数多くの漫画や小説が映画化されている昨今。実写化作品で気になるところは、やはり原作のキャラクターとキャストとのリンク具合です。作品の出来栄えを左右する大きなポイントですが、役への入れ込み方がハンパじゃない映画がこの夏に公開されます。

その作品とは石田スイによる人気コミックを映画化した『東京喰種 トーキョーグール』(7月29日公開)です。もし、食物連鎖の頂点に立っていたはずの人類を喰らう種族がいたら……? そんな悪夢のようなパラレルワールドが舞台ですが、世界観に違和感なくマッチした俳優陣の役作りがとにかくすごいんです!

どこか闇を感じさせる演技がさらに深化…窪田正孝

姿かたちは人間と同じながら、人肉を捕食することで生命を維持している“喰種”と人間が混在して暮らす本作。窪田正孝は、ある事件で重傷を負い、喰種の臓器を移植されたことで”半喰種”になってしまう大学生のカネキを演じています。読書を愛する穏やかな青年から、血肉を渇望するモンスターへと変わっていく哀しみ。そして半喰種となったことで喰種たちの思いを知り、善と悪とで割り切ることのできない二種族間の価値観の違いの中で葛藤する姿を、繊細な演技で見事に表現しています。

窪田といえば、ドラマ「デスノート」での、人の死亡時期を操る主人公・夜神月役や、「MARS(マース)」での主人公を窮地に落とし込む聖役など、心に闇を抱える人物は得意中の得意ですが、本作ではそこからさらに深化。喰種として覚醒したカネキが内なる衝動を解放させ、口元を血まみれにして佇む姿…。“モンスターの狂気”を併せ持つ薄気味悪さに、思わずゾッとさせられ、鳥肌が立ってしまうことでしょう。

これまでのイメージとは全く異なる、不気味な捜査官を怪演…大泉洋

得意な演技を深めた窪田に対し、イメージを一新させたのが、喰種と戦うCCG(喰種対策局)の捜査官・真戸呉緒を演じた大泉洋です。まずビックリしてしまうのがそのビジュアル。肩までの白髪に、猫背でニヤリと笑う佇まいは、漫画からそのまま飛び出してきたかのようなハイクオリティです。

さらには、喰種たちの捕食器官である赫子(カグネ)を加工した武器“クインケ”に異常なまでの執着を見せる様子や、喰種たちを追い詰め駆逐していく執拗さなど、内面の異様さも完全再現。本来なら人々を守る頼もしい人物であるはずですが、そのあまりの冷酷で無慈悲な振る舞いは、観ていて憎たらしくなってしまうほど……。彼がこれまで演じてきた軽妙でコミカルな役柄とは、180度違った不気味な演技は必見です。

正義を貫く捜査官を演じるために本格的に肉体を改造!

彼らとは違うアプローチで役に入り込んでいるのが、喰種捜査官・亜門鋼太郎役の劇団EXILE・鈴木伸之です。喰種との格闘シーンが多い彼は、亜門の強靭な筋肉を体現するためクランクインの1ヶ月前から過酷なフィジカルトレーニングを敢行。バキバキの筋肉を身に纏ったその姿は、ドラマ「あなたのことはそれほど」で見せた不倫がバレてタジタジとなる優男とは全くの別人です。

加えて、辛い過去を匂わす切ない表情や、そんな過去を打ち消そうと、黙々とトレーニングをこなすストイックな姿は、喰種の駆逐に執念を燃やす亜門の内なる気迫を見事に再現。ケレン味あふれる演出が多数ほどこされた本作において、正義を貫く亜門を人間味たっぷりに好演し、物語に確かなリアリティを与えています。

原作は世界中に多くのファンを抱える作品。それゆえに、本編完成前から世界23ヶ国での公開が決まっていた本作ですが、そのことに対する日本俳優陣の覚悟が作品からはひしひしと伝わってきます。フィジカルはもちろん役柄の本質にまで切り込んだ彼らの熱演は、見ておいて損はありません!

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)