1971年にファンクラブが開設され、翌年には大河ドラマ出演やレコードデビューし、一躍スターとなった郷ひろみさん。50年の間、スターであり続ける郷さんのストイックな一面を作家・林真理子さんが伺いました。

【郷ひろみが認めた17歳の才能「めずらしく速攻でオーケーを出した」】より続く



*  *  *
林:今、全国ツアーの真っ最中で、全国55公演のコンサートをなさるんですね。最後は東京国際フォーラムで。

郷:最終回の10月18日、僕の誕生日なんですよ。そこで5月から始まった全国ツアーが終わります。

林:全国ツアーでは日帰りできないところもありますよね。ホテルに泊まっても、寝転がって缶ビール飲みながらオリンピックを見るなんてことはないですか。

郷:ないですね。僕、コンサートが始まる前は、ホテルの部屋でもストレッチしてますよ。

林:ふだんから絶対にだらしない格好はしないんでしょう? パジャマもすぐ着替えるし、寝そべってダラダラとか、そんなことしたことがないそうですね。

郷:性分ですよね。それがいいか悪いか僕にはわからないけど、僕にはそれが合ってるんだろうなという感覚なんです。僕、スタッフが「面倒くさいなあ」と思うことでも、自分からやるタイプなんですよ。何事も、「やる」と自分が首を縦に振ったら、何があっても絶対に文句は言わないです。

林:「過密スケジュールで、ひどいじゃないか」とか、「なんだ、このあと週刊朝日で林真理子と対談かよ」とか言わない?(笑)

郷:アハハハ。モメるとしたら決める前ですね。一度「やる」って決めたら、何も言いません。

林:前にここに出ていただいたとき(2008年1月4−11日号)、ニューヨークでボイストレーニングをしたとおっしゃってたけど、全国ツアーの合間合間にボイストレーニングもなさるんですか。

郷:テレビ出演、コンサート、レコーディングの前など、声を出さなきゃいけないときは必ずボーカルレッスンをやります。

林:そして体のほうもすごくつらいトレーニングをなさって。

郷:月、水、金の週3回やってますけど、そんなにつらくはないですよ。30歳のころから35年ぐらいずっと続けてきていますから。

林:私みたいに、自分を思い切り甘やかしている人間から見たら、30年以上も続けるなんて、信じられないことですよ。

郷:いや、僕は体を動かすことが性に合っているだけのことです。身体的につらいことを我慢するってことは、心も鍛えられてるんだな、と思えるようになった。一石二鳥ですね。

林:そんなことできないですよ。

郷:林さんは目標設定がたぶん高すぎるんですよ。

林:目標設定も何も、寝たきりにならないように頑張ろうと思ってる程度だから、ジムに行っても「まあ、このへんでいいかな」って。

郷:「このへん」でいいんですよ。大事なのはず〜っと続けていくことなんです。最初のうちは、目標設定が高くてもやる気があるから何とかなるんです。でも、熱意が薄らいできたときに、高い目標を掲げているとキツくなるんですよ。最初から「こんなの軽い軽い。大丈夫」ってレベルでやっていけば、少しぐらい熱意が冷めても続けられるんです。

林:なるほどね。それにしても、50年間ずっとスターでい続けるって大変なことですよね。「オギャー」って生まれた赤ちゃんが50歳になるあいだ、ずっと第一線のスターだったって、われながらすごいことだと思いません?

郷:それがすごいとは、自分自身はあまり考えないんですよね。言われれば「そうか、50年たったんだ」と思うんですけど、スターって見る人が決めることだと思っているんです。僕は「郷ひろみ」を必死に続けているだけなんですよ。あとは見る人が好きなように形容してもらえばいいかなって、その程度なんです。

林:私、ずっと前にテレビを見てたら、郷さんが幻冬舎の見城(徹)さんと飲んでいるシーンがあったんです。そのとき見城さんが「アイドルっていうのは民衆のいけにえなんだ。だからおまえはつらいことでもずっと続けなければいけないんだ」って説教してるシーンが延々と映ってましたよ。

郷:ハハハ、言いそうですよね、ケンケン(笑)。

林:アフォリズム(警句、金言)っていうのかしら、「そうか、アイドルって民衆のいけにえなんだ。だから、老けたり太ったりできないんだな」と思いましたよ。

郷:でも、僕の場合、体を動かすことが好きだし、結果としてそうなってるんですよ。「動ける体と動けない体、どっちがいい? 動ける体のほうがいいよね。もっとスピーディーにターンするためにはどうしたらいい? ある程度やせてたほうがいいよな」って考えれば、自然とトレーニングするし、太らないようになるんです。

林:それはそうですけど……。

郷:結局、僕にとって大事なのは、「郷ひろみ」でいたいか、いたくないかなんです。それを自分に問いかけると、いつも「郷ひろみでいたい」と思う。「そのためにすべきことは何?」って考えると、おのずから答えは見つかります。それを僕はやってるだけで、生きていくにはやっぱりどこかで努力しないといけないと思うし、理不尽だなって思うこともありますけど、その理不尽さが自分を強くすることもありますよ。

林:すごいです。ちょっと感動しちゃった。

郷:トラブルも、逆境も、自分を強くしていくためのものだと考えれば、どんなトラブルも僕は受けて立つことができます。僕がデビューした10代のころは、「歌か踊りか、どっちかにしたら?」って言われて、歌って踊ることには否定的な時代だったんですね。でも、僕はそのとき「歌は心で歌うって言うけれど、体で歌うものなんじゃないかな」って思ってたんですよ。それでトレーニングをずっと続けてきたから、今も動ける。だから郷ひろみを否定する声があるのは、僕にとって、大事なことなんです。

林:なるほど……。

郷:否定的な意見からバイタリティーが生まれてくるし、否定的な意見に負けちゃいけないっていつも思うんですよ。

林:すごいな。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

郷ひろみ(ごう・ひろみ)/1955年、福岡県生まれ。72年、NHK大河ドラマ「新・平家物語」で俳優デビュー、シングル「男の子女の子」で歌手デビュー。同年、第14回日本レコード大賞新人賞を受賞。「よろしく哀愁」(74年)、「お嫁サンバ」(81年)、「GOLDFINGER’99」(99年)などヒット曲多数。今月、106枚目となる両A面シングル「100GO!回の確信犯/狐火」をリリース。現在、全国ツアー<HIROMI GO CONCERT TOUR 2021 “Beside The Life” 〜More Than The Golden Hits〜>が開催中(10月18日まで)。

※週刊朝日  2021年9月3日号より抜粋