トライアルホールディングス(福岡県:以下、トライアルHD)が3月21日、東京証券取引所グロース市場への上場を果たした。IPO(新規株式公開)の規模は今年最大の約388億円に上り、時価総額は2600億円を超えるなど市場から大きな期待を集めている。生鮮を中心とする食品強化の取り組みと、メーカーや卸、ITベンダーなどと一体となったリテールDX戦略を推進する同社。上場というビッグイベントを経て、どのような成長図を描いていくのか――。

上場日の時価総額は2600億円超 大手小売に比肩する規模感に

トライアルHDが3月21日、東証グロース市場へのIPOを果たした
トライアルHDが3月21日、東証グロース市場への新規上場を果たした(左からトライアルHDの亀田晃一社長、Retail AI社の永田洋幸社長)

 トライアルHDは昨年4月にグロース市場への上場を計画していたが、予定日9日前になって上場手続きの延期を発表していた。「昨今の金融機関の破綻等を契機とした混乱が続く中、株式市場に関する動向等を総合的に勘案」(当時のプレスリリースより)という理由からだった。 

 その後、今年2月14日に東京証券取引所よりグロース市場への新規上場が承認されたことを再度発表。3月21日に同市場への上場を果たした。

 公募・売出価格は仮条件の上限1700円に決定。株式公開後の初値は2215円をつけて一時は2500円を超え、終値は売出価格を約3割上回る2200円となった。終値時点での時価総額は約2610億円。グロース市場の時価総額ランキングで一挙にトップへ躍り出ており、まずは市場からの大きな期待感が示されたかたちだ。

 ちなみに上場初日時点での単純な比較にはなるが、ライフコーポレーション(約1921億円)やユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(約1312億円)、イオン九州(約1048億円)、イズミ(約2530億円)といったスタンダード、プライム市場に上場する大手食品小売を上回る規模だ(いずれも3月21日の終値ベース)。

24年6月期の売上高は7000億円超える見通し 生鮮強化で既存店が力強い成長示す

メガセンタートライアル郡山八山田店の青果売場
近年力を入れる生鮮強化の取り組みが奏功し、既存店売上高も大きな成長を示している

 トライアルHDの23年6月期の連結売上高は対前年同期比9.7%増の6531億円、営業利益は同15.9%増の139億円。24年6月期も同8.9%増の7110億円、営業利益は同33.0%増の185億円を見込んでおり、直近の業績は好調に推移している。

 好業績の要因としては全国での積極的な出店政策のみならず、既存店売上高の力強い成長によるところも大きい。22年12月〜23年12月の1年間で見ても、月次ベースで前年同月実績を3〜10%上回るペースを維持している。これは主に、近年注力してきた生鮮食品と総菜強化の取り組みが奏功し、来店頻度の向上につながっているためだ。

外部企業との”共創”進む

「スキップカート」はトライアルグループの約200店舗で導入されている
「Skip Cart®」はトライアルグループの約200店舗で導入されている

 こうした小売事業とともに、業界内外で注目されているのが「リテールDX」に関連する事業だ。トライアルHDはグループ会社のRetail AI(東京都)が主軸となり、買物体験のさらなる向上を図る取り組みを長年推進してきた。

 たとえば、お客が商品を自らスキャンし専用レーンを通過するだけで決済が完了するショッピングカート「Skip Cart®」、売場天井部に備え付けたカメラでお客や商品の動きを把握しAIを用いて分析する「リテールAIカメラ」、メーカーと協働で効果的な商品提案を行う「デジタルサイネージ」、そしてそれらのデバイスをフル導入し新たなリアル店舗のかたちを描いた「スマートストア」の出店などを進めている。

 さらに21年には、福岡県宮若市において産官学連携型プロジェクト「リモートワークタウン ムスブ宮若」を開始。同市内の廃校や閉館した商業施設をそのまま活用し、AI、IoT関連の研究開発施設、その実証実験の場としてのリアル店舗を市内で展開している。

 ここではトライアルの関係者のみならず、取引先のメーカーや卸企業の社員なども定期的に滞在し、トライアルとともにAIを活用した最適なプロモーションや棚割りなどについて日夜議論を行っている。 

 また直近では、日本電気(NEC)と顔認証決済技術で協業したり、日本電信電話(NTT)とサプライチェーンマネジメントの最適化に向けた連携協定を締結したりと、外部企業との“共創”の幅が一段と拡大している。

「トライアル」をより加速し、リテールDXの実現めざす

 トライアルHDは今回の上場によって、生鮮強化を軸とした小売事業と、リテールDXの取り組みの双方をさらに加速させていきたい考えだ。小売事業については主力のスーパーセンターのほか、昨今強化している小型フォーマットの新規出店、そのほか物流インフラなどへの投資を進めていく。

 同社の亀田晃一社長は「投資家の皆さまの理解を得ながら、さまざまなチャレンジをしていきたい。(これまでの取り組みが)少しづつ形になってきているので、さらに飛躍していきたい」と意気込みを語る。

 またRetail AIの永田洋幸社長は「(株式上場は)大きな節目であり、新たなスタートラインに立った感覚もある。『トライアル』という社名のとおり、試行錯誤を繰り返しながら成長していきたい」と力を込めた。

 

 

著者:雪元 史章