マッチこと近藤真彦の不倫報道で、1989年の自殺未遂、活動休止からの金屏風会見が蒸し返されてしまった中森明菜。そんなマッチ不倫から「話題の人」になってしまった明菜のニュースには明菜擁護のコメントが数多く寄せられていた。ニュースを目にするたびに脳内で明菜の曲が巡っているあなたに――80年代アイドルマニアで明菜好きのエスムラルダが贈る中森明菜名曲ベスト10!



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 みなさん、はじめまして。アタシは新宿二丁目を中心に、泣く子はもっと泣くホラー系ドラァグクイーンとして知られている、エスムラルダ。以後よろしくね!

 さて、最近、ある往年の男性アイドルのスキャンダルをきっかけに、思いがけず「話題の人」となった、歌手・中森明菜。デビュー以来、順調にキャリアを積み重ね、国民的スターにまで上りつめていたにもかかわらず、その男性アイドルとのあれこれ以降はトラブル続きで、近年はほぼ活動ゼロの状態に。

 でも、何年ブランクがあこうとも、何度「本格的に再始動するか?」と期待しては裏切られようとも、明菜さまの復活を心待ちにしているファンは数知れず。今回は、二丁目界隈でも世代を超えて愛され続けている(20代の、熱烈な明菜ファンのゲイもいるほど!)明菜のシングル曲の中から、アタシが独断と偏見でベスト10を選んでみたわ!

●10位 愛撫

 中森明菜×松本隆×小室哲哉という異色の組み合わせによって生まれた名曲。明菜の低音ボーカルと松本先生の詞が、軽快な小室サウンドに深みと渋みを与えていて、本当に素晴らしい。二丁目で定期的に開催される「TK GROOVE」(小室哲哉関連の楽曲をフィーチャーしたクラブイベント)でも、この曲がかかると、みんな嬉しそうに踊っているわ(もちろん、振付完コピ)。ちなみにアタシは、同じ作詞作曲コンビによる、マリリン・モンローをモチーフにした『NORMA JEAN』(アルバム『UNBALANCE+BALANCE』に収録)も好き。

●9位 飾りじゃないのよ涙は

 井上陽水作詞・作曲による、明菜のアイドルからアーティストへの転換点ともなった曲。リリース当初、中学1年生だったアタシには、いま一つピンとこなかったんだけど、大人になるにつれて、この曲の良さがわかるようになり、今では大好き。なお、音楽番組『夜のヒットスタジオ』で、明菜が「安全地帯with井上陽水」の演奏でこの曲を歌っている、豪華すぎ&かっこよすぎる映像があるので、興味のある人は探してみて!


●8位 APPETITE

 1993年に、レコード会社を移籍して以降、セールスが伸び悩むようになった明菜。でも、その時期にリリースされたシングルにはおしゃれな曲がいっぱい。明菜が詞を書いたロカビリー楽曲『Tokyo Rose』も捨てがたいけど、『APPETITE』は、エロティックな詞の世界観も、ジャズ/ファンク/ラテン風の曲調も、明菜の低音をきかせたボーカルも、すべてがかっこいいの! カラオケで歌っても気持ちいいのでおすすめ。

●7位 TATTOO

 ボディコンシャスな衣装と、ビッグバンド風のアレンジ&ジャングルビートがかっこよすぎる一曲。シングルバージョンも好きだけど、アタシはセルフカバーアルバム『Akina Nakamori〜歌姫ダブル・ディケイド』に収録されているバージョンが好き。冒頭からドラムがドコドコドコドコ鳴って、狩りに行きたい気分になるの!

●6位 原始、女は太陽だった

 実はアタシ、2年前から、ドラァグクイーン3人で「八方不美人」というディーヴァ・ユニットを組み、音楽活動をしているの。そのプロデューサーである及川眠子さんが作詞されたのが、『原始、女は太陽だった』。最初にタイトルを見たときはびっくりしたけど、当然のことながら平塚らいてうとは全く関係なし。傷ついてもなお愛を求め続ける女性の心情が、ラテン風の軽快な曲調に乗って歌われていて、クセになるわ。

●5位 SAND BEIGE−砂漠へ−

 世界のさまざまな土地をモチーフにした楽曲が多かった、当時の歌謡界(最近はあまりないわよね)。その中でも「サハラ砂漠」を題材にした曲というのは、相当珍しかったはず。今思えば、冒頭の歌詞「サハラの〜」って砂漠の夕日を見せたいだなんてかなりぶっ飛んでるんだけど、明菜の声で歌われると説得力があって、聴き手の心が一気に砂漠に連れて行かれちゃうのよね。アタシ、昔からこの曲が妙に好きで、定期的に聴きたくなるの。

●4位 水に挿した花

 例の事件の後、『Dear Friend』でせっかく無理矢理イメチェンを図ったのに、たった4カ月でこれかい! とツッコミを入れたくなるような、超暗い曲。でもそんな、自分の業(ごう)みたいなものに抗えない明菜が愛しすぎる……。楽曲の世界観も、明菜の消え入りそうなボーカルも、アタシ的にはかなりツボ。

●3位 ミ・アモーレ〔Meu amor é……〕

 今回のBEST10、かなり偏りがあるので、「超メジャー曲も入れておかないと」と思い、『DESIRE−情熱−』と迷った末に、こちらを入れてみたわ。アタシ的には、第27回レコード大賞を獲った直後の紅白歌合戦でこの曲を歌う明菜の、とても20歳とは思えない貫録たっぷりの女王感がとても好き。

●2位 帰省

「自分の幸せを奪った女に、からだを張って復讐しようとする(逆恨みだけど)」女を演じる明菜があまりにも素晴らしかった、ドラマ『冷たい月』の主題歌。音域の広い難曲なんだけど、サビなんてまさに「絶唱」という感じで、初めて聴いたときには鳥肌が立ったわ。全体的に「凍てつくような寒さ」が漂っている、これからの季節に必ず聴きたくなる一曲。

●1位 LIAR

 おそらく明菜がもっとも恋に悩んでいたころにリリースされた、不誠実な男への思いを歌った曲。詞の内容があまりにも当時の心境にハマりすぎていたせいか、つらそうに歌っているときもあったし、リリースから3カ月後に例の事件を起こしてしまったわけだけど……。そんなところにドラマを感じずにはいられなくて、「明菜のベスト曲」をたずねられると、アタシはついこの曲を挙げてしまうの。

 というわけで、とりあえず10曲選んでみたけど、『スローモーション』も『北ウィング』も『難破船』も『I MISSED "THE SHOCK"』も入れられなかった……。あらためて、明菜のあまりの名曲の多さにびっくりしたわ。どうか明菜が、無理のないペースで、でもまた活動を再開してくれますように!

■エスムラルダ/Esmralda/1972年3月13日生まれ 東京都出身/1994年より「情念系お笑いショー」を得意とするドラァグクイーンとして、各種イベントやメディア、講演会等に出演。2002年東京都の「ヘブン・アーティスト」ライセンスを取得。ライター・脚本家としても活動しており、2012年本名で応募した作品が「第12回 テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞」の優秀賞を受賞。2017年には東宝ミュージカル『プリシラ』(宮本亜門演出)の翻訳を担当。近年、舞台への出演が増え、自作自演の一人芝居ミュージカルなども行っている。近著にビジネス書『ロジカルメモ』(本名名義、アスコム刊)。