スター「郷ひろみ」としてプライベートでもストイックな郷ひろみさん。50周年でますます輝く郷さんの魅力を、作家・林真理子さんがたっぷり引き出してくれました!

【デビュー50周年の郷ひろみ「否定的な意見からバイタリティーが生まれる」】より続く



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林:郷さん、楽しみって何かあるんですか。お酒もおやめになったんでしょう?

郷:飲んでないんですよ。もう何年になるんだろう。おそらく10年近いですね。

林:お友達は芸能界じゃない方が多いと前におっしゃってたけど、たとえばIT関係の社長さんなんて、ワインが好きな方がいっぱいいらっしゃるでしょう。そういうときも飲まない?

郷:はい。僕は飲まないと決めたら一滴も飲まないんですよ。やると決めたらやるし、やらないと決めたらやらないし。

林:「ロマネ・コンティ、君のために持ってきたんだから飲みなよ」って言われても?(笑)

郷:ありがたくいただいておきますよ(笑)。でも、いただいても飲まないです。「ひろみさん、もう飲んだっていいでしょう」ってみんな言うけど、「飲まないって決めたんだからいいじゃない。ほっといてよ、僕のことは」って言うんです。60代を「最高」にしたいなと思ったから、お酒をやめたので。

林:ああ、そうなんですか。

郷:たとえば僕、お箸持つの左手に変えたんですよ。もう10年近くになるかな。歯磨きとか、日常的ないろんなことを左手でやるんです。そしたら右と遜色なく使えるようになっちゃったんです。

林:なんで変えたんですか。左手だとあんまり食べないからですか。

郷:体のバランスをとろうと思って。

林:エ〜ッ!(笑)

郷:55年間右手をずっと使ってきたから、これからの後半生は左手でもいいなと思って。

林:ふつう、そんなこと考える人いないと思いますけど。

郷:ゴルフでティーアップするときは、もう左手じゃないとできませんね。右手ではティーを刺す感覚がわかんなくなってきて。

林:そうだ、ゴルフなさるんですよね。

郷:でも、7月、8月はやらないんですよ。僕、日に焼けないように一年中長袖だし、ゴルフのときも日に焼けないようにしてるんです。ステージの仕事が多いので、腕とか首回りが焼けてるのがイヤなんですよ。僕、冬でも日傘さしてますから。

林:そうなんですか。

郷:「12月なのに日傘さしてる。あれ、ひろみさんだよ」って、遠くからでもすぐわかります(笑)。

林:今後のお仕事ですけど、50周年を迎えて、ドラマとか映画とか映像のほうは何か考えてます? 私なんかは「俳優 郷ひろみ」をよく知っているので。

郷:どうしても歌のスケジュールが先に決まるんですよ。1、2年前に会場をおさえておかなきゃいけないので、そっちが優先されてしまいますよね。

林:なるほど。

郷:たまに「ドラマやろうか」って話にはなるんですけど、これだけエンターテインメントの形が多様化してくると、ネットとか地上波とか、全方向に向いていかなきゃいけないですよね。それに加えて、演じることが入ってくると、スケジュール的にもどう考えたって無理だよなって結論になっちゃってるんです。今のところは。

林:でも、たまには「俳優 郷ひろみ」も見たいですよ。

郷:何かの機会に役者としての「郷ひろみ」もやってみたいなとは思うんですけど、歌うってことも、僕の中では「演じている」ととらえているんですよね。たとえばコンサートで20曲歌うとなると、20人の僕を毎日毎日違う感覚でつくり上げているので、それはそれで十分に「演じている」んです。だからお話をいただいてタイミングが合えばですよね、ドラマとか映画は。

林:「ドクターX」みたいに、1話完結でそのつどスターをゲストに呼ぶ、みたいなドラマがありますけど、ああいうのに出るとファンの方も喜ぶんじゃないですか。

郷:ファンの人のことを考えたら出たいですよね。喜んでもらえるんじゃないかとは思います。

林:私が日大の芸術学部の1年生のとき、部室に行ったら「男の子女の子」のポスターが貼ってあって、私たち「こんなかわいい顔をした男の子がどんな大人になるんだろう」って騒いでいたんですよ。こんなカッコいい大人になって、しかもこうして親しくお話できる境遇になろうとは、そのとき私、まったく想像もしませんでしたよ。

郷:いやいや……。

林:ひろみさんがご結婚なさる前、ごくたまに遊んでいただきましたけど、あるとき私が行きつけのバーにお連れしたんです、見せびらかそうと思って(笑)。そうしたらママがコーフンしちゃって、「私の姉が超ファンなんです! ちょっと電話に出てやってください!」って失礼なことを言っちゃって。そのときひろみさん、「僕、若人あきらです」って(笑)。

郷:アハハハ。「若人あきら」が通じた時代ですよね(笑)。(編集部注:当時、若人あきらさんは郷さんの物まねで人気だった)

林:そんな昔のことをいま急に思い出しちゃいました。きょうはすごく楽しかったです。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

郷ひろみ(ごう・ひろみ)/1955年、福岡県生まれ。72年、NHK大河ドラマ「新・平家物語」で俳優デビュー、シングル「男の子女の子」で歌手デビュー。同年、第14回日本レコード大賞新人賞を受賞。「よろしく哀愁」(74年)、「お嫁サンバ」(81年)、「GOLDFINGER’99」(99年)などヒット曲多数。今月、106枚目となる両A面シングル「100GO!回の確信犯/狐火」をリリース。現在、全国ツアー<HIROMI GO CONCERT TOUR 2021 “Beside The Life” 〜More Than The Golden Hits〜>が開催中(10月18日まで)。

※週刊朝日  2021年9月3日号より抜粋