ユッキーナこと木下優樹菜の芸能界引退で、またクローズアップされた元ヤンキー系女性タレントという存在。先月、夫・渡部建の不倫で注目された佐々木希もそうだし、ゴマキこと後藤真希もこのカテゴリーだ。もっと上の世代には、工藤静香や高島礼子もいる。



 こうした人たちに共通するのは、結婚相手との「絆」の強さだろう。そもそも、絆というもの自体、ヤンキー好みの美学といえるが、その強さは意外なかたちで発揮されたりする。

 たとえば、木下の場合、タピオカ恫喝騒動に加えて、複数男性との不倫もささやかれ、ついに引退。しかし、昨年末に離婚した前夫はこんなコメントを発表した。

「私、藤本敏史は、今後も子供たちを含めて支えてまいります。(略)彼女は、本日を以て、芸能人ではなく一般の方になります。 子供や家族、近隣の方々の日常生活の為にも、報道にご配慮いただけますようお願いいたします」

 実際、今も木下と同じマンションの別の部屋に住み、育児など協力しているという。

 また、佐々木については、ギャルタレントのゆきぽよがテレビで「離婚しない」説を主張。

「やっぱり、佐々木希さんって元ギャルじゃないですか。でも、ギャルってマインドは一生変わんない。ギャルってそんな簡単に人を嫌いになれない、そんな簡単に人を突き放させないから、ゆきは1回は許して、もう1回チャンスあげるんじゃないかなって思うんです」(「サンデージャポン」TBS系)

 佐々木の場合、ギャルの前はヤンキーだったといわれるが、ギャルとヤンキーの属性は近い。昔はヤンキーになっていた人が今はギャルになるようなケースも多いと思われる。それゆえ、この発言は「元ヤンだから簡単には離婚しない」という文脈に置き換えることも可能なのだ。

 それを裏付けるように「文春オンライン」には、佐々木が周囲に「私が彼を立ち直らせる」と語っていることが報じられた。

 そんな元ヤンの「絆」エピソードのなかでも強烈なのが、高島が前夫・高知東生に示した愛情だ。高知は2016年に覚せい剤と大麻を所持していた容疑で逮捕され、同時にクラブホステスとの不倫も発覚した。ラブホテルで一緒に捕まったからだ。

 しかし、高島は会見で涙を流しながら、高知のことを「同志のような、親友のような」と表現。こう続けた。

「彼の不倫よりも、やっぱり絶対手を出してはいけないことに手を出してしまった、彼の思いの方が不思議で不思議でしようがなくて。(略)今は妻としての責任があると思う。彼が深く反省し、マイナスから更生して人生をやり直していくか、見極めたいとも思います」

 その2カ月後、ふたりは離婚したものの、高知はのちにこう振り返っている。

「でも、そんな彼女の姿が、いま僕が生き直そうと思える力になっています」(週刊女性PRIME)

 たしかに、彼にとって高島は特別な存在で、もし出会えていなかったら、人生はもっとひどいものになっていたかもしれない。というのも、彼は今春「女性セブン」で、生い立ちを告白。父がヤクザで、母はその愛人だったこと、その後、母はもっと大物のヤクザの愛人になったが、彼が高3のときに自殺したことを語った。そんな過去を持つやんちゃな男を、高島は公私にわたってサポートしてきたわけだ。格下といわれた相手を、一時はそこそこの芸能人にまで引き上げたのである。

 この、愛した男を引き上げたいという欲求は、元ヤン系の女性に多く見られる特徴で、三原じゅん子もそうだった。二度目の夫・コアラを自分の事務所に移籍させ、バラエティー番組やダイエット広告などで積極的に共演。結局、コアラの浮気から離婚へと至ったが、当時はマジで夫をスターにするつもりだったのだろう。なお、元ヤン的には「本気」とか「真剣」と書いて「マジ」と読ませるのが正しい表記かもしれない。

