歌謡曲・J−POP界から大きな光がひとつ消えた。作曲家の筒美京平さんが、10月7日に誤えん性肺炎のため80歳で亡くなった。本人は目立つことはしなかったが、世に出した曲はだれもが知っていた。



 いしだあゆみ「ブルー・ライト・ヨコハマ」、尾崎紀世彦「また逢う日まで」、南沙織「17才」、ジュディ・オング「魅せられて」、近藤真彦「ギンギラギンにさりげなく」、少年隊「仮面舞踏会」、松本伊代「センチメンタル・ジャーニー」、小泉今日子「なんてったってアイドル」、TOKIO「AMBITIOUS JAPAN!」、そして「サザエさん」主題歌……。

 手掛けた作品は約3千曲、シングル総売上枚数約7600万枚、オリコン1位獲得39曲。名曲・ヒット曲の数々は、今の10代にも聞きつがれている。筒美さんの作品を知らないという人は、おそらくいないだろう。

 音楽評論家の山崎智之さんは、こう語る。

「1960年代から2010年代までの六つのディケイド(10年)でヒットを出していて、過去の曲も現在で親しまれる、タイムレスな作曲家でした。洋楽にインスピレーションを受け、それを柔軟に取り入れて日本のリスナーの耳に合わせて膨らませ、新しい曲を次々に作りだしていきました」

 1972年に歌手デビューした小林麻美さんは、

「いつも『小林クン、小林クン』と優しくお声をかけてくださって。本当に穏やかな方でした」

 と振り返る。デビュー曲「初恋のメロディー」をはじめ、代表曲の数々を筒美さんが作曲した。

 レッスンのときにはいつもピアノを弾いて、「こういう曲ですよ」と教えてくれたという。

「京平先生は、常に洋楽を意識し、音楽の勉強をされていた印象があります。洗練された雰囲気は、東京っ子だなぁという感じもありました(笑)。先生の曲は難しいけれど、歌いやすい。歌っているだけで自然と楽しくなってくる曲が多い印象があります」

 その後、偶然出会っても、昔と変わらない接し方だったという。

「3、4年前にもやはり食事の場でばったり会いました。そのときにも『小林クン、元気にしてる?』と同じように。それがお会いした最後になります」

 前出の山崎さんは、

「これからの日本の音楽は、“筒美京平のいない時代”を進まねばならなくなります」と語った。

 それでも、筒美さんが生み出したたくさんのメロディーは、この先も色あせることなく歌い、聞き継がれていくだろう。
(本誌・太田サトル)

*週刊朝日10月30日号に掲載