『ピンクとグレー』『染色』『オルタネート』など数々の作品を書き続けてきた「NEWS」の加藤シゲアキさん。作家・林真理子さんとの対談で、書き始めて10年経った今、執筆のきっかけやこれからを語りました。

【加藤シゲアキ 「ジャニーズが書いた」と言われ続け…受賞に感慨】より続く



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林:加藤さんはすごく勉強ができて、中学受験でずっと塾に行ってたから、それでデビューがちょっと遅れたそうですね。

加藤:デビューというか、中学受験すると決めていたのに、小学6年でオーディション受けて、ジャニーズに何となく入っちゃって。そのとたんにいろんな仕事が舞い込んで、成績がすごく下がったんです。そのころ私立中学で芸能活動をしてもいいところって、有名なところだと慶応、青学(青山学院)、法政ぐらいしかなかったんですね。それで青学を志望校にして、ジャニー(喜多川)さんに「受験するまで待ってほしい」と言ったんです。そのときは、私立の中高に通っていた先輩に櫻井くんがいたんですよ。

林:嵐の櫻井翔くんですね。

加藤:僕はまだデビューする前だったんですけど、僕が受験するとわかって、同じ境遇だった櫻井くんをジャニーさんが紹介してくださったんです。結局、受験のために半年ぐらい休んで、青学に受かった当日に、ジャニーさんに直接電話したら「あした来い」って言われて。行ったらその日にドラマが決まったんです。

林:すごい……。

加藤:だから同世代からメチャクチャ憎まれたと思います。「勝手にいなくなって、突然帰ってきたと思ったら仕事もらって、大した実力もないのに」という感じで。

林:NEWSの結成後は、メチャクチャ忙しくなったんでしょう?

加藤:でも、9人でデビューしたんですけど、僕よりもっと華やかなメンバーがいたんです。僕は日陰にいた感じで、「なんで歌って踊ってるんだろう」みたいな、自分が好きになれない期間が始まっちゃったんですね。それで映画とか本にだんだんのめり込んで、コラムとかをちょいちょい書いてたら、それが「おもしろい」って言われて。デビューして、初めてほめられたのが文章だったんです。

林:へぇ〜、そうなんですか。

加藤:それでエッセーの仕事などをやってたんですけど、プライベートの切り売りみたいなことに疲れちゃって。やっぱり小説がいいなと思って書いたのが『ピンクとグレー』だったんです。そしたら「『ピンクとグレー』って案外いいぞ」とか、「あの作家さんがほめてたよ」「どこどこの編集者さんがほめてたよ」という声が聞こえてきて、そのときはほんとに涙が出ましたね。書店回りをしたときには、「書き続けないと応援できないよ」と言ってくれる書店さんもありました。

林:まあ、いいこと言うじゃないですか、書店の人。

加藤:それもあって書き続けたんです。書くことが楽しくて、疲れてても、おもしろい話を思いついたら書かずにいられないという。

林:それは作家としていちばん大切な要素ですよ。書けなくなった作家ってみじめですからね。誰とは言いませんけど。

加藤:書き始めたのが2011年だったんですけど、それから10年、書くモチベーションに関しては、まったく変わらなかったですね。直木賞に落ちたときに「もういいか」とも思ったんですけど、次の日にはもう別の作品を考えてましたから。

林:素晴らしいッ!

加藤:逆に『ピンクとグレー』で賞をもらってなくてよかったなと思いましたね。あのとき過大評価されてたら、そこで満足しちゃったかもしれないけど、「まだまだイケるぞ」と思えましたから。

林:これからも書き続けてほしいと思いますよ。作家の皆さんも加藤さんに好意的なんじゃない? これだけ長いこと作品を出し続けている誠意を皆さんが認めて、好意的に迎え入れようとしているんじゃないかと思いますよ。こんなこと言うと偉そうだけど。

加藤:(芸能界より)作家界のほうがやさしいかもしれないですね、そういう意味では。

林:私が理事長をやっている日本文藝家協会に、加藤さんが入ってくれるとうれしいな。あまりメリットはないけど、保険があるし、文学者のお墓に入れるし(笑)。

加藤:とにかく書き続けることが大事なんだなということは痛感しましたね。文学賞の作家に対する評価を見ても、続けるかどうかが大きなプライオリティー(優先順位)なんだなということがわかりました。

林:そうですよ。編集者が励ましてくれるし、ほめてくれるし、仲間になってくれるしね。編集者を大事にして、若い編集者とタッグを組んで、いい本をいっぱいつくってください。

加藤:はい、頑張ります! いつも応援してくださってありがとうございます。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

加藤シゲアキ(かとう・しげあき)/1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。2003年に結成された「NEWS」のメンバーとして活動、ドラマ「3年B組金八先生」「時をかける少女」「嫌われる勇気」などに出演。執筆活動も展開し、12年に『ピンクとグレー』で小説家デビュー、16年に映画化。以降精力的に執筆活動を続け、今年『オルタネート』で、第42回「吉川英治文学新人賞」を受賞。5月には同作品が「高校生直木賞」も受賞した。自身の短編小説を自ら戯曲化した舞台「染、色」が上演中。6月30日にはNEWSのニューシングル「BURN」が発売。

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※週刊朝日  2021年6月25日号より抜粋