少し前に芸人の「世代論」がやたらと話題になったことがあった。どの芸人がどういう世代に属しているのか、それぞれの特徴は何なのか、といったことがマスコミでしばしば取り上げられていた。


 
 そのように芸人の世代論が盛り上がったきっかけは「(お笑い)第7世代」という言葉が出てきたからだ。霜降り明星のせいやが自身のラジオ番組で何気なく口にした「第7世代」という言葉は、その使い勝手の良さからあっという間に広まっていき、彼らを含む若手芸人の総称として定着した。

 第7世代と呼ばれる主に20代の若手芸人が続々とテレビに出るようになり、お笑い界は一気に活気づいた。

 先日、私の著書『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)が刊行された。タイトルの通り、この本では第1世代から第7世代までの芸人の世代論について書いている。

 本書の企画が立ち上げられたのは、まさに第7世代ブーム真っただ中の2020年上旬だった。「第7世代」がテレビや雑誌やウェブメディアで注目を集めていて「じゃあ、第6世代にあたるのは誰なんだ」「◯◯という芸人は第何世代なのか」といったことが話題になっていた。

 私自身もその手の記事の執筆を依頼されたり、コメントを求められたりする機会も多かったため、自分なりのお笑い世代論を一度まとめておこうと思ったのが執筆のきっかけだ。

 私は2015年に『逆襲する山里亮太』(双葉社)という本を出版した。この本では、山里亮太とその同世代の芸人(今で言う「第6世代」)が、上の世代の芸人に憧れを持ちながらも、そこには追いつけないというあきらめも同時に抱えているということを書いた。

 山里と同世代の芸人の中には、テレビのバラエティ番組以外の場所で戦っている者も多い。絵本執筆、映画製作、オンラインサロン運営などを手がけるキングコングの西野亮廣、作家として活動するピースの又吉直樹、社会派ネタのスタンダップコメディアンを志すウーマンラッシュアワーの村本大輔などはその典型である。

 彼らが新しい分野に進出しているのは、テレビを主戦場とする従来のスタイルでは上の世代の芸人に勝てないため、別の場所を探してそこにたどり着いたという側面がある。

 今のところテレビが活動の中心となっている山里やオードリーの若林正恭も、どこか屈折した自意識を抱えているようなところがあり、上の世代の芸人に比べると突き抜け切れていないところがある。

『逆襲する山里亮太』を書いていた2015年当時の私は、そんなお笑い界で新たに若手芸人が台頭してくるのは難しいだろうと思っていた。

 しかし、第7世代ブームによって一気に状況が変わった。第7世代の若手芸人が続々と登場して、テレビの世界を席巻した。中でも、霜降り明星は『M−1グランプリ』を制しただけでなく、テレビのレギュラー番組を多数抱えており、YouTubeの活動にも積極的である。非の打ち所がないほどの結果を出し続けていて、新世代のリーダーとなる風格を漂わせている。

 そんな第7世代という言葉が生まれてからすでに2年余りが経ち、このブームも次の段階に移っている感じがする。第7世代が人気になっているのに伴って、かつては元気がなかったはずの第6世代が続々と息を吹き返しているのだ。

 その筆頭は千鳥である。東京進出後にくすぶっている時期が長かった彼らも、今では幅広い世代に支持される人気者になった。さらに、それに続く位置にいるかまいたちもすさまじい勢いでレギュラー番組を増やし続けている。それ以外でも、チョコレートプラネットをはじめとして、第6世代の芸人の中から続々とスターが生まれつつある。

 お笑い全体が活気づいたことで、確かな実力を持っている第6世代の芸人が正当に評価されるようになり、人気を博している。その勢いは今が旬の第7世代にも決して負けていない。

 こういうことがあるからこそ、芸人を「世代論」で考えることには興味が尽きない。いい意味での世代間闘争が業界全体を盛り上げているのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)