ハリウッド大作や日本の大手メジャー作品よりも、昔でいえばミニシアター系と呼ばれるようなヨーロッパの傑作映画が好き! そういう映画ファンはけっこう多いのではないでしょうか? そんなみなさんに朗報です。実は、この夏はヨーロッパ映画が豊作。自国のアカデミー賞を総なめにした作品が3本立て続けに公開されるのです。

スペインのアカデミー賞5部門を制覇した感動ドラマ

1作目は、7月1日公開の『しあわせな人生の選択』。本国スペインのアカデミー賞に当たる<ゴヤ賞>で主要5部門を独占した傑作映画です。本作では、余命いくばくもない俳優のフリアンと、そのことを知ってカナダからスペインへ駆けつけた友人、トマスの4日間を描写。二人の過ごすかけがえのない時間を見つめます。

通常余命をテーマにすると、死の宣告を受けた張本人に比重が置かれがち。しかし、特筆すべきは、本作ではむしろ残される側に重きが置かれている点です。余命を告げられたフリアンを前にしたトマスの心に寄り添った物語は、余命わずかな愛する人と、自分はどう向き合えばいいのか、なにができるのか……と、自然と想いをめぐらすきっかけになるはず。しばらく会っていない親友と久しぶりに連絡をとってみようかなと、ふと思わせられる作品です。

イタリアのアカデミー賞で作品賞をはじめ5部門に輝く!

次に、7月8日(土)公開の『歓びのトスカーナ』は、イタリアのアカデミー賞といえる<ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞>で主要5部門に輝いた名作。日本では諏訪敦彦監督の『不完全なふたり』やフランソワ・オゾン監督の『ふたりの5つの分かれ路』などでもおなじみのヴァレリア・ブルーニ・テデスキと、イタリア映画ファンならおなじみのトップ女優、ミカエラ・ラマッツォッティの共演でも話題の友情ドラマです。

主人公は、精神診療施設で療養生活を送るベアトリーチェとドナテッラ。性格は明るく、いつもお嬢様のような派手ないで立ちのベアトリーチェに対し、ドナテッラは、体はやせ細りいつも表情が冴えません。そんな性格も容姿も正反対の凸凹コンビの二人が施設を抜け出していざ自由の世界へ! ちょっとした逃避行を繰り広げます。

精神医療の現場が舞台となると暗い物語を想像しがちですが、本作はそんなイメージとは無縁。二人の逃避行はやりたい放題で、見ているこちらまで爽快な気分にさせられます。1991年の傑作アメリカ映画『テルマ&ルイーズ』を重ねる映画ファンもいるかもしれません。また、改めて良き友の存在が、自分をどれだけ勇気づけ、力をくれるかに気づかせてくれる一作でもあります。

ポーランドのアカデミー賞4部門&ベルリン映画祭銀熊賞受賞作

最後は、7月22日公開の『君はひとりじゃない』。ポーランド版のアカデミー賞とされる<イーグル賞>で4部門を受賞。ベルリン国際映画祭でも監督賞に当たる銀熊賞を受賞しています。

本作で主軸となるのは、母親の死後、心身を病んで摂食障害に苦しむ娘・オルガ。そして、オルガの父親であり、検察官としてあまりに事件現場を目にしてきたため、死に不感症になった男。そんな二人の心の再生が描かれています。

本作は、ひと言でいうと“摩訶不思議な物語”。たとえばオープニングショットで、自殺してすでに死んでいるはずの男が、前触れもなく起き上がりひとりで歩いていったりと、この世とあの世が混在する世界観で物語が展開していきます。そのドラマは日本のTVドラマ「世にも奇妙な物語」のように、ミステリー調でありながら、今を生きるリアルな人間の現実世界の物語でもある。もしかすると、心霊映画ファンも本格人間ドラマ好きもその世界に引き込まれる異色作といっていいかもしれません。

大バジェットが投じられたハリウッド映画や、人気漫画をもとにした話題の日本映画の陰に隠れてしまって、最近は優れたヨーロッパ映画が埋もれがち。斬新なCG映像があるわけでも、イケメンスターが出ているわけでもありませんが、きっと見た人の人生を豊かにしてくれるはず。そんなヨーロッパ映画の秀作に、たまには向き合ってみませんか?

文/水上賢治@アドバンスワークス