皆さんは健診結果を見るとき、一番気にする検査項目は何でしょうか?
どの検査項目が基準値から外れているか、どのような所見が出ているかは個人差があります。
また、治療中の方は治療している数値に注目するでしょう。

私自身、保健師として何千人もの健診結果を見てきましたが、ある数値・所見については多くの方が正常値から外れていたり、腹部超音波で所見が出ていたりしても「脂肪が付いているだけ」「再検査行っても異常なしと言われるので大丈夫」などと無視しがちでした。

それは……脂肪肝(肝機能)です。

脂肪肝を「ただ肝臓に脂肪がついた状態」と思い、放置すると取り返しのつかない肝臓の病気を引き起こす可能性があります。
今回は肝臓の働きや脂肪肝について解説します。

肝臓のことを知ろう

肝臓はお腹の右上、胃の隣にある約1.5kgの重さのある人体の臓器の中で脳と並ぶ最大の臓器です。
肝臓の役割は多岐にわたり、500種類を超える重要な機能を担っています。
肝臓の主な働きは以下になります。

● 解毒

小腸から送られてくる血液をチェックして、危険なものが含まれていないか確認し、有毒な物質と判断したものは無毒化してくれます。
アルコール、アンモニア(栄養素を代謝・過度な運動時に体内で発生)、たばこ(ニコチン)、薬、食品添加物などを解毒します。

● 代謝

食物から栄養素をそのまま利用することはできないため、胃や腸で分解・吸収された栄養素を利用しやすい物質にして肝臓に貯蔵します。
主に、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン、ホルモンなどの貯蔵・合成・分解を担っています。

● 免疫

病原体が口や鼻などから侵入してくると近くにある白血球やNK(ナチュラルキラー)細胞が病原体を攻撃しますが、処理しきれなかった病原体は肝臓に運ばれ、肝臓にあるクッパー細胞が対応します。

● 胆汁の生成

脂質の消化・吸収を助ける液体を生成します。
胆汁は肝臓で生成されると、肝臓の下に位置する胆のうという臓器に貯められ、必要時胆のうから十二指腸へ分泌されます。

主な働きだけでも、私たちの生命活動に重要であることがわかります。
肝臓はさまざまな役割を担っているため、血液の質を決めていると言っても過言ではありません。
そんな肝臓ですが、非常に高い予備能力・再生能力を持っているため、病気が進行しないと自覚症状が現れない「沈黙の臓器」と呼ばれ、気づいた時には手遅れになります。

脂肪肝とは

脂肪肝とは、肝臓に脂肪(中性脂肪)が異常に蓄積された状態のことです。
具体的には肝臓内の30%以上が脂肪化している状態を指し、成人の3人に1人は脂肪肝と言われています。
「肝臓の数値が悪い」と聞くと「お酒の飲みすぎでは?」とイメージする方が多いですが、お酒をたしなむ程度、飲まない方でも脂肪肝がある方が増えてきています。

脂肪肝は自覚症状がありませんが、肝臓の働きは確実に悪くなっています。
この状態を放置していると、「脂肪性肝炎(NASH/ナッシュ)⇒肝硬変⇒肝がん」と進行する可能性があります。

また、脂肪肝から病状が悪化すると動脈硬化を早め、心筋梗塞や脳梗塞などの発症のリスクを高めると言われています。
残念ながら肝硬変まで進むと、いくら再生能力が高い肝臓であっても、元の状態には戻りません。

<脂肪肝になりやすい食品>

・ 糖質

食事から摂取した油や肉などの脂質も食べ過ぎると脂肪肝の原因になりますが、それより大きな影響を与えているのが糖質です。
糖質は私たちが活動するために必要なエネルギー源ですが、身体の中で増えすぎると糖質を中性脂肪に変えて肝臓にため込んでしまいます。
外食やコンビニなどを利用する機会が多くなったために、糖質の摂取量が多くなってしまう方が増えています。

・ アルコール

肝臓を傷めてしまう最も代表的なものです。アルコールは体内に入ると肝臓でアセトアルデヒドになり、最終的に水・二酸化炭素まで分解されて体外に排出されます。
このアセトアルデヒドが強い毒性を持っており、肝細胞を直接傷つけます。
また、アルコールは体内に入ってくると、それ以外で摂取した糖質や脂質の代謝を後回しにするため、肝臓に脂肪がつきます。

・ 加工食品

糖分や塩分、脂肪を多く含み、良質なタンパク質や食物繊維が少ない加工済みの食品のことで、多くは添加物や保存料などが入っています。
これを解毒・分解するのも肝臓です。保存や日持ちしやすくするためなどに使用されているので、当然肝臓に余分な負担をかけるものであり、摂取する機会が多いと肝臓は疲弊します。
その中でも超加工食品は肝臓に影響を与えるだけでなく、がんや認知症発症のリスクも上昇させると言われています。
※ 超加工食品の例:清涼飲料水、スナック菓子、菓子パン・総菜パン、インスタント食品、ピザ、ケーキ、ドーナツなど

今なら間に合う!脂肪肝を解消する行動をとろう

脂肪肝に特効薬はありません。
自分自身の生活習慣を振り返って、改善するしか方法はありません。
脂肪肝であれば元に戻ります!

これ以上病状を進行させないために、今日から取り組みましょう。

● 甘い飲み物はやめる

飲み物は水分補給として、3食以外に摂取する機会があります。
その際にジュースや砂糖入りコーヒーを摂取すると、1日にわたり中糖質を摂取することになります。
すると、肝臓は糖質を代謝し続けなければならないため疲弊します。
身体に良さそうにみえる野菜ジュース、乳酸菌飲料、スポーツドリンクも糖質が多く含まれている飲み物なので要注意です。
水、お茶、ブラックコーヒーに変更して、糖質の入っているものは習慣的に飲まないようにしましょう。
甘い飲み物は糖尿病にも直結しますので、まずは飲み物からの糖質摂取をやめることから始めることをおすすめします。

● 野菜を増やす

野菜は1日あたり350gが理想と言われていますが、生活習慣が乱れている方は、その量を摂ることができていないことも多いです。
350gは生なら両手で3杯、茹でたものなら片手で3杯となるので、それを目安に摂取しましょう。
野菜から食べることもおすすめです。

また、野菜全般良いですが、その中でもキャベツ、大根、ブロッコリー、チンゲン菜など「アブラナ科」の野菜が肝臓に良いと言われているので、積極的に摂取しましょう。

● 食事の糖質を減らす

外食やコンビニなどを利用すると、どうしても糖質が多くなりがちです。
脂肪肝の方は、まず現在とっている糖質を半分にすることを意識してみましょう。

たとえば、ラーメンとチャーハンのセット、うどんにおにぎりなどランチに行くと高確率でこのような炭水化物の過剰摂取をしてしまう方もいるかと思います。
炭水化物の重ね食いは避けましょう。
また間食も糖質を摂ることになるため、控えることをおすすめします。

● お酒を減らす

1日あたりのお酒の摂取目安(適量)は1合です。
また、休肝日も最低2日/週はとり入れて肝臓を休ませることが重要です。
飲酒量・頻度が多いと、肝臓の病気に近づくので注意しましょう。

● 運動をする

脂肪肝を解消するには、食事と運動両方取り組むことが近道です。
デスクワーク、テレワークであまり外に出る機会がないなど活動が少ない方は、今より+10分からで構わないので、定期的に身体を動かす習慣をつけましょう。