船員さんといってもなかなか身近に感じることはないかもしれませんが、海に囲まれている日本では、貨物などを運ぶ船員の方に生活を支えられています。
船員の働き方は、陸から長期間離隔される特殊な環境であることから、通常の労働基準法は適応されないことになっていますが労働環境が厳しく、船員数は減少傾向かつ高齢化が進んでおり、若年層の人材確保が喫緊の課題となっています。
国土交通省では、船員の働き方改革に向けた議論を行っており、今回はその議論の結果が「船員の働き方改革の実現に向けて」として発表されたのご紹介させていただきます。

現状の課題


特に厳しい労働環境とされているのが、日本国内の港から港へ荷物や人を運ぶ内航船に勤めている船員です。
内航船員のスケジュールは、1日単位では「4時間勤務、8時間非番」を2回繰り返し、年間では、概ね「3ヶ月乗船、1ヶ月休暇(下船)」を繰り返すなどが一般的となっています。
今回の調査で明らかとなった主な課題は以下のとおりです。

◆ 長時間労働
内航船員は労働時間が長い傾向にあり、また、長期連続乗船といった厳しい就労環境下に置かれている。

◆ 労働時間の適正な把握ができていない
労働時間の把握には、手書きの記録簿が多数を占めており、正確に記載されていない可能性がある記録簿も見受けられた。
また、時間外労働の割増手当を掲載していないという回答も47%あった。

◆ メンタルヘルス
高ストレス者の割合が多く、高ストレス要因として「運航スケジュールがハードであること」「人間関係」があげられている。

◆ 肥満率・疾病率が高い
肥満者やメタボリックシンドローム、疾病率が陸上職と比べて高い。

労働環境の改善案


・ 船内における各種活動の労働時間への該当性の明確化
・ 労働時間制度上例外的に取り扱われている作業の取扱いの見直し
・ 船内記録簿のモデル様式の見直し、見直し後のモデル様式の業界への推奨
・ 電磁的方法を活用した労働時間の記録・保存の方法について導入の検討
・ 事業者(使用者)に船員の労働時間を適切に管理する責務があることの明確化
・ 事業者(使用者)の下での労働時間等に関する事項の記録の保存・管理
・ 陸上の事務所における労務管理責任者(仮)の選任

主に労働時間に関するルール作りと、会社としての責任の明確化を推進する内容となっています。

健康確保に向けた改善案


・ 医学的な見地から健康確保をサポートする仕組み作り(産業医、ストレスチェック、面接指導等)
・ オンライン診療等による船内健康確保の実現
・ 内航船員の特殊性を踏まえたメンタルヘルス対策
・ 労働安全衛生確保としての健康診断の位置づけ
・ 生活習慣の改善による健康増進対策

産業医やストレスチェックなど、現在は対象外となっていますが遠隔での健康管理システムが実用化され、普及が可能となった段階で将来的な導入の義務付けが検討されています。
また健康診断については、現在は乗船時に船員として業務できるかの健康証明はありますが、健康診断や健康情報の管理は義務化されていません。

今後は、一般的な事業者と同様に事業者が健康状態を把握し適切な対処が行われるようなしくみづくりが行われる予定です。
その他、上記でご紹介した改善案を導入・推進していくための環境整備についても触れられており、説明会の開催や視える化・表彰制度などがあげられています。
事業者へルールを押し付けるのではなく、業界全体としての働き方改革が求められています。

<参考>
・ 国土交通省「『船員の働き方改革の実現に向けて』を公表します〜交通政策審議会海事分科会船員部会の議論をとりまとめ〜」