「コンビニ百里の道をゆく」は、52歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 ナチュラルローソンでは今年度、日本にいながら現地の味を楽しんでいただこうと「ハワイフェア」や「スペイン・イタリアフェア」「台湾フェア」などを開催しました。コロナ禍でも旅行気分が楽しめると好評で、11月2日からは「シンガポールフェア」を開催しています。

 台湾フェアの商品を試食中のときのこと。ゴコウフンという台湾の調味料の特徴的な匂いに「あぁ、懐かしい」と思わず声が出ました。初めて台湾に行ったとき、屋台街でその匂いを嗅ぎながら「シジミのしょうゆ漬け」を食べたのを思い出したんです。匂いだけで一気にその土地にタイムスリップできる。そんな思い出があると、食の楽しみはさらに増しますね。

 イタリアでは、どんな小さな店でもパスタは抜群においしかった。シンガポールの地元の方が集まる店で食べたバクテー。ドイツで食べたカレーヴルスト(カレー味のソーセージ)とビール、ザワークラウト。その土地のソウルフードを楽しめたことは、私にとって大切な思い出です。

 いちばんの思い出の海外の食べ物は? 私が選ぶとしたら、初の海外滞在での一皿です。19歳の大学生だった私は、ハワイ島で1カ月ほどホームステイをしました。そのとき地元のレストランで食べたハンバーガーのおいしかったこと! お肉のボリューム感、どっさりの野菜にパイナップルも入り、ケチャップを豪快にかけて食べる。「やっぱり本場はすごいな」と当時の私はとても感動しました。

 その土地にはその土地に最も合ったおいしい食べ物が存在する。「食文化」とはよく言ったもので、いかに「そこにあるもの」をおいしく食べ、楽しく仲間と過ごすか。いわばそこで生活してきた人の歴史と英知が詰まっているものなんだな──。海外での食体験は、そんなことを気づかせてくれたように思います。

竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

※AERA 2021年11月15日号