<私がもっと大人だったら、何でもうまくこなせたかも知れない。なじめない自分に対する嫌悪と、理由のよく分からない疎外感をいつも抱いていた>



 この文章は18歳の竹内結子さんが1999年に発売された桜井亜美さんの小説『サーフ・スプラッシュ』(幻冬舎文庫)の解説文として寄せたもの。小説の主人公の女子高生も葛藤を抱えた末、最後は自殺してしまう。

 寄稿は前年、竹内さんが桜井さんの小説を原作とした映画「イノセントワールド」に主演したことが縁で実現した。桜井さんが当時を振り返る。

「原作は主人公の女子高生が複雑な家庭事情から家出をする仄暗い物語でしたが、結子ちゃんは主人公にすごくシンクロしてくれた。解説では正直に自分のつらい過去を書いてくれて、作家やエッセイスト以上の表現力と感じました。あの時、私が文章を書くことを勧めていれば、結子ちゃんの心が少し軽くなったかもしれない。そうしなかったことを後悔しています」

 多くの人に衝撃を与えた竹内さんの訃報。再婚、出産を経て幸せな家庭を築く矢先の悲劇はなぜ起きたのか。内情に詳しい関係者はこう証言する。

「女優は40歳前後になると主役を張れなくなる。竹内さんも昨年の主演ドラマの視聴率が低迷した後は地上波のドラマに出ていない。普通は事務所が説得し、番組後のキャスト紹介で最後近くに名前が出る『中止め』や『止め』の役に移行しますが、彼女の場合、うまくいっていたのかどうか」

 この関係者はこんな情報を耳にしていたという。

「竹内さんの契約が、給料制から出来高制に変わったと聞いた。単価の高いCM出演なら1本で1千万〜数千万円稼げるが、それがないと実入りが減る。年内はドラマや映画の仕事が決まっておらず焦りもあったのか、竹内さんの様子がおかしかったという話が出ている」

 コロナ禍で業界全体が苦境なのは間違いない。9月14日に急逝した芦名星さんも、4月から給料が出来高制に変えられていたと報じられた。竹内さんの東京・渋谷の自宅マンションは、周囲の不動産屋によると家賃100万円以上の高額物件。今後、ドラマやCMの出演が減れば生活に影響するという不安もあったのか。

 直近の竹内さんのCM契約は2社のみ。9月1日にそのうちの一社、サンヨー食品「サッポロ一番」のイベントに登壇すると、新たにCMキャラクターとなったタレント2人を前に、「お2人ともとても素敵な方で。私のこの座が奪われるのでは、と、戦々恐々としております」と発言。冗談とはいえ内心の不安が表れていたとも考えられる。

 もう一つ、無視できないのが産後うつだ。竹内さんは9月発売の雑誌のインタビューで、子育てについてこう語っていた。

<わかっていたつもりでしたが、眠れないし、もらった風邪はなおらないし……。赤ちゃんのお世話は本当に大変ですね>(「LEE」10月号)

 育休後の仕事への不安も明かしていた。

<実は2度の出産で仕事を離れることには不安がありました。特に長男のときは、私の代わりはいくらでもいると思っていて、怖くてたまらなかった>(同)

 前出の関係者が語る。

「前回の出産は25歳で無理も利いたが、今は体力的にきつい。以前のように子育てしながら仕事をこなせるか不安になり、悩んでうつ状態になっていたと聞いた」

 竹内さんの所属事務所に出来高制や仕事環境の変化などについて取材を申し込んだが、期限までに返答は得られなかった。

 お酒が影響した可能性もある。竹内さんは一昨年のテレビ番組で「台所飲みが好き」と語っていた。心理学者の藤井靖・明星大准教授が語る。

「一般的に、自殺の直前にお酒を飲んでいた方は多い。お酒が最後の一線を越える後押しをしてしまう場合があるのです」

 今となっては真相はわからない。竹内さんの40年の人生を振り返ると、複雑に絡み合った運命の糸が見えてくる。

 高校入学直前に東京・原宿でスカウトされ、芸能界入りした竹内さん。さいたま市内にあるかつての実家周辺を取材すると、こんな声が聞こえてきた。

「明るくていい女の子でした。お母さんが手話のボランティアをしていましたね」(かつての実家と同じマンションの住人)

 三姉妹の末っ子で小学生時代はおてんばな性格だったという。中学2年生の時、母が40歳の若さで病没。翌年には父が別の女性と再婚し、継母と共に暮らした。その翌年には芸能界入り。当時の竹内さんを知るテレビ局スタッフは「デビュー2年目くらいにドラマの撮影で会いましたが、舞台裏では暗い感じでしゃべらず、『大丈夫かな』と心配になったぐらいでした」と語る。

 冒頭の『サーフ・スプラッシュ』の解説文では、家庭への複雑な思いを次のように綴っている。

<帰る家は暖かい家庭そのものに見えたが、カギのかかった空間がいくつもあるような場所だった。足早に台所を通り過ぎる時、一人の人間として父が必要とした女の人が、彼女の子供たちのために食事の支度をしている。晩の食卓の賑やかな景色が、私にはガラス越しのものに見えた>

<私は父に人生を好きに生きてくれたらいいと思っていた。連れ子という荷物がいることを面倒に感じられたくなかった>

 こうした生い立ちが自殺に影響したとの報道も少なくないが、竹内さんの親族の一人は本誌の取材にこう語った。

「複雑な家庭環境といってもそんなに大げさなものではないし、全然苦しんでなんかいない。本当の原因なんて、誰にもわかるわけがありません」

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(本誌・上田耕司、岩下明日香/今西憲之)

※週刊朝日  2020年10月16日号より抜粋