2020年12月28日、オリエンタルラジオの中田敦彦と藤森慎吾が吉本興業との契約を終了することが発表された。ここ数年で中田は活動の拠点をテレビからYouTubeチャンネルやオンラインサロンなどに移していたため、事務所を離れるのも時間の問題だと思われていた。だが、中田だけでなく藤森も独立するということに多くの人が驚いた。



 2019年の「吉本闇営業騒動」の際には、雨上がり決死隊の宮迫博之とロンドンブーツ1号2号の田村亮が、それぞれ相方を残して事務所を離れていた。また、松竹芸能に所属していたTKOの木下隆行も、2020年3月に相方を残して独立した。

 お笑いコンビの一方が独立することになったとき、その相方は従来通りの芸能活動を続けていこうとするならば、そのまま事務所に残るのが一般的である。オリラジも当然そうなるだろうと思われていた。だからこそ、藤森も一緒に独立するということを意外に思った人が多かった。

 中田が独立することになったのは、テレビや劇場の仕事が減り、事務所と接点が少なくなっていったためだという。今の中田は、テレビに出ることや劇場でネタをやることにそれほどこだわりがない。彼は新しいことを次々にやっていきたいタイプである。旧来の芸能事務所のサポート体制では、そんな中田の活動に対して迅速で適切な対応が難しい。そんな彼が独立するのは自然なことだった。

 一方、藤森は中田とは考えが違う。彼はもともと芸能界に純粋な憧れを持っていて、テレビの仕事を続けていきたいと思っているタイプだ。テレビやラジオのような既存のマスメディアで活動することを望むなら、事務所に残る方がメリットは大きいのではないかと考えられる。

 しかし、藤森はそれでも独立を選んだ。勇気ある決断ではあるが、不可解にも思える。実際、相方である中田も、藤森が独立すると聞いて驚いたのだという。中田は自分が独立することを決めて、事前に藤森に伝えていた。その時点では、中田から「一緒に独立しよう」などとは一切言っていなかった。

 それを聞いた藤森は、半月ほど悩みに悩んだ末、相方と一緒にいた方が楽しいだろうと思い、自分も事務所を離れることを決めた。藤森が本当は何を考えているのかというのは本人にしかわからないが、「楽しさ」を理由に独立を決めたと言い切るところに彼らしさを感じた。

 オリラジの独立の経緯は、彼らがコンビを結成したときのいきさつに似ている。中田と藤森は大学生の頃にバイト先で知り合った。当時の中田はあらゆるお笑い番組やお笑いDVDをチェックするお笑いマニアであり、いずれは芸人になることを目指していた。一方の藤森は、将来のことなど考えたこともない軽薄な大学生だった。

 そんな彼らはバイト中に話をして仲良くなっていった。そして、中田が大学の学園祭で友人と演じていた漫才の映像を見せたところ、藤森が「面白い」と感動して、中田にコンビを組んでほしいと話を持ちかけた。これをきっかけにしてオリラジというコンビが誕生した。

 コンビを組んでいる芸人にとって「最初にどっちから誘ったか」というのは、あとあとまで尾を引く問題になる。例えば、ナインティナインの矢部浩之が、体調不良で休業してしまった岡村隆史を見捨てなかった理由の1つは「この世界に誘ったのは自分だから」という負い目があったからだという。

 藤森が「楽しそう」という理由で独立を選んだのも、「楽しそう」という理由でコンビを組んだ原点に帰っているというふうに見えることができる。藤森が芸能活動を続ける背景にあるのは「あっちゃんと一緒にいるといろいろ楽しいことがありそう」という純粋な好奇心なのだろう。

 彼らに限らず、芸能人が事務所を離れて個人で活動するケースが増えてきた。かつては「独立=干される」というイメージがあったが、今は少しずつそれも薄れている。公正取引委員会がジャニーズ事務所に対して注意喚起をしたことが話題になったように、芸能事務所の旧態依然とした体質は徐々に改善を余儀なくされている。

「事務所にいれば安心、独立すると不安」というのは一昔前の考え方だ。そもそも芸能は人気商売であり、どんなタレントでも大手事務所に所属していれば将来安泰ということはない。

 絶対的な安心や安全がない世界だからこそ、好きなことや楽しいことにこだわるのが合理的なことだと言える。芸能界や芸能人のあり方がどんどん変わっている時代に、オリラジの2人には新しい生き方を見せてほしいと思う。(お笑い評論家・ラリー遠田)