子に贈与した財産が相続財産に戻される期間が、2023年の法改正によって7年に延長されるので、「孫への贈与」が相続税の対策が、いまよりやりやすくなります。しかし、この改正内容をよく知っていないと、大きな節税効果を得られないかもしれません。
子に贈与すると効果が薄れる理由や、孫に贈与するときの注意点をよく知り、せっかくの相続税対策が無駄にならないようにしましょう。
■改正で「7年に延長」贈与するなら子より孫がいいワケ
今後は、自分が亡くなる7年以内に子供に贈与した場合、ほとんど相続財産に加算されてしまうようになるので、子供への贈与よりも孫への贈与を考えたほうが節税できます。
2023年の税制改正で、贈与した財産を相続財産に加える期間が、亡くなる前3年から7年へと延長されます。
実際に延長されるのは、2024年以降の贈与です。この年から、延長された4年分については100万円を控除した金額が加算されます。加算されるのは相続人への贈与なので、孫への贈与なら、相続財産に戻される心配はありません。
たとえば、2人の子に110万円ずつ7年贈与すれば、1,540万円の財産を移せます。しかし、そのあと亡くなると、100万円を控除した1,440万円が相続財産に戻されてしまい、相続税対策の意味がほとんどなくなります。
一方、孫への贈与は相続財産に戻される心配がないので、2人の孫に110万円ずつ7年贈与すれば、1,540万円分の財産を移せるので、110万円以内の贈与なら贈与税もかかりません。
しかし、人はいつ死ぬか分かりません。もし贈与した7年以内に自分にもしものことが起きなかった場合、相続税の対策にはならないので、その点は注意が必要です。
■孫が相続人になるときは孫への贈与も加算対象
ただし、孫が相続人になるときは、孫への贈与も加算されます。相続税対策として孫への贈与を考えているなら、孫が相続人になっていないか確認が必要です。
孫が相続人になるのは、次のようなケースです。
・本来の相続人である子が亡くなっている。
・遺言で孫に財産を遺している。
・孫が受取人の生命保険をかけている。
・孫を養子にしている。
特に遺言や生命保険は、よかれと思ってしたことがかえって相続税を増やすことになり、子や孫の負担になることがあるため注意してください。
■一般家庭でも相続税がかかる時代
さかのぼること2015年に、相続税がかかる範囲が広がり、富裕層だけでなく一般家庭でも相続税対策が必要な時代になりました。
相続税は、財産が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の範囲内なら、かかりません。たとえば子ども2人と妻が法定相続人なら、4,800万円までは相続税がかからないのです。
「そんなに貯金はないから大丈夫」と考える人がいますが、自宅不動産の評価額などを含めると、意外と相続税がかかる家庭はたくさんあります。
早めに財産の状況を整理し、相続税がかかりそうなときは、孫への贈与をはじめ相続税対策を考えてみてください。
なお、この記事の内容は2022年12月に公表された内容を元に執筆しており、実際の改正内容は変わることがありますので、注意してください。
文・木崎 涼(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部