横浜銀蝿40thのボーカル・翔とクレイジーケンバンドのボーカル・横山剣。奇しくも同日(9月8日)にニューアルバムを発表した2人は音楽性こそ異なるが、ともに男気溢れるイメージ。“男くさ〜い”以外にも、共通点が多い2人が顔を合わせた。

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翔:剣ちゃんと出会ったのは2012年だったね。

剣:富士スピードウェイのアメフェス(アメリカンフェスティバル)で翔さんがソロバンドとして参加したときでしたね。

翔:フェスの主催者が共通の知り合いでね。でも俺、剣ちゃんが若いころクールスRCというバンドで「シンデレラ・リバティ」歌ってたころから知ってたよ。フェスで楽屋に挨拶しに行って初めて話したら、思ったとおり、そこにいたのは自分と同じ香りのする男だった(笑)。

剣:超メジャーの銀蝿さんだから、俺らのことなんて知らないだろうと思ってたら、まさか「シンデレラ・リバティ」を聴いてくれてたなんて、すごく嬉しかった。話してみたら、過ごした街も一緒、ガキのころ行った店まで一緒で驚きました。

翔:それにニューアルバムの発売日が一緒(笑)。俺さ、デビュー当時から自分のCDが出たら買いに行くというのを掟のように続けてるのよ。それで今回も「ぶっちぎり249」買いに行ったら、剣ちゃんのカバーアルバム「好きなんだよ」もその日が発売日でさ。「マジか?」って。両方買って、先に聴いたのは剣ちゃんのアルバムだよ。

剣:ありがとうございます。銀蝿さんのニューアルバム、俺も聴きました。銀蝿らしさ全開なのに今の時代の音楽になっててカッコよかった。ミュージックビデオのダンスも最高でした。

翔:ただ、オリコンのチャート見たら銀蝿よりもクレイジーケンバンドのほうが上でさ(笑)。俺が買ったせいだって思ったね(笑)。

剣:俺にとって翔さんは憧れの先輩。活動場所が近かったので、翔さんがバイトしていたガソリンスタンドやスナックのことも知っていましたよ。

翔:銀蝿40‌th再始動のとき、剣ちゃんがそのことをコメントで書いてくれたよね。なんでこんなことまで知ってるのかって驚いたよ。

剣:本を読んだり人に聞いたり(笑)。でもね、銀蝿さんにはいわゆる武勇伝もたくさんあるけど、そういうのより人としてのあるべき道みたいなエピソードにしびれますね。たとえば、翔さんとJohnnyさんの仲間同士助け合う泣ける話がたくさんある。

――ここでJohnny(横浜銀蝿40‌thリードギター)登場。

翔:第三京浜で100キロ出しちゃうようなチューニングのシャコタン車に乗って、ナンパしてホテルに向かう途中の坂道で、オイル漏れして車が動かなくなったのよ。そのときJohnnyに電話して助けてくれって。Johnnyは来て、助けてくれたよ。

剣:いい話ですよね。喧嘩のときに相手が大人数なのに助太刀に行くとか、仲間のために自分を捨てて動けるっていう関係、今では少なくなってしまいましたからね。痺れます。そうした仲間同士の絆が楽曲からも感じられます。

J:バンド仲間といると無敵な感じがしたからね(笑)。

翔:俺も剣ちゃんに“カッコいい男”を感じるよ。いい曲作るくせに笑いの切り口があるところね。人間性に幅があって魅力的だね。不良だってそうだろ? ツッパってて怖いのにおもしろいところがある。くだらないことばかりしているのに、一人の女を一途に愛したり、自分の好きな車に年をとっても乗り続けるとかね。

剣:そう、そう。そういうのがカッコいいって思いますね。

翔:俺ら銀蝿の4人ってすごく仲がいいんだよ。最初の女に一途じゃないけど、俺、いいバンドって仲がいいと思う。よく音楽性の違いで解散しますってバンドがあるけど、きっと嘘だよね。絶対に誰かが嫌いだからやめるってなってるんだと思うんだよ。

剣:そうですよね。偽装解散疑惑ね(笑)。喧嘩できるような仲じゃないと、バンドはできないですよね。そういえばデビュー前に地獄の猛特訓をしたって聞きました。うさぎ跳びまでしてたって本当ですか?

翔:うさぎ跳びはない(笑)。俺たちデビュー前は、曲は作れても譜面は書けないし読めなかったんだよ。レコーディングも全部自己流で、何も知らなかった。これじゃダメだということになって地獄のレッスンを始めたわけ。リズムボックスでテンポを決めて、それに合わせてひたすら3コードを延々と大真面目に2時間とか続けるのね。すると、全員がぴったり合う瞬間っていうのがあって、そのときってリズムボックスの音が聞こえなくなるの。たぶんその練習が「地獄」って言われてるんだと思う。

剣:銀蝿サウンドはそうやって生まれたんですね。

翔:そうやって乗り越えた経験ね。コロナ禍の今もそうだよ。ライブ中止にしたり。コロナのバカヤロウって思うけど、これも乗り越えなきゃね。

剣:俺らも武道館公演は人数制限をしました。

翔:Johnnyが横浜銀蝿40‌thでバンドに戻ってくれて、1年でやめてカッコつけたかったんだけど、コロナでライブが延期になったから、まだ続けてる。

J:バンドに戻ったらやっぱり楽しい。売れる売れないなんて関係なく楽しんだ高校時代に戻ったみたいだった。

翔:本当に楽しいのよ。だから続けてるというのもあるけど、コロナだよ。このコロナ禍をどう生きたかで男の価値が決まると思うからやめられない。

剣:銀蝿さんの名言で「有言実行!」っていうのが俺は好きなんです。いろんなことがあるけど、まずは宣言してオトシマエをつけていく。男の美学ですよね。

翔:マスクをして、距離を保ち、声を出さないとか。それでも聴きに来てくれるファンに会いたいから、前に進むわけだよね。

剣:そうですね。

翔:俺はね、デビュー当時には周りの歌手やミュージシャンはみんな敵だと思ってた。「負けねぇぞ!」って。でも年齢がいってそうじゃなくなった。お互いの音楽を認め合って、剣ちゃんとのように男の付き合いができるようになった。そういうゆとりや優しさに男のカッコよさがある。剣ちゃんもきっと昔と考え方が違ってきた面があるだろ?

剣:ありますよ。俺は若いときはカッコよく散るのがいいと考えていたけど、今は現役でいること、力尽きるまで続けることが男らしさだと思います。

翔:それだよなぁ。

(本誌・鈴木裕也)

※週刊朝日  2021年10月8日号