■旧社屋の本物のテレビ局をロケセットで使用

 多くのテレビ局が開局50周年、60周年を迎える今年。さまざまなスペシャルドラマや特別番組が放送されている。なかでも特に注目されたのがHTB(北海道テレビ)で制作された「チャンネルはそのまま!」だった。3月初旬から5夜連続で放送され、SNSなどで視聴者からの投稿が相次いで話題になっていた。4月以降も北海道以外の地方局で続々と放送が続いている状態だ。同作は「動物のお医者さん」(白泉社)などの大ヒット作で知られる漫画家・佐々木倫子氏による原作のドラマ化作品で、北海道を舞台に、若手女優として頭角を現している芳根京子(22)が主人公を務めた。



「まず佐々木倫子作品という昭和〜平成の漫画好きに刺さりまくる題材を使っていて、さらに原作に忠実だったのが良かった。実はHTBが新社屋に移転するタイミングで撮影されたようで、旧社屋をロケセットとして存分に使ったことが功を奏し、ドラマにリアリティを持たせることができた。普通はスタジオにセットを建てたり、別の施設をテレビ局に見立てたりして撮影をしますが、本当のテレビ局をロケで使えることなんて通常はありえないですからね」(キー局民放ドラマプロデューサー)

 開局50周年ドラマというだけあって、役者陣もかなり豪華だった。劇団系の実力派俳優や東京03などの芸人が脇を固めながら、主演の芳根京子らの活躍はみずみずしいものがあった。さらに撮影現場も和気あいあいと進んだようだ。

「芳根さんを始め、同期アナウンサー役の宮下かな子(25)さんや飯島寛騎(22)さんなど、年齢の近い若手俳優が集まり、長期間の北海道でロケを敢行。合宿みたいな雰囲気だったとか。演者のなかには、東京でも平行して仕事を持っており、北海道と東京を行ったり来たりするハードな現場になったそうですが、それがゆえに役者やスタッフたちの関係も深まったそうです」(同)

 また、札幌を拠点に活動を続け、北海道では絶大な支持を誇っている劇団ユニット・TEAM NACS所属の俳優や関係者も出演。ミスターこと鈴井貴之(56)や大泉洋(45)、安田顕(45)など、実力・人気ともに申し分ないメンバーが揃って出演したのだ。

「やっぱりHTBは『水曜どうでしょう』を制作していた局ということもあって、TEAM NACSの面々とも絆が深い。そんな彼らがしっかりと出ていたのも感慨深いものがありましたね。TEAM NACSを擁する芸能事務所・クリエイティブオフィスキューは、北海道を舞台にした映画の制作にも数多く関わっていますし、やはり地元愛が違いますよね。安田さんもそうですが、特に大泉さんは芝居はもちろんのこと、バラエティ対応もしっかりできる唯一無二の存在です。最近ではなかなか簡単にはバラエティに出てくれなくなりましたが……。大泉さんのように相手がとんねるずでもダウンタウンでも、うまく立ち回ってくれる俳優ってなかなかいないと思うので、番宣にかこつけてなんとか出てもらえたらと思ってる制作陣も多いかと思います」(同)

■全国ネットではなくネットフリックスを選んだHTB

 ドラマウオッチャーの中村裕一氏は、TEAM NACSの魅力についてこう分析する。

「老若男女、全方位から好感度の高い大泉洋のポジションは今後も安泰でしょう。加えて、ここ最近は安田顕の存在感が際立ってきています。昨年放送の『下町ロケット』(TBS系)だけでなく、単発ミステリードラマ『満願』(NHK総合)では、部下の死の真相を調べる巡査部長役が非常に印象的でした。また、6月に公開される岡田准一主演の映画『ザ・ファブル』ではヤクザの若頭役を演じるなど、渋いオトナの魅力で今以上に引っ張りだことなるのは間違いないと思います。TEAM NACSはもちろんプロフェッショナルな集団ですが、良い意味で北海道らしく牧歌的というか、大らかで根っこでは繋がっている深い絆を感じさせ、根強いファンが多いのもうなづけます。地方発エンターテイメントの成功例として非常に興味深いですし、今後の動向からも目が離せないでしょう」

 一方、TEAM NACSを中心に豪華な役者陣に彩られたこのドラマは全国ネットになってもおかしくない。しかし、意外にもHTBが組んだのはネットフリックスで、放送と同タイミングで配信されたのだ。

「通常ローカル局が周年番組をやる場合、全国ネットを狙うんです。いつも自社制作の番組がネットできない局であっても、”周年”ということでキー局が枠出しをしてくれるからなんですが、今回はあえてそこを狙わずネットフリックスと組んで『全世界』にむけて配信を目指したことの意義は大きい。この戦略は、ローカル局の一つの生き残り方だと思います。後年、この作品がベンチマークとして語られることになるかもしれません」(前出のプロデューサー)

 テレビの視聴率や収益が下がる一方で、共同テレビなどの制作会社も勢いを増している。この作品をもり立てた役者の面々が後生に語り継がれる日が来るのかもしれない。(ライター・今市新之助)