「コンビニ百里の道をゆく」は、52歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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「営業の現場をぜんぜんわかってない!」

 会社を舞台にしたテレビドラマで、血気盛んな営業部の社員が経営側に食ってかかる場面、よく描かれますよね。私も営業畑出身。その気持ちはよくわかります。

 営業の仕事の肝は「お客様はどう考えていらっしゃるのか」という姿勢に尽きます。お客様にご満足いただき、信頼を培って「次」にも期待いただけることで初めて、商売が成り立つ。「自分の都合」は、営業の世界ではほぼ通らない。

 しかし、店舗は国内1万5千店、海外に数千店という規模があり、成城石井、ローソンエンタテインメント、ユナイテッド・シネマ、ローソン銀行など、様々な事業を行う企業が仲間だという中でやっていると、つい「一つの世界」ができ、自分たちの効率性を優先する「プロダクトアウト的」な発想になりがちです。

 しかし、会社という組織がどう回っていくかと考えると、なかなかこちらの都合通りにはいきません。まずお客様の声を聞き、そこを起点にしていく「マーケットイン的」な発想でないと、商売は続いていかない。

 経営側の人間にももちろん「営業マインド」は必要ですし、もっと言えば営業部門以外、たとえば法務や総務、財務・経理の社員にも、「お客様があってこそ成り立っている会社の一員なんだ」という意識が大事です。

 お客様フレンドリーな財務・経理、お客様にご満足いただける法務、お客様目線の総務であるべきなんです。そして、そこを皆が意識して会社が回っていると、営業の現場にいる社員への理解度も違ってくると思います。

 つまり、「全員で営業している」ということなんだと私は考えています。「お客様起点ですべての物事を考えていく」。とくに私たちのような小売業で働く者にとっては、忘れてはならないことです。

竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

※AERA 2021年11月1日号