太平洋戦争時、日本でも原子爆弾が研究されていた──。「映画 太陽の子」は、知られざる史実を背景に、3人の若者が抱く葛藤と希望を描く。本作に出演する柳楽優弥さんと有村架純さんが、印象に残ったシーンや映画を通して感じたことなどを語り合った。AERA 2021年8月2日号から。



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――「映画 太陽の子」の舞台は、太平洋戦争の終戦が迫る1945年の夏だ。切迫する戦局の中で、柳楽優弥演じる京都帝国大学の学徒、石村修は、原子核爆弾の開発に没頭している。建物疎開で家を取り壊され、修の家に身を寄せる幼馴染み・朝倉世津を有村架純が、修の弟で陸軍下士官の石村裕之を故・三浦春馬が演じた。

■素の時間と重なった

柳楽:監督の黒崎博さんが偶然目にした若き科学者の手記が、この物語のベースになっています。太平洋戦争中に、日本でも原子の力を利用した新型爆弾が研究されていたんだと、はじめて知る事実がたくさんありました。それを僕たち若い世代の俳優が伝えていくことの大切さを最初に感じました。

有村:それまでは被爆国としての歴史しか頭になかったので、この作品が背負う意味を、私も重く受け止めました。

柳楽:映画では、戦時中でも若者たちがそれぞれに青春をまっとうした姿が描かれます。同年代の俳優仲間である、架純ちゃん、春馬くんとの素の時間とも重なっていたと思います。

有村:私もキャストのお名前を聞いた時、柳楽さん、三浦さんの幼馴染みを演じられるということで、特別な時間になる予感がありました。

――戦時下という、現在と違う時間を、若い俳優たちはどうとらえたのだろうか。

柳楽:僕はどうしたら自分が物理学の研究者に見えるのか、そこからの出発でした。監督に勉強会を開いていただき、京大に残る研究所を訪ねたりしながら、いろいろ学びました。修は共感しやすいキャラクターではないんです。家族や幼馴染みとの絆はあるけど、戦争が進む中で原爆研究しか目に入らなくなっていく。普通に明るい青年が、知らず知らずに精神を崩していく感じが怖いんです。

有村:観ていただける方に一番近い存在は、たぶん世津だと思います。私も自分なりに過去のインタビューなどを調べていたのですが、ある女性兵士の話が印象に残りました。毎日、爆弾が落ちて、誰かが死んでいくけれど、美しい空、美しい朝は変わらぬままだったという話で、それが残酷で、同時に救いにもつながる気がしました。

柳楽:撮影は2019年9月、10月で、コロナ禍前でしたが、映画の内容はいまのコロナの状況にも通じますよね。何が本当かわからず、人々が世の中のムードにのみ込まれていく。この時代の修もそうです。それでもみんな毎日本気で、必死に前を向いていた。それが、この作品のよさで、時代が違っていても、共感していただけるところではないかな、と思います。

■よくご飯に行った

――映画では男性たちが戦争の狂気にとらわれる一方、女性は感情を押し殺し、冷静に現実を見据えている。

有村:日々、状況が荒れていく中で、生き抜くと決意しても、次の日はもうだめだと絶望する。世津はそういう葛藤をずっとのみ込みながら、未来を見つめて負けないでいる。ただ、3人で行った想い出の海で、抱えていた感情が爆発してしまうシーンがあるんです。

柳楽:あのシーンは夜明けの海で1回しか撮れない場面だったから、舞台みたいに緊張しました。実際、想定よりも天候が荒れて、演技どころじゃなかったんです。カットがかかった後はバタンと倒れて、しばらく動けなかった。その分、迫真のシーンになりましたけど。

――撮影中、お互いの芝居について話しあうことは少なかった。

有村:私たちは、お芝居のやり取りについては、あまり話さなかったんです。その代わり、よくご飯を食べに行きました。

柳楽:京都ロケで食べた焼き肉、おいしかったね。あと、のれんをくいっと開けて入っていく“ザ・京都”みたいな割烹屋さんとか。僕は架純ちゃんといると、ちょっと居心地がよくて。春馬くんとは10代からオーディションで競い合ってきた仲だし、架純ちゃんとも共演があったし。

有村:柳楽さん、三浦さんとは、最初から幼馴染みのような関係性ができていた感じで、現場は穏やかで楽しかったです。

■本当につながったな

――そんな俳優たちの息がぴったりと合ったシーンが、縁側で修と裕之が盃を交わす場面だ。

有村:ある夜、兄弟の真ん中に私がいて、3人で話をするんです。世津は「戦争が終わったら」と、未来を語ります。台本にはなかったのですが、その時、二人の手を取りたいなあと思ったんです。どうにかして、私たちがつながっていることを伝えたかった。

柳楽:最初に裕之の手を取ったんだよね。「お、いいな。で、俺の手も?」ってドキドキしてたんだけど。

有村:修の手もちゃんと取りましたよ(笑)。

柳楽:一瞬、驚いた後に、本当につながったな、と感じました。

有村:あの時代を過ごしていた人たちが、「生きる」という選択をしてくれたから、歴史がつながって、自分たちがいま、ここにいる。この作品をきっかけに、そのことを大事に考えていこうと思っています。

――映画の完成披露上映会の舞台挨拶で、柳楽は、三浦との時間を「これからも愛して大切にしていきたい」と、オマージュを捧げた。

柳楽:僕にとって本当に特別な作品。その思いとは別に、自分たちが未来のために、どのような選択をするか。10代、20代の人たちに、ぜひ観てもらいたい映画です。

(構成/ジャーナリスト・清野由美)

※AERA 2021年8月2日号