仕事の基本「ホウレンソウ」。しっかり実践しているつもりでも、上司から評価が得られていないとしたら、やり方に問題があるかもしれない。ゴールドマン・サックス、マッキンゼー&カンパニー、ハーバード・ビジネススクールを渡り歩いた、ベリタス株式会社代表取締役・戸塚隆将氏の著書『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』から、有能な人の「ホウレンソウ」を紹介する。

*  *  *
■リアルのホウレンソウは先手必勝

「戸塚、例の件どうなっているの?」

 甲高い上司の声がオフィスに響きました。少々苛立だっているようです。3日前に指示を受けた、ある業界のリサーチについて状況報告をしろ、というリクエストでした。

「例の件」という表現で、私には何の件かすぐにわかりました。なぜかといえば、私はその日の午後に中間報告をしようと考えていたからです。

 午前中は別件のクライアントから電話があり、対応に追われていました。とは言いつつも朝一は比較的落ち着いていて、緊急の電話さえなければ、お昼前に上司に報告することができたはずでした。

 上司のもとにいくと、矢継ぎ早に質問が飛んできました。私のリサーチ内容に厳しい突っ込みがありました。全体としてリサーチの出来はまずまずでした。決して厳しい質問を受けるようなものではなく、冷静に受け答えすれば、すんなりと終わるホウレンソウのはずでした。

 それが間髪をいれずに質問が飛んでくると、たじろぐものです。その態度が、上司には自信のなさに映ったのでしょう。通常ならば3分程度で終わるはずの報告が、結果15分以上かかりました。報告が終わった後、私は汗ばみながら席に戻りました。

 この出来事は、私がゴールドマンの新人時代に実際にあった光景です。ホウレンソウの基本ができていなかった悪い例です。

 ホウレンソウの基本は、上司に聞かれる前にすることです。

 上司に聞かれてから報告するのでは遅いのです。自ら先に報告をしにいくことで、ポイントを整理し論理立てて伝えることができます。準備がしっかりできているため、自信を持った受け答えができます。

 逆に、聞かれてから答える場合は、瞬間的に状況整理をして伝える能力が追加で求められます。必然的に受け身の態勢になり、相手に伝わりにくくなります。突っ込まれて反論する。ディフェンシブな態勢になります。ホウレンソウは、受け身になる前の先手必勝が基本です。

 上司の立場を考えてみましょう。仕事を任せた以上、部下に対して細かな注文をつけないように気を使ってくれているかもしれません。自ら報告にくるのを、今か今かと待ちながら、催促しないように心がけているのかもしれません。

 部下の自主性と主体性を育てようと干渉を避けているのかもしれません。あるいは、上司によっては、単に感情的に報告を催促する人もいるでしょう。その場合は、上司の性質を考慮して気持ちが高ぶる前に報告に行く意識が大事です。

 もし、すぐにホウレンソウをする時間がないのであれば、早目に上司のもとに行き、後ほど報告させて欲しいと断りに行くべきです。

 外出してしまうようであれば、メモを置く、先に簡単な状況報告をメールで送る、などの対応をするべきです。大事なことは、上司に催促される前に自らが報告に行く、という先手の意識です。

■ホウレンソウは念押し型で行う

 その際のホウレンソウも「念押し型」で行うべきです。

 念押し型のホウレンソウとは、

「私は◯◯と考えていますが、よろしいでしょうか?」

 と、仕事の進め方について上司に念を押しながら相談することです。

 念押し型ホウレンソウは仕事を効率的に進める上で必須なばかりか、あなたに対する信頼を高めてくれます。念押し型が板に着く頃には、より大きな責任ある仕事を任せてもらえるでしょう。

 ホウレンソウとは「報告・連絡・相談」の3つの活動を組み合わせた略語です。つまり、「組み合わせ」の仕事であり、別々の業務ではありません。この3つは、単独で成立するものではないのです。常に3つの要素を含んでこそ、仕事が完結します。

 連絡することだけが目的ではありません。報告することだけが目的にもなりません。

 連絡と報告なしで、そもそも相談はできません。

 実際の順番から言っても、実は、ホウレンソウはレンホウソウです。連絡をして、報告をし、相談をします。報告は一方的なものではなく、相手の意見を聞き、軌道修正をし、賛同や承認を得る目的で行われます。

 つまり、連絡をし、報告をして、同時に相談するプロセスを、いかに効率良くポイントをおさえて実現するか、が重要です。

■ホウレンソウに仮説思考を入れる

 念押し型ホウレンソウの鍵は、仮説思考です。自分なりに仕事の進め方に関して仮説を立て、結論を導きます。そして、ホウレンソウの際には必ず仮説と結論を用意してのぞみます。

 冒頭のホウレンソウの例では、結論を述べ承認を求めています。必要があれば簡潔に述べられるよう、結論の根拠である仮説を整理しておきます。

 ホウレンソウの一言に仮説を含めるべきケースがあります。それは、承認を求める上司の意見と自分の導き出した結論が異なる可能性がある時です。

 その場合は、

「私は◯◯と考えています。理由は△△です。この方向で進めてもよろしいでしょうか?」

 と、結論の後に仮説を一言付け加えます。それにより、上司から「なぜ?」と問われる時間を省けます。

 そして、上司と自分の間でなぜ意見が異なるのかを重点的に議論できます。あなたのロジックに一定の説得力があれば、仮に上司の結論と違っていても、あなたを信じて任せてもらえます。

 念押し型ホウレンソウを効率良くできると、周囲のあなたに対する評価は高まります。それは単にホウレンソウが上手になったからではありません。あなたの課題解決力、仕事の進め方、等に対する結論の導き方を信頼してくれるからです。そして、近い将来、より大きな仕事を任せてもらえるようになるでしょう。

戸塚隆将(とつか・たかまさ)
1974年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。ゴールドマン・サックス勤務後、ハーバード経営大学院(HBS)でMBA取得。マッキンゼー&カンパニーを経て、2007年、ベリタス株式会社を設立、代表取締役に就任。同社にて、プロフェッショナル英語習得プログラム「ベリタスイングリッシュ」を運営。