木村拓哉さんが声優を務める「映画ドラえもん のび太の新恐竜」がいよいよ8月7日に公開する。コロナ禍で公開が延期され、待ち望んでいた子どもたちも多いだろう。木村さんに声優を務めた思いを聞いた「ジュニアエラ」4月号のインタビューをお届けする。



*  *  *
――ジルの声を務めると決まったときはどう思いました?

 最初、“ドッキリ”かと思って、すごく疑いました。毎週「ドラえもん」を放送しているテレビ朝日も、ついにそういう番組を始めるんだなって(笑い)。ドラえもんは、子どものころから当たり前に接してきた世代だから、その世界観の中に俺が入っていいの? 信じられない、みたいな感覚はずっとありますね。

――ジルを演じるにあたって気をつけたことは?

 監督から「初めてジルを見た人が、絶対に悪い人だと感じるように、もっと悪い印象を与えてください」という指示をいただいたりはしました。でも、ジルは白亜紀の恐竜に対してすごく愛のあるキャラクターなので、やってて非常に楽しかったです。僕も幼稚園のころは、頭の中に入るだけの恐竜を覚えたので、ちょっとだけ自分と重なる部分もありました。

――木村さんの一番好きな恐竜は?

 ええ〜! 1番を決めるのは厳しいなぁ。T・レックスって言いたいけど、プテラノドンははずせないし、草食性で最大級のブラキオ(サウルス)とか、トリケラ(トプス)も捨てがたい。けど、ステゴ(サウルス)ではないかな……。まぁでも、滑空できるのは相当だと思うのでプテラノドンかな。

――そもそも「ドラえもん」との出会いは?

 最初はアニメでした。頼りないのび太は僕らの代弁者で……。のび太がダメダメだから、僕らは最初、ちょっと上から目線で「まったくコイツはしょうがないなぁ」って見てしまう。でも、ドラえもんがひみつ道具を出してくれることによって状況が変わり、だんだん下に見ていたのび太は「いいな〜」と見上げる存在になっていく。みんな、きっとそういう見方をしてきたと思うんです。けど、50年間ダメダメを続けるってすごいことですよ(笑い)。今回、改めて藤子・F・不二雄さんがつくった世界観の奥深さを感じました。

 たとえば、ドラえもんのひみつ道具に「糸なし糸電話」ってあるんです。それって今でいう携帯電話でしょ? 2020年の今だから当たり前のように見えちゃうけど、僕らが子どもだったころは、誰もが「こんな道具があったらいいな〜」って思ったような道具。そういう「もしも」の道具を、どこかの誰かが「“もしも”じゃなくさせてやる」とふんばって具現化させた道具って結構あるんじゃないかなぁ。それと、ドラえもん自体、その形や色で安心させてくれてるけど、中身はすごい。のび太を助けるロボットのはずなのに、のび太の頼みを拒否することもある“気分”を持っていたりする。だから、いろいろひっくるめて、非常にパンクな作品だと思いますね。

――「のび太の新恐竜」では「あきらめない心」も大きなテーマ。木村さんが小学生時代、あきらめずに頑張ったことはありますか?

 周りの友達は野球チームやサッカーチームに入ってたり、スイミングスクールに通ってたりしたんです。そういうやつらは体育の時間、僕らに「ウソだろ!?」という違いを見せつけてくるんですよ。プールの時間、水を得た魚のように泳いだり、50m走では恐ろしいスピードで走ったり。そういったなかで、自分が属してたのは剣道だった(笑い)。剣道って現実にまったく生きないんですよ。しかも俺、50mすら泳げなくて、そういう自分がすごく悔しくて。それで、地域でやっている大人用のプールに通って、ひたすら練習して泳げるようになりました。50m往復できるようになったときはなんか……うん、達成感はありました。でも、尋常じゃないほどの水が鼻腔の中に入ってました(笑い)。

――木村さんみたいに「あきらめない心」ってどうやったら持てるんでしょう?

 俺の場合は多分、剣道かな。だから、今思い返すと剣道の経験も生きてましたね。剣道はその場で勝ち負けがハッキリ決まる。俺もそういうところが好きだったし、「勝つのと負けるのとではどっちがいい?」という、先生方からの指導もありました。剣道の先生たちは普段は警察官で、すげぇ厳しかった。

――のび太は、なんだかんだでいい仲間に恵まれています。仲間ってどうやったらつくれると思います?

 相手を感じることが一番だと思う。自分がこうしたいっていう思いもあっていい
と思うけど、まずはしっかりと相手の気持ちになって、相手の立場や思いを感じること。スマホの画面じゃなくて、相手の目をしっかり見てね。そういうやりとりができたら、その時点でもう仲間になれてるんじゃないかな。

 一番近くて、嘘のない愛がある仲間は家族だと思うんです。ドラえもんは年齢や性別を問わず共有できる存在。ぜひ親子で一緒に見てほしいですね。もし「どうせ『ドラえもん』でしょ?」とか思ってる大人がいたとしても、多分、みんな子どもと同じタイミングでジーンとすると思う(笑い)。ひょっとしたら人生経験が豊富な分、感受性が上がってるから、大人のほうがリアクションが大きいかもしれないですね。

――この映画を見れば「相手を思いやる気持ち」が学べますか?

 うん。そうですね……映画版のび太も相変わらずのび太なんだよ(笑い)。アニメでも映画でも漫画でも、どこでものび太はのび太のわがままを、エゴを貫き通す。でも、それがときに美しく見えたりするわけです。映画版はカット割りとか、カメラワークも違うから、メッセージの伝わり方も違うと思う。走り出すのび太のカットも、映画だと後ろからグワッと近寄って、のび太の顔をフォローして並走したりする。「あ、きたこのカット!」っていう、“待ってましたカット”がすげぇあるんですよ! だから……うん? なんで俺はこんなに熱く語ってるんだろう(笑い)。みんなも映画館でこの思いを感じてほしいですね。

プロフィル きむら・たくや
1972年、東京都生まれ。2019年は映画「マスカレード・ホテル」やドラマ「グランメゾン東京」で主演。20年1月8日にはソロアルバム「Go with the Flow」を発売。

「映画ドラえもん のび太の新恐竜」 全国東宝系にて8月7日(金)公開
のび太が恐竜博の化石発掘体験で見つけたひとつの化石。ドラえもんのひみつ道具で化石を元に戻すと、生まれたのは双子の恐竜だった。2匹を仲間のもとに戻すため、のび太たちは6600万年前の白亜紀に出発! 新たな冒険が始まる!

(ライター・大道絵里子)

※月刊ジュニアエラ 2020年4月号より