間ということで、今回はいつもと異なり、雑誌に誤字脱字、誤報などのミスが出る原因を考えてみたい。実は、多くのチェック機能を設けているので、ひとつだけの原因でミスが表に出ることはまずありえない。

 たとえば、小社の雑誌でいうなら…

  1. 記者が取材対象者から聞き間違う
  2. 記者が記事を書き間違う
  3. 編集者がミスを読み飛ばす
  4. 文字校正者がミスを見逃す
  5. 記者がミスのある校正紙(ゲラ)を数度にわたって読み飛ばす
  6. 最終責任者である編集長がミスを見逃す

と、ざっと複数回の偶然が重ならない限り、ミスは表に出ないものだ。

ミスとは、「あの時、あれをしなければ…」という後悔を積み重ね積み重ね、やっとこさ現出するものなのである。

ということは、ミスを防ぐには、そのうちのたった1つを打ち消すことができればいい。

このことは、「編集」という職種に限ったことではないだろう。

 いくつものチェック機能をすり抜けない限り、ミスは起こらないということは、ほとんどの業種職種において同じだからだ。逆に言えば、ミスを封殺する機会はどんな仕事にも多々あるということだ。

 にもかかわらず、ミスは起こってしまう。

 なぜ、なのだろうか?

  雑誌について言うなら、他人任せの姿勢か、慣れからくる怠慢か、のどちらかであることが多い。要するに、ヒューマンエラーという名のケアレスミスの集積。担当者は、その時に求められている能力を鞘に納めたままにしているのである。

  サッカーのゴールキーパーの境地で「自分がミスを止めなければ、後ろは誰もいない」くらい集中することで、常に自分の仕事に取り組むことができれば、ほとんどのミスはなくなるかもしれない。

 しかし、トッププロのゴールキーパーにも時として安易なミスが出るのだから、事はそれほど単純ではないのかもしれない。

 果たして、「chatGPT」などのAIの進化でこのケアレスミス問題は解決できるものなのだろうか?

  けれども、もし解決できた暁には、「チェック」という仕事が、この世の中からなくなることになり、私たちは途方に暮れてしまうことになる。

著者:千田 直哉