12月16日に公開される『8年越しの花嫁 奇跡の実話』は、結婚を目前に幸せの絶頂にいた20代のカップルに襲いかかった試練を描いた作品です。式の直前に倒れ、昏睡状態となった麻衣と、彼女の傍に居続けようとする尚志。結婚の約束をしてから8年後、2人に奇跡が起こります。

本作のように実話を基にした作品は、映画という枠を超え、観るものの心を打ちます。今回はそんな実話を基にした名作たちを厳選して紹介します。

記憶障害を乗り越えて結ばれた2人、しかし…『抱きしめたい ―真実の物語―』(2014年)
『抱きしめたい ―真実の物語―』は、2011年に放送されたHBC北海道放送のドキュメンタリー番組「記憶障害の花嫁 最期のほほえみ」を基に作られた映画です。交通事故によって左半身の麻痺と記憶障害の後遺症を抱えながら、車椅子で生活を送る主人公つかさを北川景子が、彼女と恋に落ちるタクシードライバーの雅巳を錦戸亮が演じています。

本作では、2人が出会ってからの恋愛模様に焦点を当てて作られています。雪の中を歩いてきたつかさの脚を雅巳がマッサージするシーンや、夜の遊園地でのメリーゴーランドのシーンなど思わず胸キュンするシーンが満載です。

特に、つかさが雅巳に「逃げるなら今だよ」と告げた後、雅巳がキスで答えを返す場面は胸が締め付けられます。そして結婚・出産を経験し、2人が幸せに満ち溢れていた直後に訪れる悲しい結末にはただ涙しかありません。

主題歌は先日引退を発表した安室奈美恵の「TSUKI」で、映画のために作られた曲だそう。愛する人への月が照らすような優しさを歌う同楽曲を聞けば、映画の中のつかさと雅巳の姿が思い浮かんできます。隠れた名曲なのでぜひご視聴あれ。

末期がんの妻と9カ月間のドライブ…『死にゆく妻との旅路』(2011年)
『死にゆく妻との旅路』は、1999年に実際に起こった事件を映画化した作品。末期がんの妻をワゴン車に乗せ、9か月も日本各地をさまよった男の手記が原作になっています。三浦友和がバブル崩壊で工場経営が傾き多額の借金を抱える主人公の清水を、がんの手術を終えたばかりの妻のひとみを石田ゆり子が演じています。

金策も職探しも上手くいかない清水は、末期がんの妻を連れてあてもない旅に出ます。その距離、なんと6,000キロ。272日もの間、清水は迫りゆくひとみの死と向き合いながら、ひたすら旅を続けていくのです。

仕事は見つからず、借金返済のあてもない日々。それでも、ひとみはこの旅を「結婚以来初めてのデート」だと嬉しそうにはしゃぐのです。最終的には作品でも現実でも悲しく、そして得も言われぬ結末が待っています。「妻が本当に望んだものは何だったのか」を考えながら作品を観ると、涙を我慢することができません。

巨匠・アラーキーの自伝的映画…『東京日和』(1997年)
写真家のアラーキーこと荒木経惟と、その妻・陽子との共著フォトエッセイ『東京日和』をモチーフに、竹中直人が本人主演・監督で映画化した作品です。非凡な才能をもったカメラマンである夫から見た、天真爛漫で愛らしい妻のエピソードの数々を振り返る内容となっています。

基本的には回顧録なので、作品自体もエピソードの積み重ねです。しかし、その一つ一つに主人公から見た妻の不思議さ、愛らしさがあふれていて胸を打ちます。

特に涙したのは、主人公が妻との日々を思い出すきっかけとなった、同僚の水谷の名前を“谷口さん”と間違えて、恥ずかしさのあまり台所から出てこなくなるエピソード。この“谷口さん”が一体何者なのか……時が流れてエンディングでようやく気付くことができるのですが、もう一度亡き妻と出会えたかのような感覚を、嗚咽する主人公の姿から感じることができ、思わず涙してしまいます。コメディを得意とする竹中直人の新境地となった作品です。

最後に「ウェディングドレスを」…『余命1ヶ月の花嫁』(2009年)
『余命1ヶ月の花嫁』は、2007年にTBSの報道番組「イブニング・ファイブ」で「余命1ヶ月の花嫁 乳がんと闘った24歳 最後のメッセージ」というドキュメンタリー特集として放送され、大きな反響を呼びました。その後に発売されたノンフィクション書籍も好評を博し、累計88万部を突破。この作品をきっかけにTBSで「ピンクリボンプロジェクト」のキャンペーンも展開されるなど、社会現象にも発展していきました。

そして2009年には、榮倉奈々と瑛太の主演で『余命1ヶ月の花嫁』は映画化されました。末期がんに冒され、余命1ヶ月と宣告された千恵。本作では彼女の「ウェディングドレスを着たい」という夢を叶えるために奔走する、恋人の太郎と友人たちの絆が描かれています。2人の出会いとがん発症による別れ。屋久島でのプロポーズに、がん再発による闘病生活、そしてラスト……千恵と太郎の歩んだ日々がひとつひとつ丁寧に綴られていました。

中でも胸を打たれたのは、千恵がドキュメンタリーへの出演を決意したシーン。乳がん撲滅を願い、同じ病気の人たちに勇気を与えるために、行動に移した彼女の強さに胸が熱くなります。

『8年越しの花嫁 奇跡の実話』は、麻衣と尚志の2人にフォーカスした内容となっています。突然、病に倒れた麻衣。それでも、彼女と一緒になりたいと、回復を待ち続ける尚志。果たして、2人に一体どのような結末が待ち受けているのか……。

今回紹介した映画3作にも負けない、主人公2人の強い絆と愛情を、ぜひスクリーンで体感してください。

(文/岸とも子@H14)