ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「J-POP」を取り上げる。

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 日本独自のポップスが誕生し早50年だそうです。流行歌、昭和歌謡、演歌、アイドル、フォーク、ロック、ニューミュージック、ダンス、Hip Hopなど様々なジャンルが蠢く中、果たして日本人にとって、最も『鉄板』で『どストライク』な音楽、もしくはアーティストとはいったい誰なのか? この世に『絶対』はないとはいえ、ポップス(大衆商業音楽)における必勝パターンは、すでに出尽くしており、あとはそれらの分量と掛け合わせ方、流行り廃りのタイミング、何よりアーティスト本人の有り様(見た目や声も含む)とのバランス次第。今週はJ-POPとやらの最大公約数を探ってみたいと思います。

 まずは、【1】哀愁や郷愁を誘い、【2】季節感が明確。【3】あくまでカラオケで歌えるレベルのわび・さびに富んでいて、【4】『独唱』にも『大合唱』にも適している。その一方で、【5】酔っ払うとついていけなくなるぐらいのテンポ感と早口加減も備え、全体的に【6】洋楽っぽさも漂わせることが大事です。さらには、【7】男女問わず共感できる恋愛模様を描き、【8】壮大なバラードで世の中を一律に感動させないといけません。

 とんでもなく無理難題な気がしますが、ここまでの要素を凝縮すると、『サザン』にたどり着きます。ユーミンや達郎さん、尾崎豊なども思い浮かぶも、現代日本人はどこか【9】コンビ、トリオ以上のグループを好む傾向にある上に、【10】ちょっとしたお笑い・おふざけ的なエッセンスも求めます。そう考えるとサザンの鉄板加減は、昔からずっと磐石なのです。やがて90年代に入り、【11】高音や声量で圧倒するボーカル力の時代が到来します。昔から「キーが低い歌手は売れない」という定説もあるみたいですが、この流れにハマって天下を取ったのが『ドリカム』ではないでしょうか。彼らは【12】難し過ぎないハモリや掛け合いといった、カラオケブームに伴う新需要にも適応しました。しかしながら、ハイトーンボイスの価値は、悲しいかな【13】女性よりも男性のそれの方が高いのが現実。そこをクリアした『B’z』は、ロック系はもちろん、実はダンス系ポップスの進化にも大いなる貢献をしたグループですし、【14】適度に哲学的なものをちりばめるというメソッドを、見事『売れ線』にメジャー化させたバンドとして、『ミスチル』の存在も大きいと言えるでしょう。他にも、15.ギターまたはピアノ一本でも完結できる(路上・アコースティック感)、【16】アイドル的ルックス、または佇まいの人がいる、【17】自分で作詞・作曲をするといった『鉄板項目』があるのですが、これらをもとに算出していくと、最終的に『チャゲアス』と『アルフィー』という解(かい)が導き出され愕然とします。と同時に必要不可欠な要素を忘れていたことに気付きました。【18】程よい若さと健全さ。できればNHK的な健全さだとモアベターです。

 これで答えは出ました。『ゆず』です。なるほど。どうりで、どこで観てもしっくりくるはずだ。Mステだろうと紅白だろうとオリンピックだろうとヒルナンデス!だろうと。あとは日本の伝統文化でもある【19】ヤンキー的な耽美を身につけ、踊りながら英語で歌えば天下統一です。彼らなら出来る。すでにセカオワっぽい不思議の国系スタイルを打ち出している姿を、私は知っています。いっそ化粧も!

※週刊朝日 2017年8月11日号