この人が出る映画は観たい。そう思わせる筆頭が「もたいまさこ」ではないだろうか。今回は39歳の監督と初タッグ。認知症のおばあさん役だ。

「認知症には前から興味があってNHKの特集などを見ていましたけど、患者さんは千差万別で『これを参考に』というのがあるわけじゃない。難しかったけど、手探りで演じました」

 主役は2人の女子高校生だ。派手め系のはづきと優等生の葵。交わることのない2人が、おばあさんと出会い、変わっていく。

「おばあさんの記憶からは大切なものがどんどんはがれていく。でもひとつだけ一番覚えていることが『一通の手紙をある人に渡す』ことだった。その相手が誰か──それがこの映画の素敵なところだと思います」

 友情がテーマでもある。

●長電話をした高校時代

「自分も高校生のころはよくあんな熱量で、あんなにしゃべっていたなあと思います。友達と休み時間も放課後も話して、家に帰って電話して。あの年頃ってまだ言葉を持っていないから、本でも音楽でも自分の気持ちに一番近いものを探すんですよね。だから音楽がすごく必要だった。誰が好きだったかって? ザ・ゴールデン・カップスです(笑)」

 話したことはないが、気になる同級生がいた。

「『あの子、けっこう大人なのかな』とかね。いま会って『あなたどういう人だったの』って聞いてみたい人は何人かいます」

 劇団時代の交友はいまも続いている。

「3◯◯(さんじゅうまる)時代の友人とは、今も時々会って飲みながら話をすることもあります。私はどちらかといえば、はづきタイプかな。若いころは独りでいることはあんまりなかった。いまのほうがずっと独りでいますよ」

 もたいさんの生活、気になる。

「撮影で朝早くから夜まで働いていると、そのあとプッツリ糸が切れたように放心していることが多いんです。『あ〜あ、やることはいっぱいあるんだけどなあ』って思いながら一日ダラダラして、そのくせ『ごはん食べない?』とか誘われると、のんきに出かけてしまいますが」

●また猫と暮らしたい

 以前は猫と暮らしていた。

「人懐っこい、怒ることを知らない優しい猫でした。20歳まで生きました。ペットロスにもなったけど、仕事で家を空けることを考えると切なくて。また飼いたいなあと思いながらもう10年以上になりますね」

 独りテレビに怒ることもある。

「さすがに精神衛生上よくないなあと思って、このごろはいやなニュースは全部チャンネルを変えてしまうのですが、それがいいのか悪いのか」

 現在、64歳。40代からおばあさん役をやってきた。

「全然いやじゃなかったですよ。素じゃなく出られるほうがちょっと楽というか。そうじゃないと『恥ずかしい』気持ちが先に立っちゃうんです。扮装してやれるなら、それに紛れたい。でも、もうほとんど老年がリアルになってきてるから」  
 それはそれで楽しい、と笑う。

「動作遅くなるよねえ、字が見えなくなるよねえとか、もう実感としてありますからね。いままでは外郭のおもしろさだけで『楽しい』と思ってたことが、内側に入ってきたというか」

 昨年春、93歳の母を看取った。これからのことを考えますか?

「もうなるようにしかならないですよ。開き直ってます」

 なんだか力が湧いてきた。(ライター・中村千晶)

※AERA 2017年7月17日号