鉄道各社は今、コロナの影響で利用客が激減し岐路に立たされている。収益拡大のための鉄道事業以外での方針、そして経営基盤を強化のための「JR再結集」についてどう考えているのか。AERA 2020年10月26日号はJR西日本の長谷川一明社長に聞いた。



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──鉄道事業以外での収益拡大も重要になりそうです。

 まさにその通りで、我々は鉄道以外の部分が遅れているという自覚はあります。自分たちの土地に限らず、駅周辺などをしっかり再開発して沿線価値、地域価値を上げていく必要がある。鉄道と沿線開発を一体で行うというビジネスモデルは、同じ関西で阪急の故・小林一三さんが築き上げたものですが、近年は関東の私鉄さんも非常に先進的な取り組みをされている。そうした事例からも学んで、ただ輸送していればいいというのではなく、トータルで沿線のお客様に向かい合う必要がある。これは私たちの強化ポイントだと考えています。

──具体的な方針はありますか。

 まず街づくりでは梅田とか三宮といったターミナルだけではなく、より居住地側、郊外側で開発を強化します。駅前に限らず、例えばこれから小中学校が統廃合していきますから、そういった跡地の活用も考えています。我々、これまではどうしても「鉄道運行に支障を来すような投資はできない」という慎重な姿勢を取ってきた。ですが今は突然2030年が訪れたという状況です。鉄道、不動産という垣根を越えて各地の案件に積極的に、スピーディーに対応して、そこで生んだ利益を鉄道に還元していく必要があると思っています。

 もう一つは、サテライトオフィスを作ってリモートワーク化の流れを捉えることです。最寄り駅にサテライトオフィスを作れば、家だとどうにも集中できないという人々のニーズを捉えられます。白浜、倉敷、尾道といった場所に作れば多拠点居住、多拠点勤務の流れを生み出せ、運賃面でも施設運営でも収益につながります。実験的なレベルではありますが、すでに事業者様と協力して、そのようなサテライトオフィスと運賃をコミコミでいくらにしますといった商品も作ってマーケティングしているところです。もちろん、施設を全て自前でやるのではいけない。地域のみなさんと一緒に、地産地消につなげていく必要があると思います。

■JR再集結許されない

──収益拡大のため、経済規模が大きい東京・首都圏の事業を強化する考えはありませんか。

 東京でどんどん事業を拡大するということは考えていません。もちろん、競争が激しい首都圏で腕を磨いて、それを沿線で生かすことには大きな意味があり、それは今後も続けます。ただ、我々の沿線にはまだまだ潜在力があり、それを磨くことが第一だと考えています。

──NTTのドコモ完全子会社化で、「電電再結集」がささやかれています。JRはどうでしょうか。まず経営が厳しいJR四国を救済する経営統合は。

 それはないでしょう。もし救済が目的ということであれば、我々の株主総会で認められないと思います。例えばJR東日本はJR北海道を支援していますが、これもあくまで技術、人員面での支援ですよね。

──では東日本や東海を含めた大連合で経営基盤を強化するという可能性はどうでしょうか。

 それもないでしょう。そもそも国鉄の旅客部門が6社に分割されたのには、理由があったわけですから。それを覆して違う形にする理由は、30年経った現状においてもありません。それに今では役員クラスでも分割民営化後の入社の人が出てきていますから、各社が完全に独立した企業文化になっています。もちろん、災害時などはお互いに助け合いますが。

 そもそもJR再集結は経営基盤の強化になるでしょうか。また大きな塊に戻ることで、国鉄1社体制のような非効率を招くことは許されません。

(聞き手/編集部・上栗崇)

※AERA 2020年10月26日号より抜粋