1990年のソロデビューからいつの間にか30年が過ぎた。ダイアモンド☆ユカイさんはコロナ禍で迎えた節目の年に、思い切った断捨離をしたという。最後に残った本当に大切なものは、たった二つしかなかった。

【前編/ダイアモンド☆ユカイが語る暗黒時代「“安定への呪い”から解放」】より続く



 メジャーデビューから34年。様々な葛藤はあったけれど、「音楽も芸能も含めて、好きなことやってきた」という自負はある。ただ今年は、ユカイさん言うところの「コロナ事変」によって、これまでとは違う壁にぶち当たることに。

「30周年で計画していたことが、いろいろ吹っ飛んだり、延び延びになったりして、4〜5月ごろはちょっと追い詰められました。子供たち3人と妻と、四六時中顔を突き合わせていると、いろんな問題が起きてくる(笑)。コロナになる前は、結構忙しくしてたので。生活の急変に対応できずに、世間でいうところの“コロナ離婚”なんていうことも、ちょっと脳裏をかすめたり(笑)。今でこそ冗談にできますけど、本当なんです」

 ただ、その追い詰められた時間が、結果的に、自分自身やファミリーを見つめ直すきっかけになったらしい。

「エンターテインメントって、あんまり安定みたいなことを求めずに、どんどん突き進んでいく中で生まれていくものじゃないですか。“転がる石”じゃなくて俺の場合は、ゴミも一緒に巻き込んで大きくなっちゃう雪玉みたいなものかな、と思ってるんだけど(笑)。ずっと、転がっていくことばかり考えていた自分が、この期間ね、断捨離をしたんですよ。そしたら、楽器も含めて、結構いらないものに囲まれてたな、って気づいた。ただ、そのものたちとの出会いそのものは、1ミリも無駄じゃなかったけどね」

 断捨離をして残ったものは大きく二つ。音楽をもっとちゃんとやっていこうという思い。そして、人生で一番大切な、かけがえのないものは、やっぱりファミリーなんだなということ。

 とはいえ、コロナ禍でも徐々にではあるけれど準備を進めたものがある。ソロとしてリリースしたアルバム3部作に、たくさんのコンサート映像もDVD化し、当時のツアーパンフレットなども復刻させ一つの箱に収集した豪華な「YUKAI BOX」が、この秋リリースされた。

「コロナになって発売が危うくなって、結局、延期になった。そうなると、『じゃあ、これも入れようよ!』ってものが増えていって、雪だるま状態になっちゃった」

“愉快なおもちゃ箱”にしようということで、ボックスの至るところに、ユカイさんの子供たちが描いた絵が用いられている。ボックスを手に、「ユカイファミリーの初コラボです」と満面の笑み。ちょっと親バカな一面を覗かせる。

「俺は無精子症だったんですが、無精子症でも、体外受精をすれば子供ができるとわかってから、不妊治療をして、幸運にも3人の子供を授かりました。そこから、自分の作る歌は大きく変わった。それまでは、“ぶち壊せ”がテーマだったのが、その反対になったというのかな。“エロス”、つまり性愛を表現していたのが、同じ愛でも、“アガペー”という慈愛に変わっていった。単純に、大人になったってことなのかもしれないですけどね。昔は、何事にも無責任だったのが、子供を授かって、自分にも責任感があるんだな、って知ったり」

 もう一つ悟ったのが親心。

「両親はもう2人とも天国にいっちゃいましたけど、子供と触れ合いながら、『ああ、こういう思いで育ててくれたんだな』なんて思う。ただ、自分が親と違うところは、子供たちには、将来何になるかは自分で決めてほしい。親が決めた道を選ぶ人は、うまくいかなかったとき、親を恨む。でも自分で決めたことなら、どんなことがあっても楽しめると思うから」

 母親の遺品を整理していたとき、大量のコンサートチケットが出てきた。券面には、「RED WARRIORS 渋谷公会堂」の文字が躍っている。

「大量に買って、親戚に配ったりしてたんだよね。親戚も年寄りなんで、渋谷公会堂に死んだ親父の兄弟が来たとき、あとで楽屋で、『音がでかくて、耳が聞こえないぞ、どうしてくれるんだ!』って文句言ってた(笑)」

 ユカイさんが断捨離をしたとき、子供たちが描いた「パパ大好き」という絵は、どうしても捨てられなかった。

「どう考えてもゴミだよなって思うけど、見ちゃうと捨てられなくなっちゃう。だって、そのときは真剣に描いているからね。そういえば、お袋の遺品の中に、俺が描いたゴミ屑も残ってた。それを見返していたとは思えないけど、親心として、捨てられなかったってことですかね」

(菊地陽子 構成/長沢明)

ダイアモンド☆ユカイ/1962年生まれ。東京都出身。ロック・ボーカリスト。86年、RED WARRIORSのボーカリストとしてデビュー。89年にバンド解散。90年、「DIRTY HERO」でソロデビュー。96年には、「トイ・ストーリー」の日本語版主題歌「君はともだち」を歌い幅広い層から注目を集める。映画、舞台などで役者としても活躍。自著に自身の不妊治療についてユーモラスに綴ったエッセイ『タネナシ。』などがある。

※週刊朝日  2020年12月4日号より抜粋