新型コロナウイルス感染症は、私たちのメンタルヘルスに少なからず影響を与えてきました。
今回は、特に働く人々のメンタルヘルスに新型コロナウイルス感染症がどのような影響を及ぼしたのかを、企業アンケート調査結果をもとにわかりやすく解説します。

<アンケート概要>
アンケート名:第10回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査
実施元:公益財団法人日本生産性本部
調査期間:2021年7月15日〜9月17日
調査対象:新興市場を除く上場企業(東証、札証、名証、福証)のうち、案内の了解を得ている企業2,312社(人事担当)

コロナ禍で30代の「心の病」の割合が増加傾向に

企業アンケート結果によると、「心の病の最も多い年齢層」は2021年の結果では30代が最も多く39.9%、次いで10代〜20代が29.0%、40代が27.5%、50代が3.6%でした。

2019年の企業アンケート結果とくらべると、多くの年代は「心の病」が減少傾向であるのに対して、30代のみ33.3%から39.9%と6ポイントも数値が増加しました。
30代のみ「心の病」の割合が増加したのには、以下のような理由が考えられます。

・ 在宅勤務の担当など、責任ある立場の人が多い
・ 感染拡大の影響によって子どもの園や学校が休みとなり、ライフワークバランスが取りにくくなった

9割の企業がコロナ禍によって従業員のメンタルヘルスの影響は「良くなっていない」と回答

続いて、新型コロナウイルスが従業員のメンタルヘルスにどれくらい影響を及ぼしたかをみていきます。
企業アンケート結果によると「新型コロナウイルスによる従業員のメンタルヘルスへの影響」で最も多かったものは、「変化なし」で53.1%、次いで「悪くなった・やや悪くなった」41.3%、最も少なかったのは「やや良くなった」で5.6%でした。
なお、「良くなった」の回答は0件でした。

また、新型コロナウイルスによってメンタルヘルスへの影響が「悪くなった」と回答した企業と「悪くならなかった」(変化なし・やや良くなった・良くなったと回答した企業)に分け、メンタルヘルスへの影響要因を調べてみたところ、前者の企業の回答で多かったのは、「コミュニケーションの変化」86.2%、「感染への不安」56.9%、「在宅勤務の増加」56.9%、「対人関係の変化」46.6%でした。
新型コロナウイルスの影響により、在宅勤務の導入が大きく進みましたが、こうした働き方の変化によるコミュニケーションや対人関係の変化によって、ストレスを感じた人は多かったのではないでしょうか。
一方で、メンタルヘルスの影響が「悪化しなかった」と回答した企業で多かった要因は、「在宅勤務の増加」66.7%、「職場の対人関係の変化」52.9%、「コミュニケーションの変化」41.7%、「ライフワークバランスの変化」27.5%でした。
さらに、「悪くなった」と回答した企業とそうでない企業の回答をくらべてみると、「在宅勤務の増加」「職場の対人関係の変化」「コミュニケーションの変化」、「コミュニケーションの変化」など、ほとんど同じ要因が上位を占めており、在宅勤務による就業環境の変化を、従業員のメンタルヘルスに悪影響があったと感じている企業と、今までと特に大きな変化がないと感じている企業に分かれていることがわかります。

健康経営などで「効果があり」と実感している企業ほど「心の病」は減少傾向

最後に、健康経営をはじめとする企業の取り組み状況と従業員のメンタルヘルスの関係をみていきます。
企業アンケートでは、「健康推進(健康経営)」「ハラスメント対策」「場所に縛られない働き方革命」などの取り組みに対して、効果が上がっていると感じているか調査を行いました。
どの取り組みに対しても、「取り組みの効果が上がっている(とてもそう思う・そう思う)」と感じている企業のほうが「あまりそう思わない・そう思わない」と回答した企業より多いことがわかりました。
また、2019年度とくらべると、いずれの回答も前回の調査より「効果が上がっている」と回答した割合が増加していることが読み取れます。

特に「場所に縛られない働き方革命の効果が上がっている」という設問数の増加が特に顕著で、「そう思う・とてもそう思う」と回答した割合は前回に比べ28.3%から57.4%と2倍近く割合が増加し、新型コロナウイルスの影響によって、在宅勤務の導入が加速したことが大きく影響していると考えられます。
また、企業アンケートではこうした企業の取り組みの効果と従業員の心の病の増減傾向の相関関係も結果が公表されています。
「健康推進(健康経営)」「ハラスメント対策」「場所に縛られない働き方革命」それぞれの取り組みに対し、効果が上がっていると回答した企業のおよそ7割が、従業員の「心の病」は減少傾向にあると回答しました。
なお、取り組みの中では、「ハラスメント対策」が一番心の病の減少傾向が高いことがわかり、3つの取り組みの中で最も従業員のメンタルヘルスに直接影響を及ぼす対策と考えられます。
新型コロナウイルスは従業員のメンタルヘルスにおいて、決していい影響を及ぼしたと言えませんが、在宅勤務の定着をはじめ、いままでなかなか進められなかった「健康推進(健康経営)」「ハラスメント対策」「場所に縛られない働き方革命」などの取り組みを進めるのには良い機会になったと言えそうです。

参考:公益財団法人日本生産性本部「第10回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果」(https://www.jpc-net.jp/research/detail/005595.html)