円安が止まらない。対ドル円相場は6月22日に136円台をつけ、20数年ぶりの円安水準となった。円安は輸入品の価格を押し上げるため、生活に大きな影響を与えている。円安はどこまで進むのだろうか。

 今年初めは115円前後で推移していたが、それから2割近くも下落。原材料や輸送費などの高騰で物価は上昇しているが、このうち、輸入物価が円安だけで今年に入って2割近く押し上げられている形になっている。

 ドル高・円安の主因は、日米の金利差拡大とされる。米国がインフレ退治で利上げを進めている一方、日本は金融緩和を続けている。お金は金利の高いところへ流れていくため、ドル高、円安になっている。

 どこまで円安が進むのかは「米国のインフレ退治がどこまで続くのかで決まる」と話すのは、マネックス証券チーフ・FXコンサルタントの吉田恒さん。吉田さんは「過去の経験則から、(現在は)相当行き過ぎたドル高・円安」と指摘し、「140円を超えていくのは難しいのではないか」とみている。

 当面は142円までの円安を予想するのが三井住友DSアセットマネジメント。同社のチーフマーケットストラテジストの市川雅浩さんは「最近、金融市場に変化が出てきた。潮目が変わってきている可能性がある」と話す。

 市川さんによると、米国で大幅な利上げが続くと景気が減速するという見方が金融市場で出始めている。米国は当面、政策金利を引き上げていっても、「来年半ばくらいに引き下げる可能性が出てきている」(市川さん)。       

 一方、最近の円安は日米金利差拡大のほか、日本の貿易赤字もあると指摘するのは、ニッセイ基礎研究所・上席エコノミストの上野剛志さん。日本が輸入する資源価格の高騰で貿易赤字が続いており、4月で9カ月連続の赤字。貿易収支で支出が収入を上回る赤字になると、実際の取引でドルを手当てする必要のほうが上回っていることを意味する。

 原油など高騰する資源価格については、急速な下落を見込みにくく、上野さんは「高止まりがコンセンサス」という。このため、貿易赤字が改善すると見込みにくく、「投機筋は安心して円を売ることができる」(上野さん)。

 上野さんも、夏場までに140円くらいまで円安が進み、秋以降に緩やかな円高ドル安になる可能性があるという。円安の進行が止まるのは、ドル高の圧力が止まるとき。すなわち、米国の利上げで景気減速の懸念が強まり、利下げを意識してくる段階とみている。一方、150円まで円安が進行するのは、米国金利の利上げがさらに進む場合だが、米国経済が耐えられるのかという問題もある。上野さんは「150円はなかなか行かないのではないか」という。

 米国では11月に中間選挙がある。インフレの逆風が吹き、バイデン政権の民主党は苦戦するとの見方が根強い。市川さんは「どういう結果になってもインフレ抑制策が続き、為替市場への影響は限定的」と、市場に影響するような政策変更はないとみている。一方、上野さんは「バイデン政権がレームダック(弱体)化し、米国経済の先行き懸念が出てくる」との可能性を指摘する。

 いずれにしても、当面は円安が続くとみられる。個人投資家はどう対応すればいいのか。吉田さんは「素直に外貨投資するのがいい」と話す。ドルやユーロを買うか、ドル預金もいいという。市川さんも「ドル預金はやりやすい」と話す。市川さんは一般論として、ドル預金を持っていれば一定の金利がつくほか、円安が進めば為替差益も狙えるかもしれないという。

 市川さんによれば、いまの株式市場では、景気悪化の影響などを受けにくい内需を中心とした“ディフェンシブ株”が注目されているという。具体的には食品や鉄道、電力・ガスなどだ。市川さんは「リスクを抑えた投資という声が多い」という。

 当面は円安が続きそうで、輸入物価上昇などインフレ圧力はおさまりそうもない。(本誌・浅井秀樹)

※週刊朝日オンライン限定記事