カルロス・ゴーン前会長が昨年11月に逮捕されてから大揺れの日産自動車。新たに西川広人社長ら複数の役員経験者が、かさ上げされた報酬を受け取っていたことが判明した。

 日産は9月9日に取締役会を開き、ゴーン前会長の不正行為を認定し、会社が被った被害総額は350億円規模に上ると発表した。西川社長は9月16日に社長を辞任する。かさ上げされた報酬は返還するとしており、事実上の引責辞任だ。西川社長は後継が決まるまで当面続投する意向を示していたが、取締役会で早期の辞任を促され、受け入れざるを得なくなった模様だ。

 山内康裕最高執行責任者がトップを代行し、10月末までに新たな社長を決める。

 日産はゴーン前会長や西川社長らの不正について、詳しい調査報告書は公表しなかった。会社側としては不正問題について「大きな節目を迎えた」として、今回の会見で幕引きを図りたい考えだ。

 だが、西川社長らの報酬かさ上げについては意図的で悪質な行為だったとの指摘もある。調査報告書を公表しないまま、西川社長らの主張に沿って「単なる社内ルール違反」だったと片づけようとする会社側の姿勢は批判を浴びそうだ。

 日産は横浜市の本社で午後9時前から、木村康・取締役会議長ら経営陣が会見した。その後、辞任することになった西川社長が会見し、次のように述べた。

「社長になって以降、検査の問題やゴーン事件、業績不振と過去のうみが噴き出した。負の部分を取り去ることが出来ず、道半ばで去ることをお許しいただきたい。今回やや早いタイミングであるが、今月ということで決めていただいた。やり残したことは、次の世代に引き継がれることを期待している。ルノーとの関係は日産の独自性を維持しつつ、提携を維持していって欲しい」

 西川社長らのかさ上げされた報酬の問題は、ゴーン前会長とともに逮捕されたグレッグ・ケリー前代表取締役が、「文芸春秋」で指摘。ケリー前代表取締役は、株価に連動して報酬を受け取れる権利「ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)」の行使日をずらすことで、約4700万円を意図的に上乗せして受け取ったと主張していた。

 こうした主張について、日産はケリー前代表取締役にヒアリングしないまま、「西川社長らは報酬が不正な手法により増額されたことは認識していなかった」と結論づけた。本来は独立した第三者委員会を立ち上げるなど詳しく調べるべきだが、社内調査だけですました。西川社長らについての調査は、ゴーン前会長やケリー前代表取締役に比べ、“甘い調査”だと指摘されそうだ。

 日産は仏自動車大手ルノーに、株式の43%を握られている。新たな社長は、大株主であるルノーの意向にも配慮しなければいけない。

 西川社長はゴーン前会長に引き立てられてきたが、前会長が逮捕されると一転して厳しく批判するようになった。日産の独立性を高めるため、ルノーと交渉していたが、自らの報酬問題で早期辞任することになった。西川社長は引責辞任について明確には認めなかったが、想定していたよりも早いタイミングでの辞任になったことは認めた。その上でゴーン前会長らへの思いについて、次のように述べた。

「今回は次への準備の節目として、本来取るべき責任はどこで取るかと言うことで、一番早いタイミングを選ばせていただいた。ゴーン前会長とケリー前代表取締役については、こういう会社の状態を作り出してしまった。お客様にも心配を掛け、社員にもいらぬ苦労をさせている。こういう状態にしたのが一番の罪だろうし、本当に悔いていただきたいと思っている。そういう形での謝罪なり表明は、一回も聞いたことがありません。そこを是非、強く感じてもらいたい」

 ルノーは日産への経営関与を強めようとしている。新たな社長はルノー側の要求をどうかわしていくかが問われるが、西川社長の早期辞任で日産側の交渉力が低下する可能性もある。今回の会見で、会社側は一連の問題に一区切りついたと強調したが、日産の混迷はかえって深まっている。(本誌・羽富宏文、池田正史、多田敏男)

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