29日に道交法違反(ひき逃げ)などの疑いで俳優の伊藤健太郎容疑者(23)が逮捕された衝撃が収まらない。映画やドラマ、CMに引っ張りだこの若手人気俳優だっただけに、その影響は計り知れない。



 伊藤容疑者が出演している映画『とんかつDJアゲ太郎』は、30日から予定通り公開されることになったが、初日の舞台あいさつは欠席が決まった。11月6日公開の主演映画「十二単衣(ひとえ)を着た悪魔」は公開について対応を協議している模様だ。12月から始まる予定だった主演舞台「両国花錦闘士(りょうごくおしゃれりきし)」も降板する可能性がある。

 また、伊藤容疑者は「アウト×デラックス」などフジテレビ系3番組に出演予定だったが、いずれも出演部分は削除されて放送される見通し。NHKは、12月に放送予定だったドラマの出演を取りやめ、NHKオンデマンドでの「スカーレット」「アシガール」の配信を停止した。

 さらにCM出演していた「マルハニチロ」は公式サイトから伊藤容疑者の動画を削除。今後はCM放映も見合わせる方向だとされる。「ジョンソン・エンド・ジョンソン」や「三井住友銀行」もCM動画を削除している。

 こうした一連の対応によって伊藤容疑者サイドが負う損害賠償は「5億円以上」とも報じられており、逮捕の代償はあまりにも大きい。あるベテラン芸能記者はこう語る。

「伊藤の育ての親と言われる女性マネジャーと昨年夏にたもとを分かってから、素行の悪さを耳にするようになった。現場に遅刻してきたり、明らかに二日酔いで酒臭かったりするといわれ、業界内での評判は悪くなっていた。事務所屈指のドル箱俳優ということで周りに注意できる人間がいなかったのだろう。気分の波も激しく、機嫌が悪い時はスタッフのあいさつを無視したり、にらみつけたりすることもあったようだ。逆に機嫌が良い時はノリノリでジョークを飛ばしたり、ハイテンションで現場を盛り上げたりすることもあったようだけど、扱いづらい俳優という印象は強まっていた」

 伊藤容疑者の逮捕で特に大きな影響を受けそうなのは、映画『とんかつDJアゲ太郎』だろう。同映画は出演者の1人である伊勢谷友介(44)が、9月に大麻取締法違反の容疑で逮捕されたが、再編集などはせずに予定通り公開すると発表していた。だが、10月には同じく出演者のブラザー・トム(64)が「モラハラ不倫」を写真週刊誌で報じられて“追い打ち”をかけられた。そんな状況のなか、公開前日になって伊藤容疑者の逮捕が報じられたのだから、まさに「弱り目にたたり目」と言うほかない。

 そんな“いわくつき”の映画の公開初日はどのような様子なのか。30日午前、東京・日比谷の映画館の初回上映に足を運んだ。

 TOHOシネマズ日比谷には、朝にもかかわらず、ロビーには長蛇の列が。少なくとも50人以上が並んでいる。お目当ては公開初日の『とんかつDJ』と思いきや、12月11日に公開する故・三浦春馬さん主演の『天外者』の前売りチケットを買い求める客たちだった。グッズ売り場は、鬼滅グッズを手に取る客でにぎわっている。

 そんな中、『とんかつDJ』の上映スクリーン(午前8時55分の上映回)は、人がまばらで、客はわずか9人だった。

 物語は、実家のとんかつ店を手伝うアゲ太郎(北村匠海)が、配達先のクラブで偶然目にしたDJオイリー(伊勢谷友介)のDJさばきに魅了され、クラブDJを目指していくというストーリー。伊勢谷演じるDJオイリーにアゲ太郎が弟子入りする展開なので、序盤は伊勢谷の出演シーンが目立つ。対して、伊藤容疑者が演じる屋敷蔵人が登場するのは、映画開始から約30分後。屋敷はライバルDJという位置付けだが、2回目の登場シーンは初登場シーンのさらに30分後と決して多くはない。

 印象的だったのは、オイリー(伊勢谷)が、DJの師としてアゲ太郎に言い放ったセリフだ。

「フロアを甘く考えるな。油断・緊張・不運、何が起こるか分からない」

 現実でも、本当に何が起こるか分からない。公開前日に主要キャストが逮捕されるという事態は、関係者にとっては「不運」以外の何物でもない。

 上映後、この回を鑑賞していた60代の男性に話を聞いた。

「おもしろかった。上映されて良かったと思う。作品と事件は別だからね。ただ、伊勢谷君も伊藤君もいい演技をして才能があるのに、もったいない。(伊藤容疑者は)ひき逃げ容疑ではあるが、今後どうなってしまうのだろう」と、作品への賛辞と俳優への心配の念を口にしていた。

 映画配給会社のスタッフは、伊藤容疑者の逮捕について厳しい口調でこう語る。

「あれだけの売れっ子にもかかわらず、短期間で所属事務所を変わっていることや、山本舞香とのオープン過ぎる交際を見ていて、周囲の制御がきかないタイプなんだなと思っていた。フジテレビのドラマ『SUITS/スーツ2』でひき逃げ犯の役を演じていてその怖さを知っていただろうに、本当に愚かとしか言いようがない」

 警察の取り調べに対して、「気が動転してパニックになった」と供述しているとされる伊藤容疑者。一瞬の判断の過ちが、すべての信用と仕事を失いかねない事態を招いてしまった。(AERAdot.編集部・作田裕史、飯塚大和)