経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 24日の日曜日はクリスマスイブ。みなさま、プレゼントはもう決められましたか?

 この時期になると、日本ではエルメスやティファニーなどのブランドショップになが〜い列ができます。なぜ、これがこんな値段で、しかも相手がそれを欲しがるのか(ここはガールフレンドを想定しましょう)、という極めてミクロ経済学的な問題をこの時期にぜひ考えてみましょう。

 エルメスにバーキンというカバンがありまして、約300万円ぐらいのものです。カバンに300万!? 車が買えるだろ!と普通の人は思いますわね。そもそもただのカバンであります。なぜ300万円という値段がつくのか?

 機能という面からすれば、同じような品質の革を使って同じように一流のプロが縫っても遜色がないものが出来上がります。だいたい10万円も出せばできるらしいのですが、絶対売れないんだそうです。なぜなんだ、バーキンと同じ質で300万円じゃなくて、10万円で買えるならそのほうがいいじゃん……と思わないわけなんですよ、世の女性は。残り290万円はそのエルメスという「ブランド」に払われた価値と考えないと、経済学的には「詐欺」と変わらなくなってしまう。ではブランドとはいったい何ものか。

 みんなが欲しがるものという定義があるんですが、じゃ、なんでみんなが欲しがるんだ?となり、答えになってない。なぜみんなが欲しがって、あなたのガールフレンドも同様に欲しがるのか?という点に答えねばなりません。

 実は近代経済学は、この問題に関しては、まったくの無力です。なぜならば人間は100%自分が得をする経済行動をとると定義しているからです。機能が同じなら10万円のカバンが世を席巻してエルメスは倒産するというのが近代経済学の結論であって、こういうものは存在しないことになっている。しかし、いまの資本主義は、むしろこっちこそが経済の中心。1個50円のキャベツに行列する一方で、10万円の価値のものが300万円でガンガン売り切れている。ここに格差という問題が絡まってくるわけですが、今の「石頭経済学」ではこの問題には手も足も出ない。今年のクリスマスはこのあたりを、ぜひガールフレンドにお聞きになってみたらいかがでしょうか(別れてもしりませんけど!笑)。メリークリスマス!

※AERA 2017年12月25日号