アイドルグループKing&Princeの永瀬廉が、人気漫画を原作とする映画「弱虫ペダル」に主演する。撮影は、新型コロナウイルスの影響による中断期間もあったが、「リアルな部活」のようで青春そのものだった。AERA 2020年8月10日−17日合併号から。


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 映画「弱虫ぺダル」はアニメを愛しママチャリで秋葉原へ通う少年、小野田坂道が、初めてできた仲間とともに自転車競技部でインターハイ出場を目指す青春物語だ。累計2500万部突破の同名の大人気漫画が原作だ。多くのファンを持つ作品の主人公を演じることには、プレッシャーもあった。

永瀬廉(以下、永瀬):作品自体は知っていましたが、読んだことはありませんでした。でも、このお話をいただいて原作漫画を読み始めたら一気にハマりました。ロードレースを知らない人にもわかりやすく説明されていて、キャラクター一人一人の個性も強いから、すごく面白かったんです。なにより「チームで頑張って敵に打ち勝つ」みたいな、王道の少年漫画にハマりました。僕、昔から、熱い漫画が大好きなんです。すっかりファンになりましたね。そしてなおさら、小野田坂道を演じるプレッシャーが増えました。

 眉毛の上でパツンと切られた前髪と丸メガネが小野田のトレードマークだ。少しでも小野田に近づくため、永瀬も「ジャニーズに入って、初めてくらい」前髪を短く切った。

永瀬:自分ではわからないのですが、「意外と似てるね」と言ってもらえることも多くて、すごくうれしいです。その姿に慣れるまでは、家で髪を乾かしていても、パッと鏡を見ると「……初めまして」みたいな気持ちになってましたけれど(笑)。

 原作の設定は大切にしつつ、三木(康一郎)監督から言われたのは、「原作はあまり意識しないでほしい」ということです。作品を読み込んで、小野田坂道という人物を噛み砕いた上で「『坂道ならこうする』というのを考えながら演じてほしい」と。だから、お芝居してるときは、感情を乗せつつ、どこか俯瞰する自分がいました。このセリフでスイッチが入るから表情が変わっていく、ということは常に考えて演じていました。

 特に意識したのは、小野田の成長していく姿をしっかり演じるということだ。

永瀬:小野田は内気ではありますが、仲間のためには惜しみなく努力して頑張ることができる人。自分のためではなく人のために頑張れるのは、尊敬できるし、強いですよね。もともと持っていた強さが、自転車との出合いによってようやく引き出されたんだと思います。楽しさを知って、人との出会いがあって、取り巻く環境も変わってきて……最初の方の小野田と、県大会に出場している小野田の違いは、ぜひ見てほしいと思います。

 クライマーやスプリンター、さまざまなタイプの選手がいて、勝つためにエースのゴールをアシストする。そんな小野田たち自転車競技部の“チーム感”も見どころだ。自転車走行シーンは、CGを一切使わず、すべてキャストが実際に走った。仲間である同級生・今泉俊輔(伊藤健太郎)や部長の金城真護(竜星涼)など、“チーム総北”全員で特訓して撮影に挑んだ。

永瀬:撮影前から、チーム総北全員で河川敷を走って練習しました。大会で見るような、縦一列の集団で走る練習もして。練習を始めたころ、僕、帝国劇場で舞台中だったんです。本番がある日は劇場に自転車を持ち込んで乗って、休演日にはみんなで練習して。ずっと走っていましたね。体力的には疲れましたが、楽しさが勝っていました。ロードバイクは、普通の自転車とは全然スピードが違うんです。ひと漕ぎで進む速さが楽しかったし、なにより自転車を通して共演者のみなさんとの仲が深まりました。部活みたいな感じで、クランクインする前からチーム感ができあがっていました。インしてからも映画の設定のままみたいな関係性が続いて、みんなでご飯を食べに行ってワイワイしたり、本当に「青春!」みたいなことができました。普段、そういう距離の詰め方はあまりできませんよね。チームスポーツに挑戦するからこそできたことだと思います。

 大勢のエキストラが参加した本物さながらの県大会のシーンでは、今まで感じたことのない緊張感も味わった。

永瀬:たくさんお客さんが入っているのを見て、本当に大会に出場している気分になりました。周りの緊張感が伝わってきて、場の雰囲気にのみ込まれそうにもなりました。だから、そこは原作の小野田とまったく同じ気持ちだったと思います。

 自転車を本気で漕ぎながら演じるシーンに関しては、演技でない部分も多いと思います。本当に体力の限界ギリギリまで出し切って走っていたので、体力も消耗して「はぁはぁはぁはぁ」という息遣いは、もうリアルです。その迫力は映像越しにも伝わると思います。

 撮影を通して実感したのは、「チーム」で挑む楽しさだ。永瀬が所属するKing&Princeも仲の良さには定評があるが、改めて感じたこともある。

永瀬:撮影中、精神的にも体力的にもつらい部分があったのですが、メンバーには助けられました。基本、僕たちはみんなやることがおバカなので、それを見て笑っていると元気になるんです。ロードレースみたいにしっかりした役割分担があるわけではないけど、長い付き合いなので「あ、今○○疲れているな」みたいなのは、お互いわかりますから。やはりグループでよかったなと思いましたね。でも、それを感じられるようなグループでのお仕事や、メンバー同士が距離感なく一緒にいられることは、実は当たり前ではないんだと感じました。新型コロナでの自粛期間中には、日常の尊さも考えたりしました。

 本作もクランクイン後に緊急事態宣言が発令され、撮影が中断した。6月に再開したが、「公開に間に合うのかドキドキしていた」と振り返る。

永瀬:映像を観たときは、もう達成感しかなかったです。撮影をしているときはすごく大変でも、こうして終わってみると、経験できてよかったなあと、毎回思います。だから、また新しいチャレンジがしたい。ここ数年は舞台「JOHNNY S’IsLAND」でも毎年チャレンジをしているので、挑戦しないと駄目な体になっているのかもしれません。でも、虫を食べるのは苦手です。昔、Princeが深夜番組で食べているのを見て、「はあ〜、俺、絶対に無理」と思いました。バンジージャンプとかは怖いけれどやってみたいという好奇心が勝つんですが、虫が胃に入るのは受け付けないです(笑)。

 新型コロナが終息したら、したいことを聞かれると即答した。

永瀬:やはりライブですね。ファンのみなさんと一緒に、たまっていたものを発散したいです。特別な言葉をかけるのではなく、僕はいつもどおりにいきます。

(ライター・大道絵里子)

※AERA 2020年8月10日−17日合併号