昨年から、アニメ「鬼滅の刃」から飛び出した大ヒット曲「紅蓮華」と「炎」を聞かない日はないのではないか。デビューから10年、歌手として大ブレークを果たした。AERA 2021年4月26日号から。



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──デビュー10周年を記念したミニアルバム「LADYBUG」に収録される「Another Great Day!!」は、バカリズム脚本のヤンキーOL映画「地獄の花園」の主題歌で、信念を貫く女たちを応援するハードロックだ。自身が作詞し、B’zの松本孝弘がサウンドプロデュース(作曲、編曲)を手掛けた。

LiSA:松本さんとコラボできると聞いて、まずは疑いから入りました(笑)。本当に松本さん本人が作るのか、直前でダメになってしまうんじゃないかな、とか。でも、実際に楽曲を聴いた時に「あ、松本さんだ」と確信して。私の武器だと思っているスピード感やリズム感を生かせる楽曲で、ちゃんと私のこれまでの作品に向き合って、授けてくださったんだと感じました。私は子どもの頃から自分がこの世界に生まれてきた意味みたいなものを探し続けてきて、最後に向いていると思えたのが音楽で、ロックだったんです。そのロックを貫くために、悩んだり、泣いたりしながら本気で生きてきました。その歩みのなかで、たくさんの素晴らしい作品と出会って、そして今、ロックの王様のような松本さんに巡り合えた。そう思ったとき、「自分の生き方は間違ってなかった、あ〜、いい日にたどり着いた!」と思えました。私の座右の銘は「今日もいい日だっ」。まさにそれだ、と。作詞をする上でバカリズムさんの脚本を読むと、信念を持って生きているヤンキーOLと、自分の生きざまが重なるような気にもなって。ここで使わなかったら一生使わないだろうと思って、「今日もいい日だ」という意味の「Another Great Day!!」という楽曲が生まれたんです。

■一日にいいことを探す

──この座右の銘は母から授かった。20歳前、学生時代から続けてきたバンドを解散した。不安に苛まれつつ、プロの歌手を志し、上京資金を貯めていたとき、母が放った言葉だった。

LiSA:最後のトライのような気持ちで、覚悟を決めて東京に出ようと思っていた頃でした。なんの脈絡もなく母が、「一日の中で、一つでもいいからいいことを探して、寝る前に『今日もいい日だ』って言って、一日に花丸をつけて眠りなさい」と言いだして。もともと私は自分を認めてあげることがすごく苦手で、自分に花丸をつけられない性格だったんですね。毎日、暗い顔をしていたんだと思う。実は上京することは内緒だったから、母は怖いなと(笑)。東京に行く前日に言ったら激オコでしたけど、3カ月後くらいに平気な声で「何やっとんの?」と連絡が来て、「連絡しようかしまいか迷った私の気持ちは!」って(笑)。でも、東京に出てきて一人になったからこそ、母の言葉がすごく響くようになった。迷うからこそ一日一日大切に生きなきゃいけないんだな、と。

──上京し、数々のオーディションを受けてつかんだのがテレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンドの歌手の座だった。シングル、アルバム累計40万枚を売り上げ、2011年の春にソロデビューを果たす。

LiSA:アニメファンの方たちは、まだ何者でもない私自身を、自分が好きな作品に関わったというだけで無条件に愛してくれた。そのことがすごくうれしくて、この人たちに何かを返さなくちゃいけないという気持ちになりました。そこからたくさんアニメの主題歌を歌わせていただいて、作詞を手掛けることも多くなりました。大切にしたのは、まず作品を愛すること。うそをつかないこと。作品のファンの方から見れば「120%作品の世界観だ!」と思ってもらえるように。そして、LiSAの楽曲として出す以上、自分の中にある本当の気持ちを乗せた歌詞を書き、ライブでLiSAを見に来てくれた人たちにも、ちゃんと私の曲として感情移入できるような曲にすること。両方の要素がある楽曲にすることは大切に守っています。

■プライドは取り払った

──アニメソングを歌うことによって、ロックシンガーとして表現の幅も広がった。

LiSA:自分はロックだけができると思っていたんですけど、アニメと出会って、可能性が広がりました。たとえば、「Angel Beats!」という作品は、私が一番避けてきた“かわいい”という表現を求められた。自分の中にあったプライドは取り払って、「できることをやってみよう!」と向き合う中で、表現を広げることができたと思います。それまでは、キーが高くてスピード感がある曲を歌うということを特別得意とも思ってなかったんですけど、アニメソングに出会って、そんな自分の特性にも気づけました。

──10年はあっという間だった。振り返るとさまざまな苦悩が今の自分を作ってくれたと感じる。

LiSA:14年に初めて日本武道館でライブをやったとき、体調があまりよくなかったんです。それまで「完璧なLiSA」であることに美学を感じていたので、すごく悩みましたが、結局、「それも自分だな」と。そこでちゃんと体力をつけて、翌年、武道館2DAYSを成功させました。でも、デビュー時に決めた目標が武道館だったので、「この後どこに向かえばいいんだっけ?」という迷いも生まれて。

 その次の壁は周りからの「LiSA、紅白行くんじゃない?」という期待だったかな。19年に初出場できるまでの数年は、応援してくれる人に対して申し訳ない気持ちが常にありました。

 今もいろいろな悩みがあります。「紅蓮華(ぐれんげ)」「炎(ほむら)」という、ものすごく多くの方に受け入れてもらった楽曲のあと、自分がどう生きていくのかも。でも、これからも悩んだり泣いたりしながら、大好きな人と、大好きな音楽で遊び続けたいですね。目の前のことに誠実に向き合って、「今一番にやりたいことを、好きなようにやっていく!」をやり続けたい。「今日もいい日だっ!」と言い続けて、自分に花丸をつけながら。

(ライター・大道絵里子)

※AERA 2021年4月26日号