文=石津文子/Avanti Press

『シン・ゴジラ』の特殊造形プロデューサー、西村喜廣が監督した『蠱毒(こどく) ミートボールマシン』(8月19日公開)が韓国の映画祭で上映され、大受け!  映画初主演となる田中要次は、満場のファンの熱狂ぶりに「この映画に出て本当によかったです」と俳優生活27年目にして味わう感激を口にした。 

この血しぶき飛び散るバイオレンス・スプラッターは、なぜここまで支持されるのか?

『シン・ゴジラ』ヒットでも西村監督の造形会社は赤字
『蠱毒 ミートボールマシン』はその状況を映画化!?

西村監督、キャストの田中要次、百合沙、笹野鈴々音が参加したのは、7月13日から23日まで韓国・富川(プチョン)市で行われたアジア最大のジャンル映画の祭典、第21回富川ファンタスティック映画祭。特殊メイク、造形の第一人者であり、血しぶき飛び散る残酷描写とブラックなユーモアで、海外映画祭で引っ張りだこの西村監督。『東京残酷警察』など彼の作品はすべて富川ファンタで上映されている。

『蠱毒 ミートボールマシン』は、西村が特技監督を手がけた『MEATBALL MACHINE ミートボールマシン』(2006年/山口雄大、山本淳一監督)をパワーアップしたもので、オリジナル版は人気沸騰中の高橋一生の初主演作。今や伝説のカルトムービーとなったこちらも富川ファンタで11年ぶりに上映され、ブルーレイも発売されることになった(高橋、西村、山口らの音声解説つき)。若き日の高橋一生演じる気弱な青年が、謎の生物と一体化し、血しぶきの中、ネクロボーグとして闘う姿はなかなかグロテスク。だが西村喜廣の創り上げる造形は、そんな残酷描写の中にも様式美を感じさせる。ちなみに高橋がブレイクした『シン・ゴジラ』の造形も西村が担当!

『蠱毒〜』の主人公は、昼は会社でののしられ、夜は母から小遣いをせびられ、さらにはガンに冒された、中年の取り立て屋(田中)。彼が東京下町を襲った謎の生命体によって異形の戦士ネクロボーグに変身し、想いを寄せる女性(百合沙)を守るために、死闘を繰り広げていくというバイオレンス・スプラッター。

上映後、ロシア民謡風の主題歌を歌いながら登場した西村監督は「借金などお金がモチーフになっているのはなぜか?」という質問に、「『シン・ゴジラ』は大ヒットしたけど、僕の会社(西村映造)は赤字だったんです。造形は凝れば凝るほど儲からない。それに不満というよりも、その状況を映画にしてしまえ、と思ったんです」と意外な背景を暴露。主題歌がロシア民謡風なのも、労働者の声というイメージだそうで「映画の中でも、僕が歌ってるんです」と明かすと、観客からどっと笑いが。また「日本は今、中学生の恋愛映画ばかり。そのアンチテーゼとして、僕が恋愛映画を撮ったらこうなるというのを見せたかった」とも語っていた。

田中要次、韓国でのサイン攻めに感激!

一方、韓国でもドラマや映画『HERO』の「あるよ!」のマスター役で顔を知られる田中要次は、ファンからサイン攻めにあい「韓国で僕を知っている人がいるなんて」と感激しきり。初主演がスプラッターという意外な選択になったものの「こんな大スクリーンで大勢の人に観てもらえて嬉しいです。初主演で海外の映画祭に招待してもらえるなんて、西村監督に感謝です」と語っていた。映画の照明スタッフ出身の田中は、西村監督がCM製作をしていた時代からの長年の知り合いだけに、初主演のオファーに喜んだものの、ハードな撮影に体力が保つのかが心配だったと言う。それでもほとんどのアクションを吹き替えなしでこなしている。

韓国訪問はこれが二度目という田中は、レッドカーペットやオールナイト上映などの合間をぬって、町歩きも満喫。西村監督行きつけの店でのタッカンマリ(丸鶏の韓国風水炊き)や、パッピンス(具沢山のかき氷)の美味しさに、「また来たい」と大喜びしていた。

海外ではポスト・三池崇史の呼び声も高い西村監督。すでに40以上の海外映画祭での上映が決まっており、西村監督は富川から直接、モントリオールのファンタジア映画祭へと飛び立って行った。また富川では、西村監督の次回作『エンバーマー』が企画マーケットでスペイン・シッチェス映画祭賞を受賞。製作前からシッチェスでの上映が決まった。モントリオールでは1000人もの観客が主題歌を大合唱したほどの盛り上がりだったという。

西村作品が海外で受ける一つの要素として、バイオレンスと同時に笑いがふんだんに盛り込まれていること。日本ではなぜか映画館で笑うことを躊躇する人も多いが(筆者は時々大笑いを注意されます)、これは世界的には異例なこと。腕や足が飛び散っても、あくまで“絵空事”の世界だということを噴水のような、あり得ない血しぶきで表現すると、どっと笑いが起きるのだ。また、西村監督は「残酷描写を目的とした女性監禁ものはやらない。これだけは決めています」というフェミニストでもある。

ちなみに、『蠱毒 ミートボールマシン』には、『虎影』をはじめ西村作品の常連である斎藤工が意外な姿で出演している。斎藤は、主演作『虎影』では家族を救うために闘う、抜け忍者を演じており、華麗な剣さばきを披露。笑いもふんだんで、『昼顔』とはまったく違う顔を見せている。西村とは『吸血少女VS少女フランケン』(2009年)などブレイク前から10作品あまりでコラボしており、「西村さんに誘われたら、絶対断らない」というほどの信頼関係で結ばれている。西村組は斎藤工のいわばホームグラウンド。斎藤といい、前述の高橋一生といい、イケメン俳優と呼ばれてはいるが、セクシーさの中に妙な生々しさとユーモラスさがある。それが西村の残酷描写と相性がいい部分。『蠱毒〜』ではあっと驚く姿なので、見逃さないように。