今年、作家生活10周年を迎えた朝井リョウさん。これまで『桐島、部活やめるってよ』をはじめ、『何者』『世界地図の下書き』など数々の作品を世に送り出してきました。そんな朝井さんに、作家の林真理子さんがエールを送りました。

【作家・朝井リョウ「10年、20年続けるのは厳しい」と悩みを告白】より続く

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林:まじめな話、この10年で消えていった作家、私、何人も見ていますけど、10年続けてずっと第一線に立ってきたってすごいことですよ。こんなこと言うといやらしいけど、人気作家になってその場所まで行けば、もう落ちることはないはずです。朝井さんはもう大丈夫ですよ。

朝井:もう落ちることはない人って、どれぐらいですかね……(笑)。

林:たとえば三浦しをんさんなんて、若いときから活躍されて、いま40代で直木賞の選考委員もなさって、もう大御所への道でしょう。彼女は大御所を願ってないかもしれないですけどね。角田光代さんだって、30代のときに一気に駆け上がった方ですよね。

朝井:あの方たちのように、作品名というよりは、「ああ、この人の作品ね」って知られている人たちの仲間に入るのが夢ですが、なかなか遠い道のりだなと思っています。実は私、きょうは林さんに褒めていただけるとは思わず、超ビクビクしながら来たんです。

林:えっ、なんで、なんで?

朝井:私からすると、林さんは私が生まれたときからすごい作家として存在している人だし、「元号を選んだ人」みたいなイメージなので、緊張の中に「コワい」という気持ちがどうしてもあるんですよ。

林:コワいかもね。西加奈子さんもこの対談に出ていただいたとき、みんなから「いじめられなかった?」「コワくなかった?」と聞かれたってあとから聞きましたよ(笑)。私も若いころ、有吉佐和子さんとか曽野綾子さんにお会いするときコワかったもん。

朝井:やっと緊張が解けてきたので、お会いできたらお話ししたかったこと話してもいいですか。以前私が「情熱大陸」に出たあと、林さんが文春のエッセーで、「某作家が出た『情熱大陸』を見たら、最初から最後まで一つの季節の服だったから、そんなに長く密着されてないはずだ」と書かれていて、バレてる!と思いました。

林:はい、見ましたよ、朝井さんの「情熱大陸」。

朝井:で、林さんの「情熱大陸」を拝見して反省したんです。あの番組に出るんだったら「何を撮られてもいい」という覚悟で出ないとダメだなと。それくらいNGなしって感じが伝わってきました。私は、当時の勤務先はカメラNGで、とかいろいろ注文をつけたのですが、自分も早く、細かいことを気にせず、どうでもいいと思えるようになりたいなと思ったんです。

林:そんなことないですよ。私、あの「情熱大陸」、アタマにきちゃった。電車の中で寝てるところまで撮って(笑)。

朝井:そこがよかったんですよ! あれで皆さん林さんの器の大きさを知ったはずです。あれを見て、林さんのことをすごく好きになった人、多いと思います。林さんって何でもOKな人なんだな、カッコいいなって。

林:私、そんな寛大な人間じゃないですよ(笑)。でも、「発言者としてこれだけ文字を発していたら、いろいろと言われたりしても、しょうがないや」って、あるときから思えるようになりましたけど。

朝井:私も早く、いろんなことについて「どうでもいい、まあしょうがないや」と思えるところにまで行きたいです。

林:あと10年、40代になったら大丈夫ですよ。

朝井:その状態でまた、林さんといろんなお話させてください。

林:はい、楽しみに待っています。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

朝井リョウ(あさい・りょう)/1989年、岐阜県生まれ。早稲田大学在学中の2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。13年『何者』で第148回直木賞、14年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞を受賞。小説に、『世にも奇妙な君物語』『何様』『発注いただきました!』『スター』など、エッセーに『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』。自身の作家生活10周年記念作品のひとつとして今春、『何者』以来、約8年半ぶりとなる書き下ろし長編小説『正欲』(新潮社)を刊行。

※週刊朝日  2021年9月10日号より抜粋