「コンビニ百里の道をゆく」は、52歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

*  *  *

 キリンビールの社長だった布施孝之さんが先月、亡くなられました。享年61。あまりに早すぎるその知らせは、本当にショックでした。

 私がローソンの社長に就任して以降、お取引先のトップとして温かい応援の言葉をかけてくださる存在でした。応援と言っても、いつも言葉少なで、はにかんだような笑顔が印象的でした。

 私と同じ営業畑でずっとこられた方なので、仲間を思う熱い気持ちや、商品にかける情熱など共感するところが多々ありました。社長になられてからは会社を改革され、ビール類のシェアを大きく伸ばされました。社長としても、心から尊敬できる方でした。

 突然の訃報を聞いたのは、正式発表の日の朝。信じられなかった。何とか手を合わせに伺いたいと思ったのですが、コロナ禍の事情でかなわず。でも、いてもたってもいられない。その夜は一番搾りを買って帰り、献杯しました。

 その時にあらためて、やはり感謝と尊敬の気持ちを伝えるために、何かしたいなと考えました。

 そこで、キリン本社がある東京・中野のローソン11店舗で、布施さんが再生された「一番搾り」と、大成功を収めた「本麒麟」を並べた棚を作り、「ありがとう布施さん」「ありがとう一番搾り」「ありがとう本麒麟」と掲出することにしました。

 対象の店舗のオーナーさんに協力をお願いすると、快諾いただきました。すぐにでも「ありがとう」の思いを伝えたい。こんな気持ちになったのは、初めてのことでした。

 掲出している間、想定外の反応もありました。店を訪れたキリンの社員の方々が「本当にありがとうございます」「布施も喜んでいると思います」など、口々におっしゃってくださったそうです。そのこともうれしかったですね。

 何度でも伝えたいです。ありがとう、布施さん。

竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

※AERA 2021年10月18日号