映画「若大将」シリーズの青大将役やテレビドラマ「北の国から」の黒板五郎役など、個性派俳優として活躍し、国民的な人気を博した俳優の田中邦衛さんが3月24日、老衰のため死去した。88歳だった。



 1932年生まれ。岐阜県土岐市出身。麗澤短大英文学部を卒業後、中学校の教員などを経て、名門「俳優座」の養成所に1955年に合格、入所した。その後、映画「若大将」シリーズで人気俳優の階段を一気に駆け上がると、「網走番外地」「仁義なき戦い」など、名作として語り継がれる映画作品に次々と出演した。

 さらに、81年から放送されたテレビドラマ「北の国から」での黒板五郎役が当たり役に。映画だけでなくお茶の間でも「顔」となった。

■プライベートもそのまんま

 同ドラマで共演した俳優のガッツ石松さんは、思い出をこう語る。

「私は『北の国から』にレギュラーで出ていました。田中さんはプライベートでも演じているまんまでしたね。よくしゃべるしね、体で演技する人なんですよね。それが面白くてね。相手にちょっと突っ込みながら笑わせるのが得意で、ちょっとキザでユーモラスでした」

 ガッツさんは「北の国から」以外にも、菅原文太さんや松方弘樹さんが出演する「仁義なき戦い」でも田中さんと共演した。

「しばらく、ドラマにも出ていなかったから案じてはいたんだけどね。天寿をまっとうしたんじゃないかと思います」

 ドラマで脚本をつとめた倉本聰さんは、複数の候補者がいるなかで田中さんを起用した理由について、「誰が一番情けないか、で決めた」「周囲にいるのはそんなやつだよね。僕は書くとき、自分の中の情けなさを出したいから」(2020年1月11日朝日新聞デジタル)などと、語っていた。

 俳優の岡崎二朗さんは、鶴田浩二さん主演のテレビドラマ「大空港」(78〜80年)で、田中さんと共演した。岡崎さんは田中さんの思い出をこう語る。

「田中さんは口をとがらせてしゃべるので、唾が飛んでいるように見えますが、そんなに飛んでないんですよ。ドラマの撮影の合間に、私と話し込み過ぎちゃって笑った後に撮影に入って役から心が離れちゃってね」

 岡崎さんは、さらにこう続ける。

「鶴田さんが、すぐに機嫌が悪くなったりして気難しいから、田中さんがNGを連発していたのを思い出します。『次はNG出しませんから』と弁解する表情が独特でしたね。あの人は何かを食べていようが、泣いていようが、笑っていようが、同じ顔でね、倉本聡さんが好きだったのがわかりますね」

■「お金が入っちゃって…」

 田中さんといえば、主演もしたが、名脇役としても知られる。

「天下の二枚目俳優に合うんですよ。鶴田浩二さんも、高倉健さんも、加山雄三さんもみんな、田中さんを脇役に置きたかったの。自分を引き立てるために、光らせてくれるから。体もそんなに大きくなかったし、顔も独特だから、すべての主役がいい男にはえるから脇につけたかったんですよ」(岡崎さん)

 みんなが尊敬する脇役だった。

「脇役といっても、主役の相手役という感じ。一時は『お金が入っちゃて、入っちゃって』とか冗談まじりに言ってました。主役級のお金ももらっていたんです。これから100年は出てこない男の相手役でした」(同)

 葬儀は家族で営んだという。(AERAdot編集部・上田耕司)