私は芸人を辞めたが、やはり芸人が大好きである。アツイ人間が多いからだ。

 特にある人との出会いが大きかった。いつか売れて同じ位置に立ちかたった。

 その人は宮川大輔さん――。

 ある日、宮川大輔さんが初めて後輩ができた若手らにこうアドバイスした。

「金なかったら何でもええねん。先輩ならコンビニで缶コーヒー買ってやって、公園で後輩の悩み聞いたれや」

 先輩からいっぱいご馳走になってきたんだから、今度は少しずつ後輩に何でもいいからご馳走してやれ。そこから、信頼関係が生まれるんだという先輩になる為の自覚を持たせた言葉である。

 宮川大輔さんという人間は、人間として正面からぶつかってくれるアツイ部分がある。

 私が初めて吉本新喜劇に入団して、お芝居に出させてもらい、その日の打ち上げに参加した時のことだ。

 他の仕事で途中から合流してきた大輔さんが、先輩に挨拶を済ませ、席に着くや否やド素人の私なんかに話しかけてくれたのだ。

「お前、誰やねん?」とツッコミを入れられた私が「新津勇樹と申します。よろしくお願い致します」とガチガチに緊張して答えると、「お前変態そうな顔しているな」と一言。その言葉に対し、反応せねば、とある種の賭けで、トコトン下ネタをぶち込んだ。するとツボに入ったのか、大爆笑してくれた。

 気づいたら共通の下ネタでかなりの時間、盛り上がっていたのを覚えている。そのあまりの盛り上がりように、他の先輩芸人が注視し、「大輔と盛り上がってるこの若手(私)は、誰やねん?」と何やらザワザワした雰囲気になった。

 その直後に宮川大輔さんが、「新津はオモロイですわ、ほんまにこいつはオモロイですよ」と他の先輩芸人たちに紹介してくれたのだ。芸人のイロハもわかっていないような私みたいな若手を素直に評価してくださったのには、本当に嬉しかった。

 あまりにも恐縮する話だが、若手であろうと面白い人をきちんと評価してくれて、私の下ネタを真正面から受け止めてくれた宮川さん。いつか、この人のようになりたい、この人に認められたいと私はその時に思った。

 また、この人の心情は芸人用語で「マンキンでいく」である。これは万金丹(まんきんたん)を飲んでいるようなハイテンションで、自分のネタを最後までやり切ることから由来する言葉で、常に全力で笑いを取りに行く、という意味だ。

「世界の果てまでイッテQ」のロケでは、宮川大輔さんはチーズ転がし祭りに参加し、傾斜35度、全長50メートル以上の丘を全力で転げ落ちながらゴールした。その日本人の姿に会場は拍手喝采の嵐だったが、首や足首を大怪我した。しかし、帰国後の吉本新喜劇の舞台には包帯姿で舞台に立ち、それすら笑いに変えていた。

「すべらない話」でトークを展開する時は、立ち上がって、手振り身振りを交えながら擬音を使い、動きながら全力で喋る。あの姿が宮川大輔のスタイルであり、観るもの、聞くものは彼の虜となる。

 また、すごいのは舞台を降りてからも全力なことだ。後輩のTシャツをいきなり破いたり(もちろんその後、新しいものを買ってあげたらしい)、衝撃的だったのは、楽屋でピースの綾部祐二さんをパンツ一丁にし、パンツごと綾部祐二さんを両手で持ち上げて、上下にブンブン振り回していたことだ。人はパンツで簡単に持ち上がるんだと衝撃を受けたのと同時に、宙に浮きながらも「大輔やりすぎだよ、マジでやりすぎ」とツッコミを入れる綾部祐二さんに対して、真剣な表情でやり続ける宮川大輔さんの姿に周りは大爆笑の渦だった。

 こんなことは芸人であってもなかなかできることではない。

 核家族化や格差社会、ストレスを多く抱える現代では人との繋がりが希薄になりつつある。常に真正面からモノゴトにマンキンで取り組むアツイ宮川大輔さんの姿は、私たちに元気をくれると思う。(文/元吉本芸人・新津勇樹)