天陽くんが、死んだ──。

 連続テレビ小説「なつぞら」で、ヒロインなつの北海道時代の同級生であり、なつがアニメーターを目指すきっかけとなる存在だった、吉沢亮演ずる山田天陽が、9月3日放送の第134話で、36年の短い生涯を終えた。



 SNS上では、<天陽くん、ありがとう><最期まで美しかった><やっぱり寂しいよ>などと、「天陽ロス」ともいえる状態が巻き起こっている。朝ドラに関する著書が多数ある田幸和歌子さんはこう話す。

「なつと一緒になると期待していたファンも多かったようですし、なつが上京し、天陽くんが北海道に残ることで出番が大幅に減るころから、すでに“プチ天陽ロス”的なこともありました。なかには、北海道の天陽くんの様子を小画面で映しておいてほしいという人もいたぐらいでした(笑)」

 視聴者は、天陽のどこに引かれたのだろうか。

「吉沢亮は、単に顔がきれいなだけでなく、憂いのようなものがあるんですよね。そこが、どこかはかなげで、透明感のある天陽くんの役にぴったりハマったのではないでしょうか」(田幸さん)

 ドラマ評論家の吉田潮さんは、天陽を「天使のような存在」と評する。

「なつは、なんだかんだといろいろうまくいっているんです。初恋のようなにおいも少しはありましたが、それは進展することもなかった。なつがアニメの世界に進むよう導いてくれたのも天陽くんでした。今回のヒロインでは味わえない不幸や不運、挫折だとかを引き受けてくれた。そういう意味で天使のような存在ですよね」

 亡くなる前夜、徹夜で馬の絵を描き上げた天陽。最後は、自分のジャガイモ畑に足を運び、かぶっていた麦わら帽子を宙に投げ、倒れ込むという、少し幻想的な映像だった。吉田さんは言う。

「ファンタジーでしたねぇ(笑)。顔が美しくて薄幸、薄命が似合う吉沢亮に、現場も何かを課したくなったのかもしれませんね。多くの人の印象に残るシーンになったでしょうし、実際に『天陽くんロス』が起こったわけですから、成功ですよね」

 ドラマも残り3週。

「生き別れの妹のことや、大草原で生きる少女を描く作品の制作など、まだまだ盛り上がる要素はたくさんあります」(田幸さん)

 ずっとロスってる場合では、ない?(本誌・太田サトル)

※週刊朝日  2019年9月20日号