放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、話題の映画「鬼滅の刃」について。



*  *  *
 デートと言えば「映画」と言う人、多いですよね。僕は結婚して18年ですが、妻と交際期間が0日だったため、結婚してからデート的なことをするようになりました。僕は映画を見に行くのが好きなため、結婚当初、時間があると映画行くときには妻を誘っていました。

 だけど、妻は映画を見に行くのがすごく好きなタイプではありません。ある時、妻に言われました。「私が映画を見に行くのが好きなわけじゃない。だから、映画を見に行くのに、毎回誘うのはやめてほしい。本当に2人で見たい映画だけ誘ってほしい」と。それを言われて、ハっとしました。一人で行くよりも2人で行く方がいいだろ!って思いこんでいたのです。自分は映画を見に行くのが好きだけど、「好きじゃない人」もいるんだという当たり前のことに気づかされました。

 そこから、見たい映画があった時に、「1人で見に行くもの」と「2人で見に行くもの」を仕分けるようになりました。

 マイケルジャクソンの「This is it」なんかは2人で見に行き、帰り道、2人そろってムーンウォークな気持ちで歩いたりして。

 そして子供を授かり、今度は「1人で見に行くもの」と「3人で見に行くもの」と「息子と2人で見に行くもの」を選ぶようになりました。

 息子が3歳くらいになったときに、2人で「ジュラシックワールド」を見に行ってから、息子と2人で行くのが選択肢の一つになったのです。「3人で見に行くもの」が一番難しく、ディズニーものとかは外すことはなのですが、妻は基本、映画に前のめりではないので、3人で見に行き、めちゃくちゃテンションが上がったものって実はまだなかった。

 そんな中で、「鬼滅の刃」です。僕は漫画もアニメも見ていたので、映画を心待ちにしていました。息子もこの半年で急に好きになりました。5歳ですが、親戚の家に行き、そこで好きになったようです。すべてを理解してるわけではありませんが、自分でNetflixをつけて見ています。だから映画も楽しみにしていました。妻はまったく見ていません。「見たらハマリそう」とは言ってましたが、見ていない。本当なら、息子と2人で見に行こうと思っていたのですが、なんとなく、「これは家族3人で見た方がいいかもしれない」と思い、妻を誘い家族3人で見にいきました。

 電車の時刻表のようなスケジュールで上映している「鬼滅」の映画ですが、夜の会、六本木、かなり入っていました。

 そして映画が始まる。今まで漫画→アニメからの映画って、大体、スピンオフのようなオリジナルストーリーのものが多いです。この「鬼滅の刃」の場合は、連続アニメの続きが映画になっているわけです。これってありそうで意外とない。しかも原作でかなり勢いが出て来て、この「無限列車編」からハマった人も多いはずで、そこを映画にとっておくという大胆な作戦。原作を知ってる人からしたら超おいしい部位なわけです。

 案の定、めちゃくちゃおもしろかったです。泣きました。上映中、周りから何回もすすり泣く声。大人の泣く声、子供の泣く声。

 妻は原作も読んだことない中、「どうなんだろう?」とちょっと心配。

 が、上映が終わると・・・。なんと原作も読んだことない妻が「3回も泣いたよ」と。

 それを聞き「よし!!」と思いました。原作を読んだことなくても、3回も泣かせるそのストーリー。

 最大公約数を喜ばすことってすごく難しいです。なかなか出来ない。最近で言うと「半沢直樹」がそれになると思うんですけど。だけど、この「鬼滅」は最大公約数を満足させるどころか熱狂させる。

 息子も途中、目がウルウルしてたと言ってたので「最後、泣いてただろ〜」と言ったら息子は「泣いてないよ〜」と強がる。こんなコミュニケーションが取れてしまう。

 5歳と40歳と48歳の家族。作品との距離感はそれぞれ違う。なのに、全員の呼吸を通じさせて、全集中させてしまう「鬼滅」の映画の力。

 コロナ禍で、夏にはお祭りもなく、ハロウィーンすら楽しめない空気の中、日本人を全集中させてしまうこの映画。コロナ禍の中でみんなが安全に楽しめるお祭りである。

■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。10/31スタートのテレビ朝日系ドラマ「先生を消す方程式。」の脚本を担当。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中