人生に躓いた男の再生を描くバディ・ムービー『アリーキャット』が、7月15日(土)より全国公開される。主演は、マーティン・スコセッシ監督『沈黙〜サイレンス〜』(2017年)での熱演も記憶に新しい窪塚洋介。結成20年を迎えた人気ロックバンド、Dragon Ashのフロントマン、Kjこと降谷建志が、そのバディに扮している。劇中、窪塚洋介はボクシングの元東洋チャンピオン、降谷建志は自動車整備工場で働く男に扮し、ストーカー被害に悩むシングルマザーのボディガードとして奮闘する。時代のカリスマと呼ばれ、ハリウッドスターとなった現在でも自らの信念に従い、活動を続けている窪塚洋介にお話を伺った。

Q:窪塚さんと降谷さんの掛け合いがとても自然で、まるで十年来の親友のように見えました。

2年前の冬に、共通の友人の結婚式で(降谷)建志くんと初めて会いました。共通の友人がたくさんいるのですが、ずっとニアミスばかりで、会うタイミングがなくて。お互いがデビュー20周年の節目を迎えた後、こうして共演の機会を得たのは、運命だったのかなと思っています。

Q:おふたりは出会って間もなく撮影に入られたそうですね。どのようなことがきっかけで、意気投合されたのですか?

僕らがやっている、レゲエやロックなどの音楽には、シーンがシェアしている想いやルールがあるんです。僕と建志くんは初期設定の段階で、そこを理解出来てるんですよね。自分を信じて、生き方を貫くということも含めて。会ってみないとどういう人なのか分からない、なんて謎はほぼ無く。もちろん、コーヒーに砂糖を入れるとか、細かいことは分からないですが、会う前からお互いの考えをシェア出来ていたんです。

Q:この映画に惹かれた理由は?

まるで昭和の作品のような古臭い設定の物語を、僕と建志くんが演じるのは面白そうだと思ったんです。人生に躓いた男の再生を描いているところにも惹かれましたが、一番の理由はバディ役が降谷建志だったことですね。

Q:アドリブのシーンはありましたか?

特になかったですね。セリフとセリフの間は全部自分で埋めるので、そこを含めてしまうと、ある意味すべてがアドリブになってしまいますが。

Q:個人的には、車の中で窪塚さん演じるマルが降谷さん演じるリリィにアメを食べさせてあげるシーンがツボでした(笑)

そうですか(笑)あれは、現場で監督が“アメを食べさせて”と言ったんですよね。僕は、“気持ち悪っ!”と思ったんですけど(笑)。

Q:リリィにアメを食べさせた後、そういうセリフがありましたね。

確かに。思わず口から出ちゃったんですね(笑)

Q:強烈な悪役を演じた、「品川庄司」の品川祐さんとはこれまでにもお仕事をご一緒されていますよね?

品川さんとは、公私ともに仲が良くて。『サンブンノイチ』(2014年)、『Zアイランド』(2015年)と、品川さんの監督作2本でお世話になっていることもあって、すごく気ごころが知れているんです。僕がやっているレゲエ活動の、卍LINEのミュージックビデオも2本撮ってくれて。あの人はいろいろなことを言われていますが、実際はとても良い人で、自分のスタイルを持ってアツく生きている人。僕と建志くんがシェアしているシーンに、すごく合う人なんですよ。

Q:劇中のマルはボクシングの元東洋チャピンオンで、散々マスコミに叩かれた過去を持つ男です。かつて、窪塚さんもマスコミによっていろんなイメージが作られたことがありましたね。

そうですね。でもあのシーンを演じているときに、自分の過去を思い出すことはなかったですね。今の僕には、マスコミに対する個人的な怒りがないんですよ。僕の中では消化済みの話というか。ソーシャルメディアの時代になり、僕にとっては本当に良かったなと。より自由になれましたから。

Q:闇社会に生きる男を演じた火野正平さんとの共演シーンも印象的でした。

激しく蹴られているように見えますが…… リハーサルのときに火野さんが動きを提案されて、監督とよく揉んだうえで撮影しました。蹴るシーンは、その場でいきなり出てきたではないんです。ベテランの役者さんほど、危ないシーンを熟知されていますから。

Q:実際に火野さんのパンチが当たったことは?

僕はなかったですけど、建志くんには火野さんのワンパンチが入っています。彼は親父(古谷一行)の恨みじゃないかなと言っていましたね(笑)。

Q:どういう意味ですか!?

火野さんが建志くんに、お前の親父から火野正平の火の字がファイヤーでなく、デイ(日)の字で手紙をもらったことがあるんだよ、と言っていて。建志くんが“親父のクレームがいきなりきたよ”と(笑)。真実は火野さんのみぞ知るという。いつか、ご本人に確認してみてください。

Q:機会があればぜひ(笑)。火野さんも古谷一行さんも昭和のプレイボーイとして、かなり女性にモテたおふたりですからね。もしかしたら、名前を間違えたこと以外に、何かあったのかもしれません(笑)

火野さんは打ち上げの時、僕に“お前、彼女はいるのか?”と聞くんですよ。そこで僕が“嫁がいます”と返すと、“知っているよ!オンナだよ”と。

Q:素敵な奥様がいらっしゃる窪塚さんに対してそんなイケナイことを(笑)

悪い先輩です(笑)

Q:今回、インタビューさせていただいて、本作のマル同様、窪塚さんも信念を曲げずに行動する一途な方ではないかと感じました。演技や恋愛に対しても。

いいですね。ぜひ、そのイメージを広めていただきたいです(笑)

『アリーキャット』
7月15日(土)より、テアトル新宿ほか全国公開。 
配給/アークエンタテインメント
(C)2017「アリーキャット」製作委員会

取材・文/田嶋真理 写真/横村 彰