浮世離れしたビジュアル、人間業とは思えないアクション……「実写化はさすがに無理だろう」と思われてきた漫画キャラクターの様々な側面を高い完成度で再現してきた驚異のカメレオン俳優、伊勢谷友介。その役作りの裏には、映画制作に対する並々ならぬ情熱、不可能を可能にしようと奮闘する不屈の精神、血の滲むような努力がありました。

これまで伊勢谷が演じてきた数々の漫画キャラクターの中でも、再現へのこだわりが特に凄まじい4つの役を取り上げて、彼の役者魂に迫ります。

壮絶な食事制限の果てに達成した大幅減量

伊勢谷の役作りのストイックさを物語るエピソードとしてまず挙げたいのが、映画『あしたのジョー』(2011年)で、主人公ジョーのライバル・力石徹を演じるにあたって臨んだ「過酷な減量」。

階級を下げてジョーとの闘いに挑む力石を再現するために、伊勢谷は過激な食事制限を耐え抜きました。映画の完成報告会見で伊勢谷本人が語った話によると、減量中、キウイとレモン一個ずつを口にすることは許されており、「キウイをいかに食べ応えがあるようにカットするか」ということに思案を巡らせたそうです。水を求めるシーンでは、リアリティを追究し、数日前からほぼ呑まず食わずで撮影に臨んだといいます。

そのような尋常ではない食事制限に加え、筋力トレーニングやサウナでの発汗に励んだ伊勢谷は見事、ごく短期間で10kgもの減量を成功させ、目標体重の57kgで計量シーンの撮影に挑みました。なんとその際の体脂肪率はたったの3%だったとか……

過度のダイエットのために、精神的に余裕がなくなったり、肉体の火照りや痺れを覚えたりと、心や身体への影響も少なからずあったようですが、いずれの困難にもめげずに、役者としての使命を全うした伊勢谷の執念には脱帽です。

満身創痍でも妥協を許さぬ不屈のメンタリティー

伊勢谷の役作りにかける熱い思いは、『るろうに剣心 京都大火編』(2014年)、『るろうに剣心 伝説の最期編』(2014年)で、主人公・緋村剣心に敵対心を抱く凄腕の剣士、四乃森蒼紫を演じた際の殺陣にもよく表れています。

本作に関するインタビューで伊勢谷本人が語った話によると、アクションシーンの撮影の度に小さな怪我を負うことは珍しくなく、肉体への負担が増せば増すほど、精神的にも追い込まれたそうです。「伝説の最期編」における剣心との対決シーンの撮影時には、足場の悪い山中で400手もの複雑な動きをこなす中、肩も腰も限界点に達し、膝には水が溜まってしまったとか。しかし、スタッフ陣の熱意に応えるには、「役者も本気にならなければいけない」と身体や精神に鞭を打ち、クオリティの高い殺陣の撮影に心血を注いだといいます。

「根本的に役者として、一度役に乗ったらそこから降りるつもりは全くない。中略折れるわけにはいかないんです」という伊勢谷の言葉には、与えられた役に対する彼の責任感の強さが溢れ出ています。

キャラクターの内面に対する鋭い洞察と分析

伊勢谷は、キャラクターの性格や心情に対する鋭い洞察力や分析力を備えた役者でもあります。『カイジ2 人生奪回ゲーム』(2011年)で、主人公・伊藤カイジを翻弄する裏カジノの支配人・一条聖也を演じることが決まった際、伊勢谷は、「人に憎しみをぶつけることで自分自身を成立させようとする彼の弱さ、傲慢さを表現できれば」と、自身の役柄を分析した上で、役作りへの展望を語りました。

その意気込み通り、伊勢谷が演じる一条は、カイジを凌ぐほどの強烈なインパクトを放ち、途中で気絶してしまうのではと心配になるほどの狂気を見せるも、終盤に向かうにつれ、徐々に情けない表情や言動が前面に表れてくるという、最後まで目が離せないキャラクターに仕上がっています。

原作ファンも唸らせるほどの驚異的な再現力

そんな“役作りの魔術師”ともいうべき伊勢谷友介が、話題作『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017年)で再現に挑戦するのは、原作シリーズ屈指の人気キャラクター、空条承太郎。本作の登場人物の中で最も遅くキャラクタービジュアルが公開された伊勢谷の承太郎ですが、髪の毛と帽子が一体化したように見える特徴的な頭部や、白のロングコートを颯爽と着こなす長身の立ち姿は、まさに原作の本人そのものです。

インタビューの中で、「空条承太郎には、中学の頃から恐ろしいほど憧れていた」と語った伊勢谷。思い入れの強いキャラクターを演じるからこそ、自身と役とのギャップを埋めるのが難しかった、と苦労した様子もありますが、三池崇史監督の創意工夫が随所に散りばめられた撮影は刺激的で楽しかったとのこと。ネット上では、その完成度の高さに、「伊勢谷友介の承太郎めっちゃかっこいい」など称賛の声が相次いで寄せられています。

異国情緒たっぷりのスペインで撮影されたシーンの数々も、作品にどのようなスパイスをもたらしてくれるのか期待が高まります。ジョジョのエキセントリックな世界観を一層引き立てていることまちがいなし。『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017年)は、8月4日(金)公開です。

(桃源ももこ@YOSCA)