近年、俳優・賀来賢人(30)の活躍がめざましい。2007年に映画「神童」で俳優デビューするも、しばらくは若手イケメン俳優として脇役を務めることが多かった。転機となったのは“コメディ界の奇才”と呼ばれる映画監督・福田雄一との出会いだろう。ムロツヨシや佐藤二朗など売れっ子コメディ俳優を数多く世に送り出してきた福田に22歳のときに見いだされ、コメディ俳優として覚醒し始めたのだ。スポーツ紙の芸能担当記者は次のように語る。



「賀来さんはもともと笑いにどん欲な人。それが福田さんと出会い、いろんなコメディ俳優との共演を経て、頭角を現すようになりました。ムロツヨシさんや佐藤二朗さんをはじめとする福田組は特徴的なセリフや間合いで笑いを取ることで知られてますが、そんな怪優たちに揉まれて、思い切りのいい演技が身についていった」

 最初のブレイクと言われている作品は福田が脚本と監督を務めた「斉木楠雄のΨ難」(2017年)。主演の山崎賢人を食うほどの怪演を見せ、映画も興収10億とスマッシュヒット。以後、業界内で「賀来賢人はコメディができる」というイメージが定着したという。

 本人は過去、インタビューで「20代前半から中盤の、『周囲の邪魔にならないように、失敗しないように』と、芝居にブレーキをかけがちだった僕に対して、『そこまで笑いに真剣に取り組もうとしている若手はいないんだから、もっと笑いを極めれば?』と言ってくださったのも福田さんでした」(『週刊朝日』2019年7月12日号)と明かしている。福田との出会いとこのアドバイスは、まさに彼にとって天からの啓示だったのかもしれない。

 そして2018年、ドラマ「今日から俺は!!」では福田作品で念願の初主演を務め、最終回では視聴率12.6%と好成績を記録。連ドラ終了後には映画化が発表され、今年7月に公開される予定だ。

「80年代後半に『少年サンデー』で連載されていた人気漫画を30年の時を経て連ドラ化したわけですが、賀来さんの代表作といえる作品になりました。彼は当時29歳ながら金髪でボンタン姿のヤンキー高校生を演じ、体重も5〜6キロほど絞って撮影に臨んだそうです。どうしても漫画的な表現が多い作品のため、妙にやりすぎてもサムくなりそうなところを、賀来さんは絶妙な間合いと顔芸で笑いのパートをやりきっていました。また、ケンカのシーンなどではイケメン俳優時代に培った迫真の演技で魅了し、その笑いとマジ演技のコントラストが若者を中心にウケたのでしょう。映画版は興行収入30億円を超えると言われるほど、今年最注目の作品だと言っても過言ではない」(前出のスポーツ紙記者)

■叔母は賀来千香子、妻は榮倉奈々

 だが、コミカルな演技だけが賀来の魅力ではない。現在、深夜ドラマ「死にたい夜にかぎって」(MBS・TBS系)では新境地にも挑んでいる。

「賀来さんは、唾を売って生計を立てる女と暮らす主人公を演じていますが、これまでの作品とはまた違った、どこまでも底辺な男の役を静かに力強く演じています。簡単にいうとダメ男とダメ女の話なのに、賀来さんの眼差しがとても優しくて、見ているだけでせつなくなってくる。風俗に行き、風俗嬢に膝枕をしてもらうシーンも、その雰囲気や目線が非常にリアルというか、ダメ男の空気感をしっかり醸し出しています。思い切りのいい演技が賀来さんの魅力ですが、今回みたいな静かな演技もまた、すごくいい。今まで見たことがない俳優・賀来賢人を堪能できる秀作だと思いますね。コメディ俳優のイメージが強い彼ですが、シリアスな芝居ももっと見たいと思わせるほどの仕上がりでした」(同)

 ドラマウオッチャーの中村裕一氏は、賀来賢人の俳優としての魅力を次のように語る。

「4月スタートの大注目ドラマ『半沢直樹』において、ロスジェネ世代の証券マン役でレギュラー出演することが発表され、堺雅人との共演が今からとても楽しみです。もちろん主役は半沢ですが、彼をサポートしながら、ロスジェネ世代ならではの痛快な『倍返し』をきっと見せてくれるはず。ここでさらに俳優としての“格”が何段階も上がることは確実でしょう。もともとスマートで清潔感にあふれており、コメディでアクの強い役を演じてもまったく泥臭くないので好感度も非常に高い。花王、ソフトバンク、明星食品、日本生命といった大手のCM出演本数の多さもそれを物語っています」

 女優・賀来千香子を叔母に持ち、2016年に結婚した妻である女優・榮倉奈々との間には一児をもうけており、プライベートも充実。「根は真面目だし、スキャンダルとも無縁だと思いますので、30代若手俳優の筆頭格としてまさに死角なし、といったところでしょう」と中村氏は評価する。

 20代の大半はイケメン俳優として脇を務め続けてきたが、30歳にして一気にメジャーシーンへと躍り出た賀来賢人。彼がここから半沢直樹以上の倍返しを見せるのは、もはや既定路線に違いない。(藤原三星)