2000年に本のECサイトとして日本に上陸したアマゾン。いまやあらゆるものを扱い、他の追随を許さない巨大ECサイトに成長した。一方で、アエラが行ったアンケートでは、回答した137人のうち「アマゾンを使っている」と答えた人が96%。同時に、「できれば使いたくない」と答えた人が44%もいた。拡大の原動力は。便利なのに不安にさせるものの正体は。AERA 2017年7月24日号では「アマゾン」を大特集。アマゾン・ジャパンのキーマンたちに話を聞いた。

 日常生活の隅々にまで入り込むアマゾン。指をくわえて見ているのではなく、立ち向かおうという日本企業がある。狙うのは、アマゾンの「死角」だ。

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 7月6日、セブン&アイ・ホールディングスと、オフィスへの文具宅配で成長してきたアスクルの提携が発表された。11月から、アスクルの個人向けネット通販サイト「LOHACO(ロハコ)」内でセブン&アイの冷凍食品や生鮮食品を売る「IYフレッシュ(仮称)」が始まる。

 とめどなくサービスを拡充するアマゾンに、対抗できる日本企業はあるのか。セブン&アイとアスクルの提携は有力候補だ。ジャパンEコマースコンサルタント協会代表理事の川連一豊さんはこう話す。

「『ロハコ』は女性の支持が厚く、アマゾンとは違うブランド力がある。セブン&アイの商品力が加われば競争力も上がる」

 アスクルが運営する個人向けネット通販として、2012年10月にスタートしたロハコ。17年5月期の売上高は、前年比2割増の約390億円。商品点数も約50万点とアマゾンに比べて多くはないが、「企業連携」と「情報共有」から生まれたデザイン性の高い独自商品や品ぞろえが、30〜40代の女性に支持されている。

●小さな市場でも利益を

 その中心は、マーケティングデータを共有しネットならではの商品を共同で開発する「ロハコECマーケティングラボ」だ。17年7月時点で飲料、化粧品など124のメーカーが参加する。アスクルの岩田彰一郎CEOが目指すのは、「メーカーと消費者をつなぐプラットフォーム」だ。

「ビッグデータを独占するのではなく、開放することで社会的価値を創造したい。従来型のマスコミ−マスセールではなく、お客さまの多様なニーズをきめ細かく反映できるスモールサイズの市場でも収益が出るモデルを作っていく。それがメーカーの利益とお客さまの満足を両立させることにつながる」

 アスクルがオフィス向け通販で培った物流システムもロハコの配送に生きている。東京都内の10区、大阪市内の8区で提供中の「ハッピー・オン・タイム」は1時間単位で配達時間を指定できるサービス。配送予定時刻が30分単位で通知され、配送10分前にも通知が届く。

「速さを競うと無理が生じる。お客さまが望むのは『自分が受け取れる時間に確実に届くこと』。ビッグデータとAI(人工知能)を掛け合わせた最適化で再配達率も大幅に減りました」

 と岩田さん。こう続けた。

「アマゾンは学ぶべき点の多い企業ですが、消費者の選択肢がない社会は健全ではない。私たちはよりきめ細かく、気持ちよく、好きになっていただけるサービスの提供に注力します」

 在庫管理、配送をすべて自社で行うことで存在感を発揮する企業もある。1998年、アマゾン日本上陸に先駆けてスタートした国内ECサイト「ヨドバシ・ドット・コム」だ。家電量販店ヨドバシカメラのネット通販だが、取り扱う約510万点のうち家電は2割弱。日用品、食品、飲料などが多くを占める。17年3月期の売上高は約1080億円で前年比1割増。将来的にはグループ全体のネット通販比率を5割にする計画だ。

 物流センターと各店舗で在庫を一元管理し、配送もすべて自社の従業員が担う。当日配送、翌日配送、日時指定便はすべて無料。16年9月から東京23区と一部地域で最短2時間半で商品を届ける「ヨドバシエクストリーム」サービスを始め、スピードでもアマゾンの「プライムナウ」に引けを取らない。

 注文したものは店舗でも受け取れるし、店舗の在庫、展示品の有無もネットで確認できる。リアル店舗との相乗効果は高く、将来は商品知識を持った配送員をそろえて「店舗で購入するのと同じ状態」を作りたいという。藤沢和則副社長は言う。

「配送員が商品の相談から故障などのアフターケアまでできれば、大きな付加価値になる。自社配送なら不可能ではない」

●量的拡大より質の強化

 アマゾンは15年9月からプライム会員向けに映画やドラマが見放題の「アマゾン・プライム・ビデオ」も始めたが、業界トップとして迎え撃つのが、NTTドコモとエイベックス通信放送が運営する「dTV」だ。ドコモのモバイルの販売網と顧客データの活用で、月額500円(税別)の低料金と豊富なコンテンツ提供を両立させてきた。

 アマゾン・プライム・ビデオは1カ月325円(税込み)と国内の有料動画サービスで最安値だが、コンテンツは約1万2千本(推定)と約12万本を誇るdTVの10分の1。dTVは会員数でも、実質的なサービス開始から5年で約470万人(17年3月時点)と国内最多だ。ドコモの山脇晋治デジタルコンテンツサービス担当部長は言う。

「コンテンツは数を増やすよりも、ユーザーが見たい作品をそろえることに注力している。また、その作品を見たい人に的確に届けるレコメンド機能やインターフェースの構築に力を入れています」

 コンテンツの調達には膨大なコストがかかる。会員が「本当に見たい作品」に絞るほうが費用対効果が高く、会員基盤の強化にもつながる。

「急成長の後は、量的拡大よりも質の強化が重要。市場、顧客データも積み上がっており、レコメンドの精度も飛躍的に向上した」(山脇さん)

 アマゾンは国内のプライム会員数を公表していないが、推定で800万人。半数がプライム・ビデオを使用すれば、一気にdTVに迫る。

「アマゾンの動きは注視するが、われわれが目指す『質の強化』という軸がぶれることはない」(山脇さん)

(編集部・作田裕史)

※AERA 2017年7月24日号