社長の出身大学をみると、大学ごとの傾向が見えてくる。「大学ランキング2018」(朝日新聞出版刊)に掲載している「社長の出身ランキング」をもとに、教育ジャーナリストの小林哲夫さんが大学の特徴を読みとく。



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 卒業生が多い。歴史と伝統がある。全国区である――。

 社長の出身大学ランキング上位校の特徴はこの三つに尽きる。全企業ランキングは日本大、一部上場企業ランキングは慶應義塾大、女性社長ランキングでは日本大が首位。それぞれトップの座は、長い間、変わっていない。日大は圧倒的な卒業生数によるものであり、慶應は1970年代から一部上場企業への就職者が他大学よりも多いからといえる。

 一部上場企業社長ランキング、女性社長ランキングの2位、3位はいずれも接戦となっている。

一部上場企業社長の2位の座をめぐって東京大、早稲田大が熾烈な争いを続けている。2016年は7人差、17年は12人差で東大が2位だった。東大は中央省庁のキャリア官僚を多く出しているが、就職活動では「民間」呼ばわりする一部上場企業への就職者も少なくない。一方の早稲田は、ベンチャー系などさまざまな企業に就職する者が多く、また、意外にも地方公務員が相当数輩出している(東京都職員は早稲田がトップ)。しかし、それでも一部上場企業をめざす学生はかなりの数にのぼる。一部上場企業の社員数は早稲田のほうが多いが、社長の数では東大が上回る。東大出身官僚が天下ってきた分だけ、早稲田が及ばないということだろうか。

 東大出身の社長をみると、官僚養成機関としての伝統を垣間見ることができる。日本国有鉄道(国鉄)が7社のJRグループに分かれて30年経ったが、現在のJR北海道、JR東日本、JR東海、JR九州、JR貨物の社長は東大出身。JR西日本は九州大、JR四国は神戸大出身となっている。旧国鉄の幹部候補生に東大出身がやたらと多かった頃の名残だろう。

 一部上場企業社長では青山学院大が前年比4人増で29人となり、上位10校に入ったのが注目される。青学出身の一部上場の社長には、アサヒグループホールディングスの小路明善氏、サイバーエージェントの藤田晋氏、セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一氏らがいる。最近有名になったのが、タレントで女優の菊川怜氏と結婚した、カカクコム、クックパッドの社長だった穐田誉輝氏だ。

 女性社長ランキングは、16年が2位慶應(198人)、3位早稲田(194人)。17年になると2位早稲田(204人)、3位慶應(202人)となり、早慶の順位は僅差で逆転した。

 早稲田はこの結果を見通していたかのように、受験生向けパンフレットのOG紹介で2年続けて女性社長を掲載した。15年パンフレットにはインテルの江田麻季子氏が登場。1988年第一文学部卒で、2013年に社長となった。16年パンフレットでは野村信託銀行の鳥海智絵氏がインタビューページを飾った。1989年法学部卒で、野村證券などを経て2014年に社長に就任した。2人とも男女雇用機会均等法の施行以後に社会人となった世代である。

 2017年の新社長を紹介しよう。

 みずほ銀行頭取には常務だった藤原弘治氏が就任した。早稲田大出身で、初めての私立大学出身となった。みずほ銀行のトップはこれまで東大4人、京大2人。メガバンクに官尊民卑的な発想はなくなったとみていいか。大和証券グループ本社では、早稲田出身の中田誠司氏が副社長から昇格。野村證券の森田敏夫氏(同志社大卒)も副社長から昇ってきた。長時間労働問題で揺れた電通は、慶應出身の山本敏博氏が就任した。ここ数年、電通への就職者数は慶應が他大学を圧倒する強さを誇る。

(教育ジャーナリスト・小林哲夫)