世界を震撼させた衝撃事件の真相や有名企業の黒歴史など、時が経った今だからこそ明かされる秘話がある。ここでは、当時、報じられなかった事件の内幕や関係者のその後に迫った新作をご紹介する。

虚構と現実が交錯する異色ドキュメンタリー『ケイト・プレイズ・クリスティーン』

本作は一般的なドキュメンタリー映画とは異なり、虚構のドラマと現実の事件を交錯させた、異色の構成が見どころ。2016年のサンダンス映画祭で上映時に評判を呼び、ドキュメンタリー部門の審査員特別賞(脚本賞)を受賞した話題作だ。1974年、フロリダ州サラソタの地方局で生放送中に自殺した美人キャスター、クリスティーン・チャバック。彼女を演じることになった女優ケイト・リン・シールは役作りのため、生前のクリスティーンの足取りを追う。ケイトは、自殺の現場となったスタジオの跡地、自殺した銃を購入した店、クリスティーンの家など、ゆかりのある場所を次々と訪問し、関係者や自殺に詳しい専門家たちを取材。

その過程で、ケイトはヘアスタイル、瞳や肌の色をクリスティーン風に変えていき、精神的にも肉体的にも同化を強めていく。そして、映画の撮影が佳境に差し掛かったとき、ケイトの心に驚きの変化が起こってしまう……。本作では、クリスティーンが子供を望めない体になっていたこと、片思いしていた男性を親友に奪われていたこと、自分の企画をボツにされキャリアに行き詰っていたことなど、自殺の背景になったと思われる新事実が多数明かされている。特に衝撃的なのが、都市伝説化していた彼女の自殺テープが2011年まで実在したと確信を持って語る関係者の証言だ。ちなみに、現在、ネットではクリスティーンの本物の自殺テープとされる動画が“流出”しているが、その真贋は明らかになっていない。

映画『ケイト・プレイズ・クリスティーン』
アップリンク渋谷にて公開中
公式サイト:http://www.chunfufilm.com/kate-plays-christine
配給:chunfu film
(C)2016 by chunfu film

野心と胃袋を刺激する物語『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』

世界最大級のファーストフードチェーン、マクドナルドを作り上げたレイ・クロック。本作では、現在の企業イメージからは想像もつかない黒歴史が描かれている。新しもの好きで、次々と商材を変えてビジネスを行い、失敗続きだったレイは、50代でマック&ディック兄弟が経営する、マクドナルドと出会う。これまでにない勝機を見出したレイは兄弟を説得し、フランチャイズ化を推進。手段を選ばず利益を追求するレイは、やがて兄弟との全面対決へと突き進んでいく。

レイが容赦なく兄弟から権利を奪っていく姿を見る観客の心を、嫌悪の一歩手前で踏みとどまらせるのが、レイ・クロックを演じたマイケル・キートンの存在。長年の低迷期を脱し、映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされて、華麗に復活した彼の生き様は、成功を追い求めたレイに重なる。なお、映画『スパイダーマン:ホームカミング』(8月11日、日本公開)でもマイケルは悪役を演じているが、家族愛から悪に手を染めるという設定で役柄に深みを加えており、いぶし銀の演技が高く評価されている。

映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』
7月29日(土)より、角川シネマ有楽町、角川シネマ新宿、渋谷シネパレスほかにて全国公開
配給:KADOKAWA 
公式サイト:http://thefounder.jp/
(C) 2016 Speedee Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

チャーリー・シーン渾身の俳優復帰作『ナインイレヴン 運命を分けた日』

本作は、2001年9月11日、ワールドトレードセンタービルに飛行機が激突し、北棟のエレベーターに閉じ込められた人々の実話にインスパイアされ、オフブロードウェイでも舞台化された「エレベーター」を映画化した注目作です。主演を務めたのは、2015年11月にHIVに感染したことを公表して以来、初の俳優復帰作となったチャーリー・シーン。家族を顧みず働き、ウォール街の帝王と呼ばれた億万長者の実業家が死を前にし、生き方を見つめなおす姿を熱演している。エレベーターに閉じ込められた5人の男女を励ましながら脱出をサポートする、オペレーターのメッツィー役でウーピー・ゴールドバーグ、チャーリー演じる億万長者の妻の母親役に往年のセクシー女優ジャクリーン・ビセットが出演。

ジャクリーンの出演シーンは少ないものの、現在72歳とは思えない、エレガントな美貌を披露している。スキャンダル部分をクローズ・アップされがちなチャーリーだが、アメリカ同時多発テロや東日本大震災など、多くのチャリティ活動を支援しており、優しい面も持ち合わせている。そんな彼がこのタイミングでアメリカ同時多発テロを描いた作品と巡り合ったのは、運命なのかもしれない。

映画『ナインイレヴン 運命を分けた日』
9月9日 (土)より、新宿武蔵野館、丸の内TOEIほか全国公開
配給:シンカ 
協力:松竹 
公式サイト:http://nineeleven.jp/
(C) 2017 Nine Eleven Movie, LLC

取材・文/田嶋真理