2009年にショートショートフィルムフェスティバルで上映された、第1回ショートストーリーなごや佳作入選作『街灯りの向こうに』。その原作者である青山美智子さんが、昨年9月に新著『木曜日にはココアを』を上梓した。三省堂書店・新井見枝香さんが『読みどころ』を紹介する。

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 始まりは、小さなお店「マーブル・カフェ」の一杯のココアだった。そこで生まれた小さな物語が、地球の裏側まで広がっていく。

 ひとつひとつは独立した12の短編だが、タイトルにはブルー、ピンクといった物語を表す色が含まれていて、全てそろえばまるで缶に入った色鉛筆のようにぴったりと収まる。読者はマーブル・カフェでココアを飲むことも、真夏のシドニーで不思議な大晦日を迎えることもできないけれど、物語の中にいる彼らが知ることのない、とびきり素敵なことを知る。見ることのできない景色を目撃する。

 だから、素敵な恋をしたり、力強く前へ進んだりする登場人物たちを見て、「それに比べて私は……」なんて気持ちには絶対にならないから大丈夫。この本は、物語の中の人も、それを外から見守る人も、同じくらい幸せにする。

※AERA 2018年2月5日号