アイドルと作家の両方で活躍する、加藤シゲアキさん。著書『オルタネート』で吉川英治文学新人賞を受賞した。月刊「ジュニアエラ」5月号では、その加藤さんが、子ども時代の読書体験を振り返り、子どもたちにもアドバイスを送った。

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――小学校、中学校時代にはどんな本を読んでいましたか?

 赤川次郎さんの小説が好きでした。中学3年生のころですね。両親ともに本が好きだったので、父親の本棚にあったのを見つけて「読みやすそうだな」と思って手に取ってみました。ストーリーはあまり詳しくは覚えていないけれど、すごく好きで何回も読んでいたことは覚えています。

――そのころから文章を書くことも好きでしたか?

 小学生のころから、ワープロを使って文章を書いたりしていました。一人っ子だったこともあり、ゲームでもRPG(ロールプレイングゲーム)が好きで、プロットみたいなものを書いていましたね。「物語」は身近な存在だったな、と思います。

 でも、国語の成績は悪かったんです。僕は中学受験をしたのですが、完全に理数系でした。理科は通っていた塾で全国100位内に入ったこともあるけれど、国語の成績は4教科で一番悪かった。文章を読んで一つひとつ考えていたら、考えることに時間を使ってしまって、最後の問題までたどり着けなかったですね。中学受験の国語は、文章を論理的に捉える力も必要だったな、といまは思います。

――本格的に本を読むようになったきっかけは?

 高校生のころに、友人たちが村上春樹さんの小説を読むようになり、その流れから「純文学っていったいなんだろう」と考えるようになりました。『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(J・D・サリンジャー、村上春樹訳)はいまも好きな一冊です。自分が高校生のときに、作家の金原ひとみさんと綿矢りささんが史上最年少で芥川賞をダブル受賞し、「純文学って、若い人でも書けるんだ」と思えたことも大きかったです。

――読書体験はいまの人生にどう影響していますか。

 本を読むということは、いろいろな人の人生を疑似体験するということ。人間を完全に理解するのは難しいけれど、他者に対しての理解を深めることはできる。たとえば、殺人事件のニュースを耳にしたときに、絶対に許されない行為ではあるけれど、「容疑者だけが悪いのか、社会のせいではないか」と考えられるようになる。そうした意味では、本を読むと人に優しくなれると思う。人の心に少し寄り添えるようになる。その優しさが“流される優しさ”ではなくて“芯のある優しさ”になってくるから、そんなふうに他者を思っていると、結果的に自分にも優しさが返ってくる。そう思っています。

プロフィル★加藤シゲアキ
1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。NEWSのメンバーとして活動しながら、2012年1月に『ピンクとグレー』で作家デビュー。20年に初のエッセー集『できることならスティードで』を刊行。21年に『オルタネート』で吉川英治文学新人賞受賞

(ライター・古谷ゆう子)

※月刊ジュニアエラ 2021年5月号より