 木下の場合も、年上の藤本を「ブサイク」呼ばわりしながら、服をコーディネートしてオシャレに変身させた写真をインスタグラムにあげるなどしていた。自分の力で「イケてる男」に引き上げたいという欲求が働いていたのではないか。藤本が今、木下をサポートしようとしているのも、一種の恩返しというか、そういうツンデレ的な尽くされ方(?)が意外と心地よかったのだろう。

 というように、元ヤン系の女性には、やんちゃな男やクズ男たちをおだてたりけなしたりしながら、矯正させ更生させ、さらには出世させステップアップさせていくことに生きがいを見いだす、というスタンスが感じられる。一種の母性愛、いや「姐さん」愛だろうか。

 そういえば、1980年代にツッパリ映画絡みでヒットした中山美穂の「BE−BOP−HIGHSCHOOL」には、不良たちを「大きなBaby」と呼ぶ歌詞があるし、同じく「JINGI・愛してもらいます」には自らを「お姉さん」として「コラ少年」と上から諭す歌詞が出てくる。

 お母さん的、あるいは姐さん(お姉さん)的というのが、元ヤン気質なのだろう。また、任侠道の仁義とは、これぞと見込んだ人にどこまでもついていくもの。この一途さに母性や姐さん性が結びつくところに、彼女たちの独特の愛し方があるのだと考えられる。

 ただし、一途さについてはいささか疑問も感じなくはない。元ヤン系の女性たちはちょくちょく不倫もするし、また、されたりもするからだ。なんとなく、自分の不倫にも、パートナーのそれにも甘い印象である。

 これはおそらく、彼女たちの世界において、モテることは悪いことじゃない、という共通認識が存在するからだろう。そのうえで、遊んでもいい、最後は自分のところに戻ってくるならとか、自分だって本当に愛しているのはあなただけ、みたいな感覚を優先しているように思われる。

 もっといえば、すべてのつながりを「絆」ととらえているのではないか。それが伝わってくるのが、後藤真希が結婚したときのエピソードだ。

 自身の著書『今の私は』によると、彼女はデビュー当時から、ファンとすぐに仲良くなるタイプで、26歳から約2年半の休養期間には、オンラインゲームを一緒にやったり、リアルで集まってしゃべったり、バーベキューを楽しんだりしていたという。著書には「私の大事な遊び相手であり、仲間だ」として、こんな話が書かれている。

「それだけに、結婚に対してどんな反応をするのか、楽しみなようで心配でもあった。結婚直後、ファンと集まるバーベキューに夫を誘った。そこでみんなに紹介しようと考えたのだ」

 一般人で3歳下の夫は「刺されたりしたら、どうしよう」と言っていたそうだが、結果は上々。

「いざとなったらケンカも辞さないと意気込んでいた人でさえ、初めこそ警戒していたが、実際夫に会うと、すぐに仲良くなってしまった」

 という。彼女の夫もやんちゃ系で、彼女のファンにもそういう人が多かったから、波長が合ったのだろう。そして思うに、夫を紹介したのは、これまで自分を支えてきてくれたファンの男たちへの「仁義」を通すことでもあった。

 16歳で母やきょうだいと住める家を建てたことでも知られるゴマキは、家族が大好き。ファンともそれに近い関係なのだ。

 そういう家族的なものへのこだわりこそ、元ヤンの本質であり、それは任侠の世界とも通じる。そこでは「一家」とか「親分子分」「姐さん」といった言葉が使われ、疑似家族としてのシステムや機能が成立しているからだ。

 木下については、そのこだわりがあの「出方次第でこっちも事務所総出でやりますね」というやらかし発言にもつながったわけだが――。そんな彼女が十数年にわたって人気者であり続けたのも事実だ。また、工藤静香などは新たなセレブファミリーを築き上げ、芸能界のハイクラスに君臨している。

 今の日本は個人主義志向が高まってきたとはいえ、まだまだ伝統的な家族主義への支持も根強い。そのあたりを体現するのが、元ヤン系女性タレントの健在ぶりである。

●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など